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悪者に拉致されそうになったら人の目につくところにいるうちに大声を出しましょう
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チンピラをカッコよくのしたのは良かったんだけどなぁ。
人生、一寸先は闇と言えど、多少は先のことを考えて動かないといけないよね。
まさかこんなことになるとは思いもしなかった。
「どうしよう、打開するには能力を、だけどエネルギーが足りるのか?そもそもこんなにいっぱい…」
慌てている颯士を見てふっとため息をつく。
男子が狼狽えるなんて情けないわね。
見せ場をあげるわ、とそっとその場を去ろうとするが颯士にすがり付かれてあえなく阻止される。
ことの顛末は、こうだ。
先日のチンピラをかっこよく倒した後、颯爽と名乗りもせずに去っていったのだが、あの女性、いやクソ女にしてやられた。
学校帰りにクソ女が通学路で待っており、
お礼でもあるのかな?お礼なんていいのに。けれどもどうしてもと言うのならば受け取らなくもないよ
なんて思っていたら
「あいつよ!たーくんを蹴っ飛ばしたのは!!きぃぃーー!!」
と、金切り声をあげやがりまして、たーくんって誰やねんと思いながらも、どこに隠れていたのかチンピラA~Zくらいまで現れて、背後も取られて大ピンチ。
恐ろしきはDVされても離れられない共依存女…
なんてことをぼんやり考えていても、
灯里と颯士を取り囲むチンピラと現実は消えてはくれない。
黙ってついてこい、とまんまと廃ビルまで連れていかれた次第なのである。
「おいニーチャン、大変なことしてくれたなぁ?おぉ!?」
刺青の入った金髪タンクトップ男が颯士に脅しかける。
「お、俺は何もしてないんだけど…」
と、ボソボソと呟く颯士、なんとも情けない。男ならガツンと言ってやれ!
「あぁ!?じゃあそっちのねーちゃんにうちのたーくんがやられたって言うんか!?」
「そうドゥッ…」
男らしくない颯士のお腹に一撃入れて眠っていて貰うことにした。
犯人も眠ったことだし両成敗ってことで今日はこの辺で…
と、颯士をかついで去ろうとしたらまたしても金切り声が響いた。
「その女よ!その女がたーくんを蹴ったのよ!!」
このクソアマ…
たーくんの気まずそうな顔と、取り巻きたちの幻滅したような目に再びため息をつきながら、頭の中でイメージを始めておいた。
できれば能力は見られたくないが…
男にやられたことにしておきたかったたーくんは、決心したように口を開いた。
「マジなんだって、そいつはタダの女じゃねぇ、ゴリラみたいなパワーの蹴りしやがる!」
と、たーくんが開き直った。やばいな、恥を捨てやがった。
こうなったらやむなし。
やる気がイマイチ出なそうな取り巻きが迫ってくる。
「ねーちゃん、女を殴るのは気が引けるがちょっと痛い目見て貰うでぇ」
と、チンピラAが手を伸ばしてきた。
咄嗟にチンピラAに上段回し蹴りをスパーンと決めてぶっ飛ばした。
数日のことでも柔軟体操をしていたのが良かったのか、股関節は無事だ。
取り巻きB~Zの顔色が変わったが、敵が戦闘態勢に入る前に出来るだけ数を減らしたい。
近くのチンピラBの腹に左膝を入れ悶絶させたところを、そのまま浮いた状態で右脚にブーストをかけてチンピラCにローリングソバット、飛びかかってくるDの顎をスカートを抑えながら蹴りあげた。
ここまでの猛攻を見て、残ったE~Zは「こいつ、できる…」と言わんばかりにたじろいでいた。
ちょっと疲れたがまだいける。
ブーストは発現する物質を沸騰するやかんの湯気のように変化させ、蒸気機関のように勢いをつける技である。
気体のような性質なので質量は少なめだが、回収ができないので少しずつだが消耗していく。
「俺がいこう」
と、タンクトップに坊主の大男が出てきた。
相当に鍛えているのか、分厚い胸板は簡単には大ダメージを与えられそうにない。
こうなったら、あの技を使うしかない…か…
気乗りはしないが仕方がない。
はぁぁっ…!!
息を吸い込み気合いを入れる。
あまり見られたくはない、出来るだけ周りに見えないように近距離で放たねば…
腰に手を添え、イメージを強める。
と、同時に足には蒸気が爆発するイメージ。
…今だッ!!
ブーストのかかった脚で一瞬で間合いを詰め、一気に拳を突き出す。
『白チン撃ッ!!!』
突き出した拳には僅かに、しかし相当に硬いコーティングがなされている。
ジェットの速度も乗り、最強の対男兵器となった拳はタンクトップの股間を真芯で捉えた。どこが芯なのかわからないが真芯で捉えたのである。
触りたくないから回収はしないわ、とコーティングを拳から振り払うと同時に背中を見せた。
タンクトップは膝から崩れ落ち、残ったチンピラ達は青ざめた。
なんて恐ろしいことをするオナゴだ。
そんな顔をしていた。
すっかり戦意喪失をしたチンピラを尻目に、そろそろ帰るよ、と颯士を起こし倉庫を後にするのであった。
追ってくるものは一人もいなかった。
その後、チン撃姫と言う恐ろしい強さの女がこの街にいると巷で噂となったのはまた別の話である。
人生、一寸先は闇と言えど、多少は先のことを考えて動かないといけないよね。
まさかこんなことになるとは思いもしなかった。
「どうしよう、打開するには能力を、だけどエネルギーが足りるのか?そもそもこんなにいっぱい…」
慌てている颯士を見てふっとため息をつく。
男子が狼狽えるなんて情けないわね。
見せ場をあげるわ、とそっとその場を去ろうとするが颯士にすがり付かれてあえなく阻止される。
ことの顛末は、こうだ。
先日のチンピラをかっこよく倒した後、颯爽と名乗りもせずに去っていったのだが、あの女性、いやクソ女にしてやられた。
学校帰りにクソ女が通学路で待っており、
お礼でもあるのかな?お礼なんていいのに。けれどもどうしてもと言うのならば受け取らなくもないよ
なんて思っていたら
「あいつよ!たーくんを蹴っ飛ばしたのは!!きぃぃーー!!」
と、金切り声をあげやがりまして、たーくんって誰やねんと思いながらも、どこに隠れていたのかチンピラA~Zくらいまで現れて、背後も取られて大ピンチ。
恐ろしきはDVされても離れられない共依存女…
なんてことをぼんやり考えていても、
灯里と颯士を取り囲むチンピラと現実は消えてはくれない。
黙ってついてこい、とまんまと廃ビルまで連れていかれた次第なのである。
「おいニーチャン、大変なことしてくれたなぁ?おぉ!?」
刺青の入った金髪タンクトップ男が颯士に脅しかける。
「お、俺は何もしてないんだけど…」
と、ボソボソと呟く颯士、なんとも情けない。男ならガツンと言ってやれ!
「あぁ!?じゃあそっちのねーちゃんにうちのたーくんがやられたって言うんか!?」
「そうドゥッ…」
男らしくない颯士のお腹に一撃入れて眠っていて貰うことにした。
犯人も眠ったことだし両成敗ってことで今日はこの辺で…
と、颯士をかついで去ろうとしたらまたしても金切り声が響いた。
「その女よ!その女がたーくんを蹴ったのよ!!」
このクソアマ…
たーくんの気まずそうな顔と、取り巻きたちの幻滅したような目に再びため息をつきながら、頭の中でイメージを始めておいた。
できれば能力は見られたくないが…
男にやられたことにしておきたかったたーくんは、決心したように口を開いた。
「マジなんだって、そいつはタダの女じゃねぇ、ゴリラみたいなパワーの蹴りしやがる!」
と、たーくんが開き直った。やばいな、恥を捨てやがった。
こうなったらやむなし。
やる気がイマイチ出なそうな取り巻きが迫ってくる。
「ねーちゃん、女を殴るのは気が引けるがちょっと痛い目見て貰うでぇ」
と、チンピラAが手を伸ばしてきた。
咄嗟にチンピラAに上段回し蹴りをスパーンと決めてぶっ飛ばした。
数日のことでも柔軟体操をしていたのが良かったのか、股関節は無事だ。
取り巻きB~Zの顔色が変わったが、敵が戦闘態勢に入る前に出来るだけ数を減らしたい。
近くのチンピラBの腹に左膝を入れ悶絶させたところを、そのまま浮いた状態で右脚にブーストをかけてチンピラCにローリングソバット、飛びかかってくるDの顎をスカートを抑えながら蹴りあげた。
ここまでの猛攻を見て、残ったE~Zは「こいつ、できる…」と言わんばかりにたじろいでいた。
ちょっと疲れたがまだいける。
ブーストは発現する物質を沸騰するやかんの湯気のように変化させ、蒸気機関のように勢いをつける技である。
気体のような性質なので質量は少なめだが、回収ができないので少しずつだが消耗していく。
「俺がいこう」
と、タンクトップに坊主の大男が出てきた。
相当に鍛えているのか、分厚い胸板は簡単には大ダメージを与えられそうにない。
こうなったら、あの技を使うしかない…か…
気乗りはしないが仕方がない。
はぁぁっ…!!
息を吸い込み気合いを入れる。
あまり見られたくはない、出来るだけ周りに見えないように近距離で放たねば…
腰に手を添え、イメージを強める。
と、同時に足には蒸気が爆発するイメージ。
…今だッ!!
ブーストのかかった脚で一瞬で間合いを詰め、一気に拳を突き出す。
『白チン撃ッ!!!』
突き出した拳には僅かに、しかし相当に硬いコーティングがなされている。
ジェットの速度も乗り、最強の対男兵器となった拳はタンクトップの股間を真芯で捉えた。どこが芯なのかわからないが真芯で捉えたのである。
触りたくないから回収はしないわ、とコーティングを拳から振り払うと同時に背中を見せた。
タンクトップは膝から崩れ落ち、残ったチンピラ達は青ざめた。
なんて恐ろしいことをするオナゴだ。
そんな顔をしていた。
すっかり戦意喪失をしたチンピラを尻目に、そろそろ帰るよ、と颯士を起こし倉庫を後にするのであった。
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その後、チン撃姫と言う恐ろしい強さの女がこの街にいると巷で噂となったのはまた別の話である。
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