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第六章 本音
48.僕の本音(最終話)
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僕は再び森の中の小さな小屋でシャンと二人きりのスローライフを満喫していた。
やることと言えば相変わらず、トリュフや薪を探して森を歩いたり、畑仕事をしたり、自分たちの食べるものを作ることぐらいだ。
台所のカレンダーには数日後に再び満月が近づいていることが記されている。
お腹の傷もすっかり治った。僕はある決意をしていた。
満月の一日前、シャンはこそこそとカバンに荷物を詰めていた。
前回と同様に一晩どこかへ出かけようと思っていたのだろう。
「ねえ、シャン……」
畑で収穫した野菜を持って裏口からそっと入って来た僕に気付いていなかったシャンはビクッと肩を震わせて振り返った。
「タクヤ……」
「明日の夜、またどこかへ行くつもりなんだね?」
きまり悪そうに彼が目を泳がせた。
「俺だって好きでそうするわけじゃないんだ。……でも、一人にならないといけない」
シャンは満月を見て狼化して僕を傷つけたくないのだ。そんな優しい彼を責めるつもりなんてない。
僕は意を決し、彼に本音を言うことにした。
「シャン、僕はね……君が狼になってしまう満月の夜を密かに楽しみにしているんだ……」
狂暴になったシャンに乱暴に抱かれるのが気持ちよくて好きだなんて、こんな恥ずかしいことを面と向かって言ってしまうなんて僕はどうかしている。
顔がかあっと熱くなった。火が出そうだ。
シャンは目を丸くして僕を見ている。
もう穴があったら入りたい。
「タクヤは……狼になった俺が怖くないの?」
こうなったら勢いだ、と僕は心の中に隠していた気持ちを全て吐き出してしまうことにした。今更取り繕ったってどうにもならないし。
「怖くないって言ったら嘘だけど、でも普段の優しいシャンと同じくらい狼になったシャンも好きなんだ。シャンの全てが好きなんだ。だから本当は普段からもっとちゃんと、シャンとセックスしたいんだ」
変だとか気持ち悪いとか思われるだろうか。そんな不安から言えなかった言葉を僕は初めて言えた。
頬を染めて驚いていたシャンがニコッと笑った。
「実は俺も、同じ気持ちだよ……。嫌われるのが怖くて言えなかったけど、狼化してタクヤを襲うように抱くのも好きなんだ」
シャンの瞳が狼化したときみたいにぎらっと光って、僕の胸はキュンとときめいた。
おわり
やることと言えば相変わらず、トリュフや薪を探して森を歩いたり、畑仕事をしたり、自分たちの食べるものを作ることぐらいだ。
台所のカレンダーには数日後に再び満月が近づいていることが記されている。
お腹の傷もすっかり治った。僕はある決意をしていた。
満月の一日前、シャンはこそこそとカバンに荷物を詰めていた。
前回と同様に一晩どこかへ出かけようと思っていたのだろう。
「ねえ、シャン……」
畑で収穫した野菜を持って裏口からそっと入って来た僕に気付いていなかったシャンはビクッと肩を震わせて振り返った。
「タクヤ……」
「明日の夜、またどこかへ行くつもりなんだね?」
きまり悪そうに彼が目を泳がせた。
「俺だって好きでそうするわけじゃないんだ。……でも、一人にならないといけない」
シャンは満月を見て狼化して僕を傷つけたくないのだ。そんな優しい彼を責めるつもりなんてない。
僕は意を決し、彼に本音を言うことにした。
「シャン、僕はね……君が狼になってしまう満月の夜を密かに楽しみにしているんだ……」
狂暴になったシャンに乱暴に抱かれるのが気持ちよくて好きだなんて、こんな恥ずかしいことを面と向かって言ってしまうなんて僕はどうかしている。
顔がかあっと熱くなった。火が出そうだ。
シャンは目を丸くして僕を見ている。
もう穴があったら入りたい。
「タクヤは……狼になった俺が怖くないの?」
こうなったら勢いだ、と僕は心の中に隠していた気持ちを全て吐き出してしまうことにした。今更取り繕ったってどうにもならないし。
「怖くないって言ったら嘘だけど、でも普段の優しいシャンと同じくらい狼になったシャンも好きなんだ。シャンの全てが好きなんだ。だから本当は普段からもっとちゃんと、シャンとセックスしたいんだ」
変だとか気持ち悪いとか思われるだろうか。そんな不安から言えなかった言葉を僕は初めて言えた。
頬を染めて驚いていたシャンがニコッと笑った。
「実は俺も、同じ気持ちだよ……。嫌われるのが怖くて言えなかったけど、狼化してタクヤを襲うように抱くのも好きなんだ」
シャンの瞳が狼化したときみたいにぎらっと光って、僕の胸はキュンとときめいた。
おわり
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