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最終章 壊れた時計が指すものは

5.

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 力なくのびた咲良の腕に腕時計だけがついている。自身の動きで揺れる手首に自分の物であるあかしを認め、さらに雅文は猛り立った。汗ばむ肌を密着させて、彼女の肌の感触を体全部で味わいながら、最後の抽送をくり返す。

 咲良は白い喉をさらして雅文の動きに耐えていた。のびた腕にも力が入り、強く拳が握られる。内へと腰を沈めるたびに、隆起しきった自身のものに熱い泥濘が絡みつく。夢想ではない本物の刺激が男の本能を突き上げた。
 ついに我慢ができなくなって二度目の絶頂をかけ上がる。意識が遠のきそうな快感に雅文は声を上ずらせた。

「うっ、あっ、すごい、いいよ、もう、また、ああッ、さくらあっ──‼」

 彼女の名前を呼びながら、ひときわ深く腰を打ちつける。背筋がしびれる感覚に大きく背中を波打たせ、雅文は長々と射精した。

 噴出させた熱いものを最後までしぼり出した後、涙もかわいた彼女の頬に自分の頬をこすりつける。乱れてしまった黒髪が、たった今まで行っていた激しい行為を表していた。
  呼吸を整えている間、五感で彼女を確かめながら甘い余韻にひたっていると、次第に眠気が下りて来た。体の欲求が満たされた上、素肌を重ねているために安心感を覚えたらしい。
 固く目を閉じた咲良のまぶたに優しく唇をふれさせて、そっと彼女から身を離す。

「──ごめん、ちょっと休ませて。やっぱり少し疲れてたみたいだ」

 濡れた抜き身をさらしたままで雅文は横に寝そべった。満足感から息を落とし、念のため咲良と手をつなぐ。石を飲んだような顔つきのまま、咲良は微動だにしなかった。

「頼むから、僕が寝てる間にここから逃げたりしないでくれよ。もし今度そんなことになったら、自分でもどうするかわからない」

 無感情な瞳を向ける咲良の裸身に目をやって、薄く唇に笑みを乗せる。

「ちゃんと写真も撮ったんだ。寝てる間に、君に内緒で。本当は僕一人だけで楽しむつもりだったんだけど……。顔が見えないようにはしたんだよ。でも、鎖骨のほくろがはっきり映っちゃってるから、もし僕が学校に君の写真を送ったら、もうTシャツが着られなくなるよ」
「……‼」

 体を起こした咲良の顔に雅文はにっこりと笑いかけた。

「そういうの、リベンジポルノって言うんだろ? 大丈夫だよ、本当はそんなことしたくない。君の裸を僕以外の誰かに見せることなんて……。でも周りに言わせると、今の僕はどうもおかしいらしいから……そんなことないと思うけど、まあ、何をするかわからない。──君の学校だけじゃなくて桃花ちゃんの学校にも送ったら、それはそれで大変だな」
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