38 / 125
第五章 踏みにじられた俺の心 (怜一郎side)
38.エリカの懐妊
しおりを挟む
荷物を持って自宅の門をくぐるとお手伝いさんが駆け寄って来た。
「お帰りなさいませ、怜一郎様。龍之介様とはご一緒ではなかったのですか?」
俺の荷物を受け取りながら、彼女が尋ねた。
「ああ、一緒だったが、母親が入院したらしく、あいつは病院に寄ってから帰ってくるよ」
「左様でございますか。奥様に怜一郎様と龍之介様が帰られたらすぐに知らせるよう申し付けられておりましたので」
「え、何の用だろう……」
仕事は無断欠勤ではなくちゃんと有給を申請していたはずだから、母親に何か言われるようなことはしていないはずだった。
「それよりエリカはいるか?」
俺があの船のファッションショーで恥部を丸出しでステージを歩いたのはエリカの提案だったと龍之介が言っていた。だから俺は一刻も早く彼女を問い詰めたかった。偽装結婚の件も。とにかく聞きたいことだらけだ。
「エリカ様はリビングにいらっしゃいます」
荷物をお手伝いさんに任せ、俺は廊下を進みリビングのドアを開けた。
「おい、エリカっ! 今度という今度はさすがに……」
リビングのソファーでエリカは母親と一緒にいた。
「何です、怜一郎。大声を出して」
とエリカびいきの母親は俺を睨みつけた。
くそ、母が一緒にいるなんて。タイミングが悪かった……。
母親に擁護されて得意げな表情のエリカにイラっとした。
お前のせいで俺はとんでもない目にあったんだぞ、と怒鳴りたいが、母のいる前ではそんなことできない。
あの船でのことが両親にバレたら大変だ。
「怜一郎、龍之介さんは一緒じゃないの? ちょうどあなたたちに重大発表があるのよ」
「龍之介はちょっと用があって後から帰って来ます。……重大発表って何です?」
俺は母親に作り笑顔を向けた。
「ふふ、エリカがおめでたなの」
「……っ!」
お、おめでた……!?
俺は驚きのあまり声も出せなかった。
「本当はお兄様より龍之介さんに先に伝えたかったんだけど」
お腹に手を当てたエリカがそう言って微笑む。
「……そ、それは、龍之介の子……なのか……?」
震える声で尋ねた俺に、母親とエリカが笑った。
「そんなの当たり前でしょう」
「いやだわ……なんてことおっしゃるの、お兄様ったら」
エリカと龍之介は夫婦関係にないって、偽装結婚なんだって、昨日聞いたばかりだったのに……。龍之介のその言葉に俺はどれほど安堵したことか。
俺は騙されたのか? 気持ちまであいつに弄ばれたのか……?
「……う、嘘だろう……」
あまりのショックに俺はめまいを感じ、気が遠くなってくらくらと倒れそうになるような錯覚を覚えた。
絶望して立ち尽くす俺に母親は、
「嘘じゃないわ。怜一郎、あなたも早く結婚して子供を作りなさいね。宝条家の長男としてもっとしっかりと自覚をもってちょうだい」
といつもの冷たい口調でピシャリと言った。
「お帰りなさいませ、怜一郎様。龍之介様とはご一緒ではなかったのですか?」
俺の荷物を受け取りながら、彼女が尋ねた。
「ああ、一緒だったが、母親が入院したらしく、あいつは病院に寄ってから帰ってくるよ」
「左様でございますか。奥様に怜一郎様と龍之介様が帰られたらすぐに知らせるよう申し付けられておりましたので」
「え、何の用だろう……」
仕事は無断欠勤ではなくちゃんと有給を申請していたはずだから、母親に何か言われるようなことはしていないはずだった。
「それよりエリカはいるか?」
俺があの船のファッションショーで恥部を丸出しでステージを歩いたのはエリカの提案だったと龍之介が言っていた。だから俺は一刻も早く彼女を問い詰めたかった。偽装結婚の件も。とにかく聞きたいことだらけだ。
「エリカ様はリビングにいらっしゃいます」
荷物をお手伝いさんに任せ、俺は廊下を進みリビングのドアを開けた。
「おい、エリカっ! 今度という今度はさすがに……」
リビングのソファーでエリカは母親と一緒にいた。
「何です、怜一郎。大声を出して」
とエリカびいきの母親は俺を睨みつけた。
くそ、母が一緒にいるなんて。タイミングが悪かった……。
母親に擁護されて得意げな表情のエリカにイラっとした。
お前のせいで俺はとんでもない目にあったんだぞ、と怒鳴りたいが、母のいる前ではそんなことできない。
あの船でのことが両親にバレたら大変だ。
「怜一郎、龍之介さんは一緒じゃないの? ちょうどあなたたちに重大発表があるのよ」
「龍之介はちょっと用があって後から帰って来ます。……重大発表って何です?」
俺は母親に作り笑顔を向けた。
「ふふ、エリカがおめでたなの」
「……っ!」
お、おめでた……!?
俺は驚きのあまり声も出せなかった。
「本当はお兄様より龍之介さんに先に伝えたかったんだけど」
お腹に手を当てたエリカがそう言って微笑む。
「……そ、それは、龍之介の子……なのか……?」
震える声で尋ねた俺に、母親とエリカが笑った。
「そんなの当たり前でしょう」
「いやだわ……なんてことおっしゃるの、お兄様ったら」
エリカと龍之介は夫婦関係にないって、偽装結婚なんだって、昨日聞いたばかりだったのに……。龍之介のその言葉に俺はどれほど安堵したことか。
俺は騙されたのか? 気持ちまであいつに弄ばれたのか……?
「……う、嘘だろう……」
あまりのショックに俺はめまいを感じ、気が遠くなってくらくらと倒れそうになるような錯覚を覚えた。
絶望して立ち尽くす俺に母親は、
「嘘じゃないわ。怜一郎、あなたも早く結婚して子供を作りなさいね。宝条家の長男としてもっとしっかりと自覚をもってちょうだい」
といつもの冷たい口調でピシャリと言った。
21
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説
淫らに壊れる颯太の日常~オフィス調教の性的刺激は蜜の味~
あいだ啓壱(渡辺河童)
BL
~癖になる刺激~の一部として掲載しておりましたが、癖になる刺激の純(痴漢)を今後連載していこうと思うので、別枠として掲載しました。
※R-18作品です。
モブ攻め/快楽堕ち/乳首責め/陰嚢責め/陰茎責め/アナル責め/言葉責め/鈴口責め/3P、等の表現がございます。ご注意ください。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる