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第三章 南の島の冒険

12.古代遺跡

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 翌日、昨日とは違うルートで密林を進むと、木々の陰に偶然、洞穴を見つけた。
「ここ、通れるんですかね」
 マギーが洞穴を覗くとそこは強い風が吹き込んでいて、たちまち吸い込まれそうになった。
「きゃあっ!」
「マギー!」
俺は手を伸ばして彼女を引っ張ろうとしたが、俺たちはその中へ吸い込まれてしまった。

 洞穴は案外短く、俺たちは草の上で身を起こした。上には青空と太陽が見える。
「痛てて……」
「健一郎、あれって……」

 俺たちの目の前には古代遺跡が広がっていた。
 切り出した石を幾重にも重ねて作ったピラミッドのような巨大建造物や、長年の荒廃と風化によって壊れた石柱や彫刻などがいくつもあった。
 今は荒れ果てた廃墟になっているが、かつては偉大な文明が栄えていた場所だったのだろう。

「見てください、これ。ものすごく古い魔法陣です」
 マギーは遺跡の中心部の石板に刻まれた魔法陣を指差した。
「古代にも魔法使いがいたんだね? どんな魔法を使っていたんだろう……」
「さあ、残念ながら古代文字なので読めません」

 俺は周囲をキョロキョロと見回した。
「古代遺跡があるということは、近くにスパイスがあるかもしれないよ」
「え、どうしてですか?」
「古代の人々はミイラを作る際にクミンやアニス、シナモンなどを防腐剤として使用したと言われているんだ。もしかしたら今でもこの辺りに生えているかもしれないよ」
 それらのスパイスの特徴をマギーに伝え、俺たちは手分けして付近を探すことにした。

 しかし突然、空が暗くなってきた、と思うとすぐに、ぴかっ! と空が光り、ゴロゴロゴロ……と轟音が響き渡った。
 ザアーーーッと土砂降りの雨が降り出した。
「健一郎、こっちへ!」
 マギーが巨大建造物の入口から手招きしていた。

「ひどい雨だ」
「雨宿りしている間、この中を探検しましょう」
 俺はあまり気乗りしなかった。
「ええ? 崩れるかもしれないよ、危ないからあまり奥へ入らない方がいいって」
「大丈夫ですよ」
 魔法で出したランタンを片手に、彼女は強引に俺の手を引いた。
 仕方がないので、俺は彼女の探検に付き合うことにした。

「この建物って古代の人のお墓なのかな?」
「いいえ、儀式を行う呪術場です」
「儀式を行う呪術場……? ……どうしてマギーがそれを知っているの?」
 そう問いかけると彼女はぴたりと足を止めた。
「さっき外の魔法陣に書いてあったんですよ。気になったので魔法を使って古代文字を解読してみたんです」
「ああ、そうだったんだ」
 彼女は俺の手を引いて再び歩き出した。

 蜘蛛の巣を払い、飛び出して来るコウモリやヘビを器用に避けながら、奥へ奥へと進んで行く。
 視界が開け、大きな部屋に出た。
 部屋の中には椅子に座った不気味な顔の人間の巨大彫刻があり、お供え物らしき宝石や貴金属のアクセサリー、トンボ玉が置かれていた。
「ここでどんな儀式が行われていたと思いますか?」
 広い空間に住んだ彼女の声はよく響き渡った。
「さあ、わからないな……」

 部屋の横の壁にはなにやら壁画が描かれていた。
 絵の中では人々が木の皮をはがして乾かし、それをミイラに塗っている。
「あ、この絵、シナモンだ!」
「シナモンがほしいんですね? あなたにあげましょう。その代わり、私の願いを聞いてください」
「マギー……? 何言って……?」
 妙なことを言うなぁ、と俺は彼女の顔を見た。色白の肌、銀色の髪の華奢な彼女は俺の知るマギーのはずだけど、なんだか別人なように思えて俺は背中がゾクッと震えた。

 そのとき後ろから足音が聞こえた。
「動くな、お前たち。……はは、秘密の遺跡と財宝の在りかを見つけてくれてご苦労だった」
 こちらに銃口を向けているのはあの船の船長だった。
「え、船長!? どうして……」
「はは、俺がこの島まで船を出しているのはこの島の財宝伝説を知ったからさ。最初は自分一人で探していたけど見つからないから物好きな観光客にこの島を探検させて財宝を手に入れることを思いついたのさ。順番に撃ち殺してやろう……はは、大丈夫、苦しまないよう一撃で仕留めてやるさ」
 バンッ! と銃口は火を噴いた。
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