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第二章 おもちゃの密室
32.※
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「君も気持ち良くしてあげるよ……」
僕は先端を沈めたままで笑香の胸に頬を寄せた。今までの刺激に色づいた乳首が、まるで恥じらうかのように視線の先で震えている。
僕は鼻息を荒くして右の乳首に吸いついた。
「はあっ──!」
今度は明らかな嬌声を上げ、笑香が背中を大きく反らせる。
舌と唇で刺激を加え、もう片方に目を移す。僕が征服した印の唾液でとがった乳首が濡れ光った。刺激に慣れさせないように時おり甘噛みしてやると、笑香は首を左右に振ってこらえきれないように叫んだ。
「だ……、め、え、しろうくんっ──‼」
僕は唇を胸から離すと笑香に優しく微笑んだ。
「いいよ、イッて、笑香。そばにいるから、怖くないよ……」
言いながら、本格的に腰の抽送を開始する。
「……あ、あっ、だめ、しろうく……!」
笑香が声を上げるたび、つながり合った僕達の間から、とろりとした熱いスープのようなはしたない液体が漏れ出て来る。それは後から後からあふれて隆起したものに絡みつき、僕が体を沈めるたびに激しい水音を立てていた。
「あっ、あっあッ、ああ‼」
笑香の切羽つまった声に僕も自身の息を乱した。笑香と二人で呼吸を合わせ、唇を求めようとする。
しかし笑香はその白い頬に幾筋もの涙を伝わせて、僕の口づけから逃げた。自分の思いを否定され、僕は大きく顔をゆがめた。
──結局笑香も、僕を受け入れてはくれなかった。
僕は溺れかけた人間が丸太にすがりつくように、自分がきつく拘束している笑香の体を抱きしめた。笑香が背中を震わせる。
「あっ、あ、ああ、あ──っ‼」
一瞬早く笑香がイッて、僕は一人で取り残された。
「ああっ、僕も、えみかぁっ……!」
置いて行かれた僕の体は、行き場所のない情動となって笑香の中に放出された。むなしい思いを胸に抱えて笑香の抜け殻を抱きつぶす。
僕は笑香とつながったまま笑香を上から見下ろした。何の色もないその表情に、自分の目頭にたまる涙を白い頬へと落としてつぶやく。
「笑香。──いつまでも一緒だよ」
笑香から返る言葉はなかった。
*
「──う、わあッ‼」
そこで、僕はベッドから飛び起きた。心臓が早鐘のように鳴り、全身の緊張ゆえか頭ががんがんと痛みだす。
僕はあたりを見回した。暗がりの中、一人で自分がベッドにいることを確かめる。深々とため息をつくと、飛び出しそうに脈打っている自身の胸を押さえ込んだ。
「……夢か」
つぶやきながら、それでも生々しく残る夢の残滓に肩を震わせる。腰のあたりが生温かいのは、今まで何度も経験のある情けない生理現象だ。
──笑香。いつまでも一緒だよ。
──シロ君。いつまでも一緒よ。
自分が笑香に言った言葉が、優しくおぞましい記憶の母親の声音とかぶった。
僕は両手で頭を抱えた。
僕も母親と同じなのか。
僕も笑香をああやって、母親のように壊すのか。
再び自分の手を広げ、汗で濡れそぼる指を見つめる。
僕も母親と同じように、いつかこの手でとんでもないことをしてしまうに違いない。
僕は広げた手の中に深く自分の顔をうずめた。閉じたまぶたに涙がにじむ。
僕はもう、多分壊れている。
今まで怯えていたものが疑いようのない確信に変わって、僕はそのまますすり泣いた。
僕は先端を沈めたままで笑香の胸に頬を寄せた。今までの刺激に色づいた乳首が、まるで恥じらうかのように視線の先で震えている。
僕は鼻息を荒くして右の乳首に吸いついた。
「はあっ──!」
今度は明らかな嬌声を上げ、笑香が背中を大きく反らせる。
舌と唇で刺激を加え、もう片方に目を移す。僕が征服した印の唾液でとがった乳首が濡れ光った。刺激に慣れさせないように時おり甘噛みしてやると、笑香は首を左右に振ってこらえきれないように叫んだ。
「だ……、め、え、しろうくんっ──‼」
僕は唇を胸から離すと笑香に優しく微笑んだ。
「いいよ、イッて、笑香。そばにいるから、怖くないよ……」
言いながら、本格的に腰の抽送を開始する。
「……あ、あっ、だめ、しろうく……!」
笑香が声を上げるたび、つながり合った僕達の間から、とろりとした熱いスープのようなはしたない液体が漏れ出て来る。それは後から後からあふれて隆起したものに絡みつき、僕が体を沈めるたびに激しい水音を立てていた。
「あっ、あっあッ、ああ‼」
笑香の切羽つまった声に僕も自身の息を乱した。笑香と二人で呼吸を合わせ、唇を求めようとする。
しかし笑香はその白い頬に幾筋もの涙を伝わせて、僕の口づけから逃げた。自分の思いを否定され、僕は大きく顔をゆがめた。
──結局笑香も、僕を受け入れてはくれなかった。
僕は溺れかけた人間が丸太にすがりつくように、自分がきつく拘束している笑香の体を抱きしめた。笑香が背中を震わせる。
「あっ、あ、ああ、あ──っ‼」
一瞬早く笑香がイッて、僕は一人で取り残された。
「ああっ、僕も、えみかぁっ……!」
置いて行かれた僕の体は、行き場所のない情動となって笑香の中に放出された。むなしい思いを胸に抱えて笑香の抜け殻を抱きつぶす。
僕は笑香とつながったまま笑香を上から見下ろした。何の色もないその表情に、自分の目頭にたまる涙を白い頬へと落としてつぶやく。
「笑香。──いつまでも一緒だよ」
笑香から返る言葉はなかった。
*
「──う、わあッ‼」
そこで、僕はベッドから飛び起きた。心臓が早鐘のように鳴り、全身の緊張ゆえか頭ががんがんと痛みだす。
僕はあたりを見回した。暗がりの中、一人で自分がベッドにいることを確かめる。深々とため息をつくと、飛び出しそうに脈打っている自身の胸を押さえ込んだ。
「……夢か」
つぶやきながら、それでも生々しく残る夢の残滓に肩を震わせる。腰のあたりが生温かいのは、今まで何度も経験のある情けない生理現象だ。
──笑香。いつまでも一緒だよ。
──シロ君。いつまでも一緒よ。
自分が笑香に言った言葉が、優しくおぞましい記憶の母親の声音とかぶった。
僕は両手で頭を抱えた。
僕も母親と同じなのか。
僕も笑香をああやって、母親のように壊すのか。
再び自分の手を広げ、汗で濡れそぼる指を見つめる。
僕も母親と同じように、いつかこの手でとんでもないことをしてしまうに違いない。
僕は広げた手の中に深く自分の顔をうずめた。閉じたまぶたに涙がにじむ。
僕はもう、多分壊れている。
今まで怯えていたものが疑いようのない確信に変わって、僕はそのまますすり泣いた。
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