8 / 84
中二病は言うほど中2だけで終わらないと思う
しおりを挟む
「必殺技ってカッコ良くない?」
灯里のその一言が始まりであった。
日常生活において「必ず殺す技」など使う機会はそうそうないのだが、古来より中高生の中にはそういったものに憧れる層は一定数存在するものである。
その提案に颯士は目を輝かせて同意するばかりであった。
そんなわけで灯里の必殺技開発が始まったのである。
「必殺技といったらやっぱり、何か飛ばすやつがいいよね。ハーッて。」
そう言って灯里は両手を前に突き出すジェスチャーをしてみせる。
非常に分かる。それこそが必殺技の定番!ザ・必殺技である。
光の玉をイメージしてはどうか、と提案してみると灯里は腰に両手を添えて目を閉じる。集中してイメージをしているようだ。
カッと目を見開き、両手を前に突き出す!
「ハーッ!!!」
灯里の手のひらから煙とともに玉がポトッと落ちた。
「…」
…。気まずさが場を凍らせた。あんなに気合いの入った「ハーッ!!!」からのコレである。
少し沈黙が続き、気まずさを誤魔化すように灯里が口を開いた。
「球体じゃなくて、もっとこう、消防車のホースから水が勢い良く出る感じじゃないかな?」
なるほど、確かに「ハーッ!」と出す技は玉ではなく波だ。波とかいて「は」だ。もう一度、波をイメージして出してみよう、とアドバイスすると灯里は再び目を閉じて集中した。大きく息を吸い込み、カッと目を見開くと両手を前に突き出す!
「ハァァァー!!!!」
灯里の両手からぬめぇ~っと横長な物質がどばどばと出てきては地面にべちゃべちゃと落ちた。名付けるならば「とろろ芋波」と言ったところか。
無言でとろろ芋波を回収する灯里を横に、原因を考えてみる。
今まで出してきたものみたいにきっちり硬さがあるものではなく、液状のものが出せたことから意外と生み出される物体の性質は変えられることが分かった。
恐らく一回目は光のエネルギーのイメージがしづらかったのかもしれない。光で敵を倒す方法は現実でお目にかかることはほとんどない。
二回目の「とろろ芋波」は、結構惜しかったようにも感じる。今までに出してきたものは、形は精巧だが実は重さが全然ない。だが、とろろ芋波は
「重さがあったのですぐに地面に落ちてしまった」
のである。初めて能力を発動した日、颯士をぶっ飛ばした拳は重さがなく、ほとんど威力はなかった。だが、発動の勢いで颯士を吹っ飛ばすことはできた。
「人を吹っ飛ばせるような勢い」と「水のような重さ」が両立すると必殺技が成立するのではないか。
それらをアドバイスして再再挑戦!
灯里も少し疲れた様子ではあったが、次こそはと構える。
目を閉じて以下略
「はぁーーーーっ!!!」
灯里の両手からエネルギーの波が放出される。…颯士に向かって。
咄嗟に両手をクロスさせてガードする颯士。足を踏ん張ってみるもそのまま後方へと押しやられる。エネルギーの波で教室の壁に叩きつけられた颯士は、ちょっとばかり手が痺れたぜ、なんて思いつつも技の完成に感嘆の声をあげた。
しかし、それに相反するように灯里は膝をつくほど疲労していた。
・
・
・
感覚で言うと「魂のエネルギーを消耗した」感じだろうか。
軽くて小さなものを出していた時とは段違いの疲れが身体を襲ってきた。
思えば、出したものを回収していないのもこの疲れの要因かもしれない。
先ほど完成した必殺技はほとんど霧散してしまったが、何とか重い腰をあげて僅かに地面に散らばる欠片を回収すると疲れが軽くなるのを感じる。
心配して駆け寄る颯士に大丈夫であることを伝えるも、今日はもう能力を出すことはできそうにない。ごめん、ちょっと疲れた、と伝えると
「今日はもう帰ってゆっくりしよう」
と颯士は荷物を持ってくれた。
いつもより明るい時間だけど今日は早めに帰ることになった。もうちょっと体力が持てばなぁ、と思いながら。
帰りがけに「能力を使いすぎると疲れること」「疲労は質量に比例すること」を颯士に説明すると、
「今度は燃費も考慮して必殺技を考えよう!無理はしない方向で!」
とのこと。
灯里の家に到着し、颯士から荷物を受け取り
「また、明日」
と軽く手を振り去っていく颯士に手を振り返しつつ、後ろ姿を見送った。
倒れこむようにベッドに入ると、そのまま朝まで泥のように眠っていた。
翌日には疲労はすっかりなくなっていたのはまるでRPGの宿屋のようだ、とシャワーを浴びながらぼんやり考えていた。
颯士には心配かけたかな?早く顔を見せて安心させてやろう、と早々身支度を済ませていつもより少し早めの登校をした。
灯里のその一言が始まりであった。
日常生活において「必ず殺す技」など使う機会はそうそうないのだが、古来より中高生の中にはそういったものに憧れる層は一定数存在するものである。
その提案に颯士は目を輝かせて同意するばかりであった。
そんなわけで灯里の必殺技開発が始まったのである。
「必殺技といったらやっぱり、何か飛ばすやつがいいよね。ハーッて。」
そう言って灯里は両手を前に突き出すジェスチャーをしてみせる。
非常に分かる。それこそが必殺技の定番!ザ・必殺技である。
光の玉をイメージしてはどうか、と提案してみると灯里は腰に両手を添えて目を閉じる。集中してイメージをしているようだ。
カッと目を見開き、両手を前に突き出す!
「ハーッ!!!」
灯里の手のひらから煙とともに玉がポトッと落ちた。
「…」
…。気まずさが場を凍らせた。あんなに気合いの入った「ハーッ!!!」からのコレである。
少し沈黙が続き、気まずさを誤魔化すように灯里が口を開いた。
「球体じゃなくて、もっとこう、消防車のホースから水が勢い良く出る感じじゃないかな?」
なるほど、確かに「ハーッ!」と出す技は玉ではなく波だ。波とかいて「は」だ。もう一度、波をイメージして出してみよう、とアドバイスすると灯里は再び目を閉じて集中した。大きく息を吸い込み、カッと目を見開くと両手を前に突き出す!
「ハァァァー!!!!」
灯里の両手からぬめぇ~っと横長な物質がどばどばと出てきては地面にべちゃべちゃと落ちた。名付けるならば「とろろ芋波」と言ったところか。
無言でとろろ芋波を回収する灯里を横に、原因を考えてみる。
今まで出してきたものみたいにきっちり硬さがあるものではなく、液状のものが出せたことから意外と生み出される物体の性質は変えられることが分かった。
恐らく一回目は光のエネルギーのイメージがしづらかったのかもしれない。光で敵を倒す方法は現実でお目にかかることはほとんどない。
二回目の「とろろ芋波」は、結構惜しかったようにも感じる。今までに出してきたものは、形は精巧だが実は重さが全然ない。だが、とろろ芋波は
「重さがあったのですぐに地面に落ちてしまった」
のである。初めて能力を発動した日、颯士をぶっ飛ばした拳は重さがなく、ほとんど威力はなかった。だが、発動の勢いで颯士を吹っ飛ばすことはできた。
「人を吹っ飛ばせるような勢い」と「水のような重さ」が両立すると必殺技が成立するのではないか。
それらをアドバイスして再再挑戦!
灯里も少し疲れた様子ではあったが、次こそはと構える。
目を閉じて以下略
「はぁーーーーっ!!!」
灯里の両手からエネルギーの波が放出される。…颯士に向かって。
咄嗟に両手をクロスさせてガードする颯士。足を踏ん張ってみるもそのまま後方へと押しやられる。エネルギーの波で教室の壁に叩きつけられた颯士は、ちょっとばかり手が痺れたぜ、なんて思いつつも技の完成に感嘆の声をあげた。
しかし、それに相反するように灯里は膝をつくほど疲労していた。
・
・
・
感覚で言うと「魂のエネルギーを消耗した」感じだろうか。
軽くて小さなものを出していた時とは段違いの疲れが身体を襲ってきた。
思えば、出したものを回収していないのもこの疲れの要因かもしれない。
先ほど完成した必殺技はほとんど霧散してしまったが、何とか重い腰をあげて僅かに地面に散らばる欠片を回収すると疲れが軽くなるのを感じる。
心配して駆け寄る颯士に大丈夫であることを伝えるも、今日はもう能力を出すことはできそうにない。ごめん、ちょっと疲れた、と伝えると
「今日はもう帰ってゆっくりしよう」
と颯士は荷物を持ってくれた。
いつもより明るい時間だけど今日は早めに帰ることになった。もうちょっと体力が持てばなぁ、と思いながら。
帰りがけに「能力を使いすぎると疲れること」「疲労は質量に比例すること」を颯士に説明すると、
「今度は燃費も考慮して必殺技を考えよう!無理はしない方向で!」
とのこと。
灯里の家に到着し、颯士から荷物を受け取り
「また、明日」
と軽く手を振り去っていく颯士に手を振り返しつつ、後ろ姿を見送った。
倒れこむようにベッドに入ると、そのまま朝まで泥のように眠っていた。
翌日には疲労はすっかりなくなっていたのはまるでRPGの宿屋のようだ、とシャワーを浴びながらぼんやり考えていた。
颯士には心配かけたかな?早く顔を見せて安心させてやろう、と早々身支度を済ませていつもより少し早めの登校をした。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
『邪馬壱国の壱与~1,769年の眠りから覚めた美女とおっさん。時代考証や設定などは完全無視です!~』
姜維信繁
SF
1,769年の時を超えて目覚めた古代の女王壱与と、現代の考古学者が織り成す異色のタイムトラベルファンタジー!過去の邪馬壱国を再興し、平和を取り戻すために、二人は歴史の謎を解き明かし、未来を変えるための冒険に挑む。時代考証や設定を完全無視して描かれる、奇想天外で心温まる(?)物語!となる予定です……!
「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.
あおっち
SF
海を埋め尽くすAXISの艦隊。
飽和攻撃が始まる台湾、金門県。
海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。
同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。
苫小牧市を守るシーラス防衛軍。
そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った!
SF大河小説の前章譚、第5部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
びるどあっぷ ふり〜と!
高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。
どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。
ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね?
※すでになろうで完結済みの小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる