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第六章 次なる展望

31.ピーちゃんの仲間探し

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 ビジネスがうまくいってからも俺たちは毎日のように三人で集まって食事した。
 それがお互い今後についての考えやアイディアを出し合ういい機会となっていた。
「この国ではカレー勇者はもうすっかり有名になったね。ねえ、他の国に商売を広げてみるのはどうかな?」
 アルティがそう言った。
「どこかいい国があるの?」
 俺は名案だと思った。確かにこの国内だけでは事業を拡大するのは限界がある。

「当てがあるわけじゃないけど、実は僕、ピーちゃんを仲間に会わせてやりたいなって思ってて。だから他の国を旅してみたいんだ」
「ピーちゃんの仲間っていうと、他のステュムパリデスってこと?」
 なんだ、そういうことかと僕は思った。
「うん、ピーちゃんは生まれてから一度も他のステュムパリデスに会ったことがないから、寂しいんじゃないかと思って。ピーちゃんの卵を持ち帰って来た僕の父さんはそれからすぐに亡くなったから、どこで卵を手に入れたのか、わからないんだけどね」

 話を聞いていたマギーが、
「ステュムパリデスの生態は謎に包まれていて、その生息地は明らかになっていませんよね。正直、私はピーちゃんに会うまでステュムパリデスなんて見たこともなくて、架空の鳥かと思っていました」
 と言った。

「なにか些細なことでも手がかりはないの?」
 俺はアルティの願いを叶えてやりたいと思った。
 だってピーちゃんは俺たちにとって大事な仲間だから。
「もう何年も前のことだけど、シュカの町へ来た旅の僧侶がペグで似た鳥を見たって言っていたんだ。あまり鳥に詳しい人じゃなかったけど、白くて大きな鳥でくちばしが青銅の色だったからそうかもって……」
「ペグって?」
「隣国の名前だよ」
「じゃあそこへ行ってみよう」

 工場がうまく稼働しだすと、俺たちはカレーパンのキッチンカーを初めてみることにした。
 キッチンカーと言ってもこの世界にはエンジンのついた車はないのでリアカーに道具を乗せて引いて歩かなければならない。
 少し大変だが近隣の国まで行ってカレーパンを売り歩きながら異国の町を見て回り、更なる事業拡大のヒントを得ながらステュムパリデスの生息地を探そうと計画した。

 俺たちはリアカーを引いて隣国ペグの国境へ向かった。
「ピーちゃんの仲間はペグという国のどんな場所にいるんだろうね」
「野生動物だからね。海辺か草原か深い山の奥か、そんな感じなんだろうけど……見当がつかないや」
「私、ステュムパリデスは森の守り神だという神話を読んだことがあります。それが本当なら森にいると思います」
「すごいや、マギー。森に手がかりがあるかもしれないね」
 俺が微笑みかけるとマギーもにこっと笑った。

「お前たちはなんだ?」
 検問所では横柄な態度の警備隊員が俺たちを取り囲んだ。
「ん!? その鳥はステュムパリデスじゃないか!」
 アルティの肩に止まるピーちゃんを見て彼らは剣を構えた。
「待って、僕たちは怪しい者なんかじゃない」
「俺たちはカレーパンを売り歩くものです。ペグ国内の観光名所やイベント会場でカレーパンを売るつもりです」
「カレーパン……? なんだそれは?」
「悪いが引き返してくれ。得体の知れないお前らを通すわけにはいかないんだ」

 俺たちは魔王を倒したヒーローとして国内では有名人だというのに、ペグの国の人たちにはそれが知られていないようだった。
 俺たちはその場でカレーパンを作って警備隊の人たちに食べさせた。
「ん、これはうまい……」
 揚げたてカリカリのカレーパンを彼らは美味しいと言って食べた。
「今まで食べたことがない味だ」
「お前らを行商人と認めてやろう」
 俺たちは通行を許可され、ペグへ入国した。
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