真夜中の吸血鬼

ぎんげつ

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4.ミカちゃんとご近所さん

7.三割増のおっさん

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「ただいまあ! あ、恵方巻だ!」

 玄関を開けるなり皿に乗った太巻きを見て、私は歓声を上げた。今日の夕食は絶対これだと思ってたんだ。
 ミカちゃんがエプロンを外しながら、「今日は節分ですから」とにっこり笑う。
 だから、恵方巻でテンションの上がってた私は、ついうっかりとこんなことを言ってしまったのだ。

「ねえ、いつも思うんだけどさ」
「なんですか?」
「ミカちゃんて女装が似合いそうだよね」
「……いえ、さすがに体格的に苦しいと思いますが」

 ミカちゃんがちょっと顔を顰めた。まあ、確かに北欧系だけあって長身だし、決して華奢なわけじゃないんだけど。

 そこでやめておけばいいのに、私はなぜかさらに言い募ってしまう。ミカちゃんは美人だし、常日頃考えていたことを、ついつい口に出してしまった私は絶対悪くないと思うんだ。

「そうかな? でも、女装はダメでも化粧は似合いそうだよね」
「……律子さんは、私に何をさせたいんですか?」

 玄関先に置いた鞄はそのままに、急ににこにこ笑いながらミカちゃんがぐいっと私に迫ってきた。どうやらミカちゃんの、何かのツボを突いてしまったらしい。
 これやばい笑い方だ、と逃げる間もなく、ミカちゃんが私を抱き上げて食卓へと向かう。しっかり抱えたままダイニングチェアに座り、いったい何をと思ったとたん、おもむろに恵方巻を手に取って私の口に突き付ける。

「南南西はあちらですね。律子さん、口を開けてください」
「え、ミカちゃん何するつも……」

 り、と言い終えるのも待たず、ミカちゃんがめちゃくちゃ嬉しそうな笑顔で私の口にぐっと恵方巻を突っ込んできた。

「食べてる間は喋らず、いっきにというのが決まりでしたね」

 逃げられないようにと、背中からがっちりと私を抑え込むミカちゃんは、たいへんに嬉しそうである。

「さあ、このままどうぞ。ちゃんと完食してくださいね」

 ひどい、ミカちゃんひどい。

 なんとなく次に来るものの予想もついたが、完食しなきゃ許しませんという顔で笑うミカちゃんの迫力に負けて、私は必死で恵方巻を食べた。
 口いっぱいに頬張って、顎が攣るんじゃないかというくらい動かして、それはもう必死に完食したのだ。
 さすがミカちゃんお手製の恵方巻は、たしかに美味しかった。
 すごく美味しかった。



「律子さん」

 恵方巻を食べ終えてお吸い物もしっかり飲まされて、そっとミカちゃんの顔を見上げると、もう目が真っ赤だった。
 これはアレですか。恵方巻を食べる私に興奮したということですか。
 あは、と引き攣る私の顎をがっちり押さえて上を向かせると、ミカちゃんがキスをしてきた。がっつき方が体感でいつもの三割増くらいだろうか。
 ミカちゃんもこんなにノリノリになるんだなと考えようとして、いや、ミカちゃんはいつも意外にノリノリだったなと思い返す。
 もともと知ってたのを隠していたのか勉強したのかは知らないけれど、意外に、何というか、AVみたいなコトもやりたいらしい印象はあった。

 やはり、これは以前カレヴィさんが言ってたことから察するに、エロいことが食料確保の成否に繋がるからこそ研究熱心だということなのか。

「スーツ姿の律子さんというのも、なんだか新鮮で良いですね」
「ん、何……」

 背中側から抱えるように抱いてタイトスカートを捲り上げつつ、ミカちゃんが嬉しそうに囁く。なんだろう、オフィスものプレイというやつなのか。
 いつもと違う、ストッキングのしゃりしゃりした感触を味わうように、ミカちゃんの手が私の太腿を何度も撫でてくる。
 は、と熱のこもった吐息を漏らして、ミカちゃんが何度もうなじに口付ける。

 とうとう脚の間の湿った場所に辿り着いたミカちゃんの指が、かりかりと引っ掻くように蕾を擽った。

「ん、ふ……っ、んん」

 唇を貪りながら、絶妙な強さで押されたりこねられたりされて、ぴちゃぴちゃ水音まで立ち始める。

「律子さん、ずいぶんと染み出してきましたよ」
「ん、だって、あ、ふ……」

 布越しの刺激がもどかしくて身体を捩る私に、ミカちゃんが嬉しそうに目を細め、くすりと笑った。

「スーツをちゃんと着たままなのに、びしょびしょに濡らして。律子さんがこんなにいやらしいなんて知りませんでした」

 スイッチが完全にオンになっている。こうなったミカちゃんは止まらない。

「ん、そんな、ミカちゃんが……」
「私が、なんですか?」

 ミカちゃんがまた唇を塞いだ。ん、ん、とくぐもった声だけが私の喉から漏れて、ミカちゃんの指の動きについ合わせて動いてしまい、くちゅくちゅという音が大きくなる。
 けど、なかなかそれ以上の刺激が与えられず、悶々とした熱ばかりが溜まっていく。さっきからずっとお尻に当たりっぱなしの、ミカちゃんの固く立ち上がったものが欲しくて、ぐりぐりと腰を擦り付けてしまう。
 口を貪るミカちゃんの喉からも、くぐもった声と、は、という吐息が漏れた。

「律子さん、欲しいんですか?」

 尋ねられて、すっかり脳味噌の芯まで蕩けていた私は「ほしいの」とねだる。「何が欲しいんですか?」とミカちゃんが意地悪そうな顔で訊き返し、いい加減限界だった私は「ミカちゃんの、固いのがほしいの」と答える。
 ミカちゃんは、そんな私に蕩けそうな顔で「仕方ありませんね」と笑う。

 ぴり、という微かな音がしたとたん、ずっとひくひく震えていた入り口に、ちゅぷ、とミカちゃんの指が埋められた。

「あ、あっ……!」

 隙間から入り込んだミカちゃんの指が中を掻き混ぜる。欲しかった刺激が与えられて、でもまだまだ足りなくて……びくっと跳ねながらミカちゃんの腕にしがみついて、「もっと」と腰をくねらせる。

「解す必要なんてないくらい、ぐずぐずで熱いですね」

 耳元で低く低く囁かれて、私はきゅうっとミカちゃんの指を締め付けてしまった。それだけでも気持ちよくて、はあはあと息を荒げてしまう。「ね、もっと、ちょうだい」とねだると、ミカちゃんはさらに笑みを深くする。

「律子さんはどんどん堪え性がなくなりますね」
「ん、だって、っ、あ、あ」

 耳を食み、指でぐりぐりと掻き混ぜながら、ミカちゃんはチャックを下ろした。かちかちに膨れ上がったものを外に取り出して指の代わりにあてがい、ぬるぬるの入り口に擦り付ける。
 それだけなのに、あまりに気持ちよくて私はいってしまいそうになる。

「ほら、律子さん。ちゃんと南南西を向かないと」
「あ、え……」

 腰を抱えて方角を正されて、え? と思った瞬間、かちかちになったミカちゃんがずるりと入っていった。

「下の口でも、ね?」

 ミカちゃんがくすくす笑う。それ、どこのエロDVDのネタなんだと突っ込む間もなく奥までをずんと貫かれ、たちまち脳味噌が沸騰した。俺の恵方巻、とか、恵方巻プレイとか、頭を過ぎったけどもうどうでもいい。そんなのどうでもいいから、とにかくミカちゃんを食べたい。

「ああ、ちゃんと全部頬張れましたね」
「あ、あ……あ、動いて、止めちゃ、やあ……っ」

 ぺろりと首を舐めながら、ミカちゃんは私の上着のボタンとブラウスのボタンを順番に、中途半端に外していく。

「ああ、律子さん、こんな格好でこんなに涎を垂らしているなんて、本当にいやらしい。いつからこんなに淫らになってしまったんですか」

 外したボタンの隙間から手を入れ、ずらしたブラからはみ出た胸を揉みながら、ミカちゃんが囁く。なんだかいつにも増して絶好調な気がする。

「み、ミカちゃん、が、私の……あっ、あああっ」

 ゆるゆる抽送しながら首を齧るミカちゃんの目がいつもよりずっと赤く染まっているのは、絶対気のせいじゃない。
 立たされて、テーブルに手を突かされて後ろから突き上げられて、奥の、深い深い場所にミカちゃんを感じて、もう掠れた声を上げることしかできない。

「こんな、服を着たまま後ろからなんて、本当に律子さんは堪え性がない」
「や、あ……だって、だって……あ、あ……い、きそ……」

 ぐちゅぐちゅと湿った音を立てながら、ミカちゃんが激しく私を攻め立てる。

「こんな格好でいくんですか? 我慢できないんですか?」
「あ、あっ、むり、だめ、ああ……っ、おねがい、ミカちゃん」

 いやらしいいやらしいと繰り返し囁かれて、だんだん、そうか、私はいやらしくて淫乱なんだ、なんて考え始めてしまう。もっともっといやらしくなってもいいから、もっとミカちゃんが欲しい。

「あ、いきたいの……ミカちゃん、いかせ……いかせてえ……っ」
「そんなにですか? 律子さんはもう少し我慢を覚えなければいけませんね」

 呆れたような口調で、でも容赦なく突き上げて、ミカちゃんが首を舐める。とたんに、ぞくぞくとした快楽が背骨を駆け上がり、“もっと欲しい”が膨れ上がる。

「あ、あっ、ミカちゃん、おねがい、おねがい……ああっ」

 とうとうミカちゃんがテーブルに私を押さえ込んで大きく奥を抉り、首に牙を突き立てた。は、と息が漏れてまぶたの裏が真っ白になり、私の身体が跳ねる。中が痙攣して、ぎゅうぎゅうに、力いっぱいミカちゃんを締め付けて、どくどくと吐き出しながら脈打つミカちゃんを感じる。
 脱力した私をひっくり返し、正面から抱き締めてキスを降らせながら、余韻を味わうようにミカちゃんがゆっくりと動く。
 恍惚とした表情を浮かべて、わずかに上擦った声で、私を呼ぶ。

「ああ……いやらしい律子さんも、かわいいですよ」
「……私がいやらしいんじゃなくて、ミカちゃんがいやらしいんだもん」
「そうですか?」

 くつくつ笑いながら、ミカちゃんがまた私の奥をつつき始める。

「ん……っ、それに、恵方巻プレイとか、おっさんの発想じゃない」
「そんなことはないですよ」
「どこで、そんなの、覚えてきたの?」
「よくある発想ではないですか」

 ミカちゃんの動きがまた速くなってきた。やっぱりいやらしいのはミカちゃんじゃないか。
 いったばかりで敏感な身体は、ミカちゃんに擦られてまた震えだす。

「ん、ふ、ミカ、ちゃん……なん、あっ、また、このまま……」
「律子さんがいやらしいからです」
「そんな、あ、んっ、ん、ん、ミカちゃんが……んふっ」

 口を塞がれて、わたしの抗議はまた封じられてしまった。



 恵方巻の何にそこまでツボを突かれたのか本当にわからなかったけど、今日のミカちゃんが何もかも三割増だったことは確かだ。
 翌日、あちこち筋肉痛になってたのは、間違いなくミカちゃんが悪い。


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