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3.悪魔憑き
正義を為せ
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いかに邪悪に冒され歪んだとしても、ロードリックは元騎士だ。
剣も体術も使える化け物となったロードリックを相手に戦うのは、一筋縄ではいかなかった。
今や完全に化け物と化してしまったロードリックは、膨れ上がった身体と人間を遙かに越えた力で、腕と剣を振り回す。
盾を持っていれば少しは違っただろう。
けれど、巡回では邪魔になることのほうが多いからと置いてきてしまった。ごろつきたちはとうに逃げ去り、周囲の家屋の窓と扉はぴったりと閉じられたままだ。誰かが出てくる気配もない。応援を呼びに行った警備たちが来るのもまだまだ先だろう。
つまり、エルレインはひとりだ。
「――“我らを導く聖なるお方よ、我が剣に加護を。我が前の悪なるものにあなたの怒りを”」
ブン、と唸るような音とともに、エルレインの剣が光を帯びた。
ロードリックは眩しそうに目を眇め、「神を騙るな!」と吠える。
「神が認めたのは、貴様ではない。私だ」
「うそをつくな! 神は俺を選んだ、神は俺に言葉をくれる!」
「悪魔の甘言に呑まれたか、ロードリック……“至高なるお方の怒りを知れ!”」
エルレインの剣が光の尾を引いて振り下ろされた。避けようととっさに上げたロードリックの腕が、斬撃に飛ばされる。
ぎゃあ、と悲鳴が上がった。
神の名を唱えながら、ロードリックが剣を必死に振り回す。
「神よ、神よ、神よ、神よ――」
「貴様に囁いているのは神ではない、ロードリック!」
「俺は神に選ばれた! 貴様じゃなく、俺に神がついているんだ! 神は、俺に、正義を為せと言っている!」
エルレインは舌打ちをひとつ漏らす。
本当に、埒が飽かない。
ロードリックは正気じゃない。
エルレインは大きく息を吐いて剣を構える。
「ロードリック、残念だ。そのザマでは、貴様から“悪魔”について聞き出すことも無理だろうな――」
ようやく戦いが終わった時には、あたりは惨状と言ってよい有り様だった。
倒れたロードリックはぴくりとも動かない。生かして捕らえたかったが、そんな余裕なんて皆無だった。
「アーシェ」
小さく呟いて、エルレインは祈る。
それから、倒れたロードリックに何か“悪魔《デヴィル》”の痕跡が残されてはいないかと、一歩近づいた。
「――これは、思っていたより保たなかったな。期待外れにも程がある」
急な声に、エルレインは慌てて視線を巡らせた。
いつの間にか……エルレインにみじんも気配を感じさせず、ロードリックの身体の向こう側にいつの間にか人影があった。
「誰だ!」
エルレインの誰何には答えず、人影はくすりと笑う。
頭からすっぽりとマントを被っているが、身長はエルレインと同じかやや低いくらいだ。体格は華奢に思える。性別は男で、人間か、それに類する種族だろう。鎧は付けていないし、目立つ武器も携帯していない。
すばやくそれだけを見て取ると、エルレインは油断なく剣を構えた。
「何しろ、正義を標榜する教会の騎士だ。もう少し長く保つと考えていたのに、たった三日で壊れてしまうなんてね。本当に期待外れだよ。
どうやら、あの司祭はそれなりの人物であったことも証明されたらしい」
「何を言っている?」
司祭? とエルレインは首を傾げる。くっくっと笑いながらロードリックを覗き込む男が言っているのは、いったい何のことなのか。
「貴様は“悪魔使い”か?」
「わたしはそんな下品なものじゃない」
男がロードリックに手を伸ばす。動くな、という声を無視してその身体から何かを引き抜くと、エルレインに向かって放り投げた。
「これをお前にあげよう。そもそも、これを始めたのはお前の教会なのだから」
思わず受け取めたそれは、血にまみれた……エルレインのよく知っている、騎士と正義の神を象徴する剣と天秤を象った、聖なる印だった。
「聖印……? いや、待て、これは!」
指先にしびれるような感覚が走り、エルレインは思わず聖印を取り落としてしまった。通常なら聖印から感じるはずの神の加護など、みじんも感じられなかった。
むしろこれは……。
「お前たちが“紅い瞳の悪魔”と呼ぶものの正体がそれだ」
「ば……馬鹿を言うな」
月の光を反射して鈍く輝く聖印は、間違いなく“騎士と正義の神”を示す聖なる印だ。ほぼ同じものを、エルレイン自身も肌身離さず、今も身につけている。
なぜ、神の御印が悪魔の正体だと?
エルレインは地面に落ちた聖印を胡乱げにしばし見つめて――急に何かに気づいたように、素早く聖句を唱えた。
もう一度聖印に集中すると、今度こそはっきりと、魔の気配が感じられた。
「その印が示しているのはお前の教会だよ。なら、この悪魔騒ぎを始めたのは、お前の教会だと考えるのが自然だ」
「――ふざけるな! 貴様が憑けたんだろう、悪魔使い!」
いっきに間を詰めて、エルレインは男に向かって剣を振るった。
この間合いならし損じることはない。
そう確信があったのに、しかし、まったくと言っていいほど手応えはなかった。
「幻影……魔法? それとも魔術か」
「そもそも、その聖印はお前の教会の司祭が持っていたものでね。
教会騎士ロードリックと違い、彼は最後まで正気を保っていた。短くて半年、長くて一年と考えると、変容もせずに持ち続けていられたのはさすが司祭というべきだろうな。褒めてやってもいいと……いや、しかし殺したいという欲求は抑えられなかったのか。ならば正気とは言いがたいな」
「まだ、言うのか」
「事実だよ。
挙げ句の果て、わたしを悪魔などと呼び称し、討伐を口実に乗り込んできたのだから、始末に負えない。おまけに、このわたしが育てたかわいい娘に勝手に手を付けるなどとは、純潔を善しとする神の司祭が聞いて呆れると思わないか?」
「悪魔……娘……?」
どこかで聞いた覚えのある話に、エルレインは息を呑む。
過去、この町で悪魔と呼ばれて討伐された者など、エルレインはひとりしか知らない。今、この男が話したことが本当なのだとしたら、こいつは、まさか。
「シグルド・シャルルロア、だと? まさか」
男――シグルドは、くすりと笑った。
「今はジークフリードと名乗っているのだが……そんなことはどうでもいいな。
――ところで、ひとつ言っておくが、エルレイン。わたしは、“家畜”を大切に扱う主義なのだよ」
剣を構えたままのエルレインに頓着することなく、シグルドはくつくつと笑い続けている。
「“家畜”は大切だ。粗末に扱えば、数が減り質が落ちる。そうなれば、困るのも飢えるのもわたしなのだからな」
「何の話だ」
「だから、最初に決めたように、ずっと丁寧に管理し増やし育てていたのだ――この町を、わたしの大切な牧場として」
「牧場……家畜? 貴様は……」
「それに、この世界はどうにも変化に乏しく、少々飽きていたのだが、見目のいい娘を手に入れられて、またしばらくは退屈が凌げると考えてもいた。
つまりは、いろいろと楽しみにしていたところを、新参者のお前たちが現れ、横槍を入れて台無しにしてしまったというわけだ」
シグルドはゆっくりとエルレインへと近づいた。
「だが、それこそもう、今となってはどうでもいいことだ。すべてはとうに終わった、昔の話なのだからな」
シグルドは被っていたフードを下ろした。淡い金の髪が風にそよぐ。
まだ若く見える男だ。戦士というよりは魔術師か司祭とでも言われたほうが納得するような痩身だ。
「エルレイン、わたしの知る、全知全能なる唯一絶対を標榜する神は、七日で世界を創ったと豪語していてね……実はわたしも、その不遜な神が決めた七日の制約に縛られているのだ。とても残念なことにね。
そこでひとつ尋ねよう――あの夜から今日まで、いったい何日が過ぎた?」
* * *
タイレルが“都”へと飛ぶ直前、ウォレスがよこしたのは、「太陽の元にある善なる魔の者を訪ねよ」という託宣だった。
魔なのに善だとは、いったいどういうことなのかと不思議には思ったが、それをさらに調べる時間はなかった。
“太陽の元にある者”だというなら、きっと太陽神教会にいる何者かなのだろう。
到着してすぐ、概要をしたためた親書を作り、太陽神教会の大神官に面会を願い出て……それが叶ったのは翌日遅くのことだった。
「あなたのまとめた親書を読みましたよ。その“託宣”に従い、我が教会を訪ねたと?」
「はい。地平の神の司祭である友人の託宣に、こちらに手がかりがあることははっきりと出ておりましたので」
初老に差し掛かった年齢の大神官が、ふむ、と考え込む。鮮やかな黄色に染められた、金糸や銀糸をふんだんに使って太陽を表す聖なる印を刺された神官衣が、大神官の身じろぎにかすかな衣擦れの音を立てる。
「正直なところ――彼女のことがあまり広がっても、我が教会の信用に関わるのですよ。よって、あなたには他言無用の誓いを立ててもらわねばなりません」
「はい」
厳かな口調で告げられて、タイレルの背筋が伸びる。
「私の身体に流れる妖精族の血と名にかけて誓うことはやぶさかではありません。
ですが、せめて今回の件に関わる私の仲間と、“正義と騎士の神”の聖騎士エルレインに話すことはお許しいただきたいのです」
大神官はタイレルを見つめる。
何かを見透かそうとするようにしばらく見つめて、「よいでしょう」と頷いた。
「あなたの親書にあった彼女との面会には、我が教会の聖騎士であり、彼女の伴侶となったハイラムが立ち会います。よろしいですね?」
「それは、もちろん」
それでは付いてくるようにと言って、大神官は立ち上がった、
剣も体術も使える化け物となったロードリックを相手に戦うのは、一筋縄ではいかなかった。
今や完全に化け物と化してしまったロードリックは、膨れ上がった身体と人間を遙かに越えた力で、腕と剣を振り回す。
盾を持っていれば少しは違っただろう。
けれど、巡回では邪魔になることのほうが多いからと置いてきてしまった。ごろつきたちはとうに逃げ去り、周囲の家屋の窓と扉はぴったりと閉じられたままだ。誰かが出てくる気配もない。応援を呼びに行った警備たちが来るのもまだまだ先だろう。
つまり、エルレインはひとりだ。
「――“我らを導く聖なるお方よ、我が剣に加護を。我が前の悪なるものにあなたの怒りを”」
ブン、と唸るような音とともに、エルレインの剣が光を帯びた。
ロードリックは眩しそうに目を眇め、「神を騙るな!」と吠える。
「神が認めたのは、貴様ではない。私だ」
「うそをつくな! 神は俺を選んだ、神は俺に言葉をくれる!」
「悪魔の甘言に呑まれたか、ロードリック……“至高なるお方の怒りを知れ!”」
エルレインの剣が光の尾を引いて振り下ろされた。避けようととっさに上げたロードリックの腕が、斬撃に飛ばされる。
ぎゃあ、と悲鳴が上がった。
神の名を唱えながら、ロードリックが剣を必死に振り回す。
「神よ、神よ、神よ、神よ――」
「貴様に囁いているのは神ではない、ロードリック!」
「俺は神に選ばれた! 貴様じゃなく、俺に神がついているんだ! 神は、俺に、正義を為せと言っている!」
エルレインは舌打ちをひとつ漏らす。
本当に、埒が飽かない。
ロードリックは正気じゃない。
エルレインは大きく息を吐いて剣を構える。
「ロードリック、残念だ。そのザマでは、貴様から“悪魔”について聞き出すことも無理だろうな――」
ようやく戦いが終わった時には、あたりは惨状と言ってよい有り様だった。
倒れたロードリックはぴくりとも動かない。生かして捕らえたかったが、そんな余裕なんて皆無だった。
「アーシェ」
小さく呟いて、エルレインは祈る。
それから、倒れたロードリックに何か“悪魔《デヴィル》”の痕跡が残されてはいないかと、一歩近づいた。
「――これは、思っていたより保たなかったな。期待外れにも程がある」
急な声に、エルレインは慌てて視線を巡らせた。
いつの間にか……エルレインにみじんも気配を感じさせず、ロードリックの身体の向こう側にいつの間にか人影があった。
「誰だ!」
エルレインの誰何には答えず、人影はくすりと笑う。
頭からすっぽりとマントを被っているが、身長はエルレインと同じかやや低いくらいだ。体格は華奢に思える。性別は男で、人間か、それに類する種族だろう。鎧は付けていないし、目立つ武器も携帯していない。
すばやくそれだけを見て取ると、エルレインは油断なく剣を構えた。
「何しろ、正義を標榜する教会の騎士だ。もう少し長く保つと考えていたのに、たった三日で壊れてしまうなんてね。本当に期待外れだよ。
どうやら、あの司祭はそれなりの人物であったことも証明されたらしい」
「何を言っている?」
司祭? とエルレインは首を傾げる。くっくっと笑いながらロードリックを覗き込む男が言っているのは、いったい何のことなのか。
「貴様は“悪魔使い”か?」
「わたしはそんな下品なものじゃない」
男がロードリックに手を伸ばす。動くな、という声を無視してその身体から何かを引き抜くと、エルレインに向かって放り投げた。
「これをお前にあげよう。そもそも、これを始めたのはお前の教会なのだから」
思わず受け取めたそれは、血にまみれた……エルレインのよく知っている、騎士と正義の神を象徴する剣と天秤を象った、聖なる印だった。
「聖印……? いや、待て、これは!」
指先にしびれるような感覚が走り、エルレインは思わず聖印を取り落としてしまった。通常なら聖印から感じるはずの神の加護など、みじんも感じられなかった。
むしろこれは……。
「お前たちが“紅い瞳の悪魔”と呼ぶものの正体がそれだ」
「ば……馬鹿を言うな」
月の光を反射して鈍く輝く聖印は、間違いなく“騎士と正義の神”を示す聖なる印だ。ほぼ同じものを、エルレイン自身も肌身離さず、今も身につけている。
なぜ、神の御印が悪魔の正体だと?
エルレインは地面に落ちた聖印を胡乱げにしばし見つめて――急に何かに気づいたように、素早く聖句を唱えた。
もう一度聖印に集中すると、今度こそはっきりと、魔の気配が感じられた。
「その印が示しているのはお前の教会だよ。なら、この悪魔騒ぎを始めたのは、お前の教会だと考えるのが自然だ」
「――ふざけるな! 貴様が憑けたんだろう、悪魔使い!」
いっきに間を詰めて、エルレインは男に向かって剣を振るった。
この間合いならし損じることはない。
そう確信があったのに、しかし、まったくと言っていいほど手応えはなかった。
「幻影……魔法? それとも魔術か」
「そもそも、その聖印はお前の教会の司祭が持っていたものでね。
教会騎士ロードリックと違い、彼は最後まで正気を保っていた。短くて半年、長くて一年と考えると、変容もせずに持ち続けていられたのはさすが司祭というべきだろうな。褒めてやってもいいと……いや、しかし殺したいという欲求は抑えられなかったのか。ならば正気とは言いがたいな」
「まだ、言うのか」
「事実だよ。
挙げ句の果て、わたしを悪魔などと呼び称し、討伐を口実に乗り込んできたのだから、始末に負えない。おまけに、このわたしが育てたかわいい娘に勝手に手を付けるなどとは、純潔を善しとする神の司祭が聞いて呆れると思わないか?」
「悪魔……娘……?」
どこかで聞いた覚えのある話に、エルレインは息を呑む。
過去、この町で悪魔と呼ばれて討伐された者など、エルレインはひとりしか知らない。今、この男が話したことが本当なのだとしたら、こいつは、まさか。
「シグルド・シャルルロア、だと? まさか」
男――シグルドは、くすりと笑った。
「今はジークフリードと名乗っているのだが……そんなことはどうでもいいな。
――ところで、ひとつ言っておくが、エルレイン。わたしは、“家畜”を大切に扱う主義なのだよ」
剣を構えたままのエルレインに頓着することなく、シグルドはくつくつと笑い続けている。
「“家畜”は大切だ。粗末に扱えば、数が減り質が落ちる。そうなれば、困るのも飢えるのもわたしなのだからな」
「何の話だ」
「だから、最初に決めたように、ずっと丁寧に管理し増やし育てていたのだ――この町を、わたしの大切な牧場として」
「牧場……家畜? 貴様は……」
「それに、この世界はどうにも変化に乏しく、少々飽きていたのだが、見目のいい娘を手に入れられて、またしばらくは退屈が凌げると考えてもいた。
つまりは、いろいろと楽しみにしていたところを、新参者のお前たちが現れ、横槍を入れて台無しにしてしまったというわけだ」
シグルドはゆっくりとエルレインへと近づいた。
「だが、それこそもう、今となってはどうでもいいことだ。すべてはとうに終わった、昔の話なのだからな」
シグルドは被っていたフードを下ろした。淡い金の髪が風にそよぐ。
まだ若く見える男だ。戦士というよりは魔術師か司祭とでも言われたほうが納得するような痩身だ。
「エルレイン、わたしの知る、全知全能なる唯一絶対を標榜する神は、七日で世界を創ったと豪語していてね……実はわたしも、その不遜な神が決めた七日の制約に縛られているのだ。とても残念なことにね。
そこでひとつ尋ねよう――あの夜から今日まで、いったい何日が過ぎた?」
* * *
タイレルが“都”へと飛ぶ直前、ウォレスがよこしたのは、「太陽の元にある善なる魔の者を訪ねよ」という託宣だった。
魔なのに善だとは、いったいどういうことなのかと不思議には思ったが、それをさらに調べる時間はなかった。
“太陽の元にある者”だというなら、きっと太陽神教会にいる何者かなのだろう。
到着してすぐ、概要をしたためた親書を作り、太陽神教会の大神官に面会を願い出て……それが叶ったのは翌日遅くのことだった。
「あなたのまとめた親書を読みましたよ。その“託宣”に従い、我が教会を訪ねたと?」
「はい。地平の神の司祭である友人の託宣に、こちらに手がかりがあることははっきりと出ておりましたので」
初老に差し掛かった年齢の大神官が、ふむ、と考え込む。鮮やかな黄色に染められた、金糸や銀糸をふんだんに使って太陽を表す聖なる印を刺された神官衣が、大神官の身じろぎにかすかな衣擦れの音を立てる。
「正直なところ――彼女のことがあまり広がっても、我が教会の信用に関わるのですよ。よって、あなたには他言無用の誓いを立ててもらわねばなりません」
「はい」
厳かな口調で告げられて、タイレルの背筋が伸びる。
「私の身体に流れる妖精族の血と名にかけて誓うことはやぶさかではありません。
ですが、せめて今回の件に関わる私の仲間と、“正義と騎士の神”の聖騎士エルレインに話すことはお許しいただきたいのです」
大神官はタイレルを見つめる。
何かを見透かそうとするようにしばらく見つめて、「よいでしょう」と頷いた。
「あなたの親書にあった彼女との面会には、我が教会の聖騎士であり、彼女の伴侶となったハイラムが立ち会います。よろしいですね?」
「それは、もちろん」
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