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第四章 再びの満月

34.訪問者たち

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 激しいセックスに疲れて、僕は気絶するようにベッドに突っ伏していた。
 そのまま眠っていたのだろう。

 ドンドンドンッ!
 玄関の扉がノックされて目が覚めた。

「こんな夜に誰だろう……?」
 昼間だってこの家を訪れる人なんていないのに。
 シャンに声をかけたが返事はない。ベッドの上でタオルケットに包まって背中を向けている。眠っているみたいだ。

 今夜、シャンは狼になっているから「お前が出ろ」という意味で無視していることも考えられる。
 僕はタオルで精液まみれの顔を拭いた。このまま静かになってしまうなら出なくてもいいかなと思っていたけど、ドアはさらにドンドン叩かれる。

 一体誰だろう。ちょっと怖いと思いながら、仕方なくパジャマを着て、玄関のドアを開けた。
「はい……」

 外にいたのは三人の男だった。そのうち一人に見覚えがあった。バラの求婚男クレス卿だった。
 ゲッ、なんで今更この男が!? 何をしに来たというのか?

 顔を引きつらせながら、僕はどうにか愛想笑いを浮かべた。
「はは……、どうも……」

 他の二人は制服を着た人物だったが、彼らが拳銃を手にしていたので僕はぎょっとした。

「もう大丈夫だ、マイハニー。助けに来たよ」
 クレス卿は僕に飛びついてきた。相変わらず太っていてボヨンとダイナミックにお腹の脂肪が僕にぶつかった。

「え、助けにって……?」
「おやおや、なんてことだっ! ふくよかで美しかった君がこんなに痩せこけてしまうなんて……かわいそうにっ」
 僕の質問を無視して、クレス卿は最近少しすっきりしてきた僕の体を見て嘆いていた。
「でも大丈夫だ。こんなに瘦せっぽちになってしまってもなんの心配もいらないよ。うちへ来ればカロリーたっぷりのご馳走をたらふく用意するから、すぐにまた素敵に太れるよ」

 制服姿の二人は拳銃を構えて、家の中へずかずかと上がり込もうとした。
「……ちょ、ちょっとっ! 勝手に、何なんですか……!」

 僕が悲鳴みたいな声を出したから二人は足を止めた。
「おっと失礼。昨夜、グレゴリーさんの鶏数羽が何者かに食い荒らされる事件が起きたのです。我々が町の人々に聞き込み調査をしたところ、森の中のこの家に暮らす人物が疑わしいと……」

 町の人々のシャンへのひどい態度を思い出して僕の心は痛んだ。探し物のネックレスを届けたときだって、シャンは盗んだ犯人扱いをされかけたんだ。
「そんなっ……」

「我々の邪魔はしないでください。業務妨害であなたも逮捕しなければならなくなります」
 心がザワザワする。昨夜って……満月の夜。シャンが外で過ごした夜だ。まさか、今回は本当にシャンが犯人なの!?

 絶望する僕の肩をクレス卿がそっと掴んだ。
「大丈夫、警官たちに任せておけば何も怖いことないさ。憎きバケモノは捕らえられて然るべきなのだから」
 こんなときだというのにクレス卿はポケットからリンゴを取り出してシャリシャリ齧った。くちゃくちゃ咀嚼しながら別のリンゴをポケットから出して僕にも勧めてきた。僕は首を振って断った。

 ……うう、どうしよう。
 よりによって今、シャンは狼の姿だ。バケモノ、つまりシャンの狼の姿を見られたら、彼は鶏を食い荒らした犯人として大変な目に遭ってしまうだろう。

「だめっ、シャンは悪くない。バケモノなんかじゃないっ!」
「そう言うように洗脳されているんだね、ハニー? なんてことだ……」
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