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3.国王陛下
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シエラに負けず劣らず美しい顔をしている彼の微笑みに、私はドキッとした。
「ダニエル様、この方は聖女様でございます」
「アイネです」
と私は頭を下げた。
「は? 何で聖女が……?」
「悪魔の呪いを解いていただくため、お連れいたしました」
ダニエル王子は形のいい眉を吊り上げた。
「そんな勝手なっ! 呪いのことはもういいって! そもそもこんな若い娘、本当に聖女かよ? また俺のことを騙しに来たのかもしれないじゃん。俺はもうそういうの信用しないのっ! 悪いけど、帰ってもらって」
さっきまでの笑顔が嘘みたいに王子は頑なに私を拒絶した。
また騙しに来た、とはどういうことなのだろう、と私は思った。
私たちは部屋から閉め出され、オリバーは二人きりになった廊下で私に謝罪した。
「申し訳ございません、聖女様。ダニエル様はこの問題に関して特にナーバスになっておられまして」
「いえ、私は大丈夫です。今まで呪いのせいで嫌な思いをされてきたのでしょうから、そうなって当然だと思います」
オリバーは応接間で私にお茶を淹れてくれた。
紅茶を飲みながら美味しいマカロンやケーキを食べていると、応接間のドアが開き、
「ほほう、君が聖女か」
と高そうな服を着た大柄な男性が入って来た。
「国王陛下でございます」
とオリバーが教えてくれた。
椅子から立って挨拶しようとしたら、いいよ、楽に、と自分もテーブルを挟んで向かいの椅子にかけ、お付きの者にお茶を淹れさせた。
「……あの子はいずれこの国の王となる子だ。側室の子も含め、私の子供に男の子はあの子一人だけだからね。だからこのまま誰とも婚姻出来ない、子孫を残せない状態では困るんだ。あの子の呪いをどうにかしようと、今まで遠い国から名だたる医者や呪術師を呼び寄せてきたが、呪いは誰にも解けなかったんだ」
「まあ、それは……。あの、王子様は何か過去に騙されたようなことを言っておられましたが……」
「ああ、ある時遠い異国から来た聖女を名乗る女性が城を訪れた。私はさっそく息子の呪いを解いてもらおうとしたんだが、それは悪い魔女が化けた偽聖女で、王子の呪われたあそこの状態を国中にバラされたくなければ金貨をよこせと脅かしてきたんだ。要求する額の金貨を私が払うと魔女は帰って行ったが、そんなことがあって以来あの子はすっかり心を閉ざして部屋で絵ばかり描くようになってしまったんだ」
国王は悲痛な面持ちで私に話した。
「お力になれるかわかりませんが、出来る限りやってみます」
「よろしく頼むよ。呪いが解けるのは本物の聖女の浄化魔法だけだ。それから、この件はどうか一切口外しないでいただきたい。この国の王子が悪魔の呪いにかかっていること、それにその状態が世間に知れたら国民を混乱させることになる」
また明日来ることを約束して私はお城を後にした。
美しい夕焼けを見ながら、私は考えていた。
他の人に解くことが出来ない悪魔の呪いを解くとなると、たぶんシエラの時と同じようにセックスすることで性器を浄化する方法になるだろう……。
シエラという人がありながら、他の人とそんなことをするのって「浮気」になるんじゃないかな。でも私がやらなければ王子は一生呪われたままだし……。
何よりこの件に関してシエラに相談できないのが心苦しかった。
「ダニエル様、この方は聖女様でございます」
「アイネです」
と私は頭を下げた。
「は? 何で聖女が……?」
「悪魔の呪いを解いていただくため、お連れいたしました」
ダニエル王子は形のいい眉を吊り上げた。
「そんな勝手なっ! 呪いのことはもういいって! そもそもこんな若い娘、本当に聖女かよ? また俺のことを騙しに来たのかもしれないじゃん。俺はもうそういうの信用しないのっ! 悪いけど、帰ってもらって」
さっきまでの笑顔が嘘みたいに王子は頑なに私を拒絶した。
また騙しに来た、とはどういうことなのだろう、と私は思った。
私たちは部屋から閉め出され、オリバーは二人きりになった廊下で私に謝罪した。
「申し訳ございません、聖女様。ダニエル様はこの問題に関して特にナーバスになっておられまして」
「いえ、私は大丈夫です。今まで呪いのせいで嫌な思いをされてきたのでしょうから、そうなって当然だと思います」
オリバーは応接間で私にお茶を淹れてくれた。
紅茶を飲みながら美味しいマカロンやケーキを食べていると、応接間のドアが開き、
「ほほう、君が聖女か」
と高そうな服を着た大柄な男性が入って来た。
「国王陛下でございます」
とオリバーが教えてくれた。
椅子から立って挨拶しようとしたら、いいよ、楽に、と自分もテーブルを挟んで向かいの椅子にかけ、お付きの者にお茶を淹れさせた。
「……あの子はいずれこの国の王となる子だ。側室の子も含め、私の子供に男の子はあの子一人だけだからね。だからこのまま誰とも婚姻出来ない、子孫を残せない状態では困るんだ。あの子の呪いをどうにかしようと、今まで遠い国から名だたる医者や呪術師を呼び寄せてきたが、呪いは誰にも解けなかったんだ」
「まあ、それは……。あの、王子様は何か過去に騙されたようなことを言っておられましたが……」
「ああ、ある時遠い異国から来た聖女を名乗る女性が城を訪れた。私はさっそく息子の呪いを解いてもらおうとしたんだが、それは悪い魔女が化けた偽聖女で、王子の呪われたあそこの状態を国中にバラされたくなければ金貨をよこせと脅かしてきたんだ。要求する額の金貨を私が払うと魔女は帰って行ったが、そんなことがあって以来あの子はすっかり心を閉ざして部屋で絵ばかり描くようになってしまったんだ」
国王は悲痛な面持ちで私に話した。
「お力になれるかわかりませんが、出来る限りやってみます」
「よろしく頼むよ。呪いが解けるのは本物の聖女の浄化魔法だけだ。それから、この件はどうか一切口外しないでいただきたい。この国の王子が悪魔の呪いにかかっていること、それにその状態が世間に知れたら国民を混乱させることになる」
また明日来ることを約束して私はお城を後にした。
美しい夕焼けを見ながら、私は考えていた。
他の人に解くことが出来ない悪魔の呪いを解くとなると、たぶんシエラの時と同じようにセックスすることで性器を浄化する方法になるだろう……。
シエラという人がありながら、他の人とそんなことをするのって「浮気」になるんじゃないかな。でも私がやらなければ王子は一生呪われたままだし……。
何よりこの件に関してシエラに相談できないのが心苦しかった。
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