13 / 20
13
しおりを挟む「麗一」
「うん」
「……俺」
羞恥で掻き消えたくなる自分を奮い立たせるのは、最上級の快楽と、相手のひたひたに満たされた顔だ。その味を知っている。逸って喉が鳴る。どうしようもなく渇いている。
「れ、たい」
出っ張りできもちよくなるはずの空護が、泣きながら顔を真っ赤にして呟く。羽織った黒いシャツの下で麗一の肌がそそけだつ。思わず口元がゆるんで、悪い笑みが浮かんだ。慌てて強くうつむいて隠すと、空護のむきだしの太腿から引き締まった腹、うすっぺらい胸へかけて掌を這わせる。
尖った乳首に指先をわざと引っ掛けると腫れぼったい縁がヒクヒク応えた。もうこんな身体になって、女の子は抱けないかもしれない。仄暗い悦びを覚えて目を細める麗一に、焦れて空護がもう一度、呻くように命じた。
「いれろよ、麗一」
顰め面の髪のあわいで、正直な耳が、焼け落ちそうに色づいていた。どちらからともなく顔を寄せ合い、視線を交わして、空護が舌を突き出して麗一の唇をかるく舐める。許しを得てくちづけは深いものへ変わっていった。
多忙に阻まれ触れ合わずにいた代償がこの爛れた生活だ。麗一の回復のみに没頭できる環境を用意したと言われたので、別荘の主である波知乃には織り込み済みなのかもしれないが、本当にプレイするか食べるか眠るしかしていなくて眩暈がする。家でもない場所でこれは無かった。すくなくとも空護の感覚ではそうだ。
仕事は当然行けていない。麗一もときどきリモートで指示を送るけれど、基本は部下に任せているらしい。今日で何日目になるのか、とりわけ寝室では昼夜の区別すら曖昧で、ただずっと微温湯のような快楽に浸されている。
「は、あ……っ」
「イイ……おく、きてる……」
汚さないよう空護もスキンをつけてもらってから、服で散らかる座面に膝立ちになって背後から麗一を受け入れる。既にほぐれてひと息に最奥を明け渡すと空護は長い息を吐いた。麗一の腕が腰にまわる。一度強く突き上げられて、嵌まるとそのまま捏ねるようになかを刺激された。
あの夜痛めつけられた以外にも色の異なるすこし古い痣が麗一の腕や太腿にはあった。プレイ中にしつこく尋ねると、自分でしてしまうのだとしぶしぶ教えてくれて、Domとしてまるでケアできてなかったことを空護は心から悔いた。
だからというわけでもないけれど、コマンドを使えばどうにでもなるし嫌なら撥ね退ければいい行為も、付き合ってやりたくて最大限協力している。空護をきもちよくさせたいと励む麗一の好きにさせてあげることで、償いの気持ちを示しているつもりだった。
それにしても本能に突き動かされているためか知らないが、麗一のタフさにはびっくりする。空護のほうが若いのに、役割が違うので比べても無意味かもしれないけれど、くたくたで、その原因に気が付いてちょっとだけ悲しくなってしまった。
(あ、また)
逞しく張り出した部分を弱点に引っ掛けられて、慣れない感覚が疼きだす。反応が変わるのか麗一の呑み込みが早いのか、逆に空護に眠れる才能があったのか。予感を拾って思わず身構える。
時間をかけて前後動を繰り返し、感じるところは念入りにかきまわす。挿し込んでいる麗一でなく、おさめている空護の快感を優先する動きに覿面に高められる。内壁が熱芯を不規則に締めつけて、まるで何かを促しているようで居た堪れない。
「あっ、……ん、」
「空護すごい、きつい、ッ」
「……だって、イキそ……っ」
腰をつかんでいた麗一の手が前に降りてきたが、そこは然程逼迫してないのを覚ってまた元の位置に戻った。胎内から強めに刺激されて今度は声が洩れる。腿がこわばる。反射的に縁に力がこもって、肩口に歯を立てられた。その痛みにすら今の空護は昂奮した。
感じていることを言葉におろすのも無理になって、壊れたように喘いでいた。ソファの背凭れに覆いかぶさるようにしがみつき、強烈な官能の波に目をきつく閉じる。こすられることによって生まれた熱が、空護を内から押し上げる。もう止まらない。
肌が鳴るほど打ちつけられて膝が衝撃を支えきれなくなっていた。恰も逃げようとするみたいにずれていく腰を麗一に抱え込まれ、片足を持ち上げられて、不安定な体位はより深くまで彼の侵入を可能にした。
「ぁつい、……ぅ、あ」
「空護」
「うん、イイ、よぉ、もっと」
いつもより奥まで届いているような気がして、すこし怖かった。決して乱暴にはせず、ふたたび思いやるような速度に戻って硬いまま擦りつけられて、あっと思う間もなく唐突に空護はのぼり詰める。
ひくっと喉がわななき、震えながら突っ張った身体とは打って変わって活発に顫動する内壁に、麗一もとびきりの締め上げを食らってうすい被膜の中にたっぷりと迸らせた。
「っは、あ、……はあっ」
「空護?」
「うっ……く、ァ」
快感がおさまらず、達したのにまだヒクついて麗一を舐めしゃぶる粘膜に空護のほうが困惑していた。重だるい手足にはろくに力も入らないくせ内臓が勝手に快楽を貪る。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
【Dom/Subユニバース】Switch×Switchの日常
Laxia
BL
この世界には人を支配したいDom、人に支配されたいSub、どちらの欲求もないNormal、そしてどちらの欲求もあるSwitchという第三の性がある。その中でも、DomとSubの役割をどちらも果たすことができるSwitchはとても少なく、Switch同士でパートナーをやれる者などほとんどいない。
しかしそんな中で、時にはDom、時にはSubと交代しながら暮らしているSwitchの、そして男同士のパートナーがいた。
これはそんな男同士の日常である。
※独自の解釈、設定が含まれます。1話完結です。
他にもR-18の長編BLや短編BLを執筆していますので、見て頂けると大変嬉しいです!!!
しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
[完結]麗しい婚約者様、私を捨ててくださってありがとう!
青空一夏
恋愛
ギャロウェイ伯爵家の長女、アリッサは、厳格な両親のもとで育ち、幼い頃から立派な貴族夫人になるための英才教育を受けてきました。彼女に求められたのは、家業を支え、利益を最大化するための冷静な判断力と戦略を立てる能力です。家格と爵位が釣り合う跡継ぎとの政略結婚がアリッサの運命とされ、婚約者にはダイヤモンド鉱山を所有するウィルコックス伯爵家のサミーが選ばれました。貿易網を国内外に広げるギャロウェイ家とサミーの家は、利害が一致した理想的な結びつきだったのです。
しかし、アリッサが誕生日を祝われている王都で最も格式高いレストランで、学園時代の友人セリーナが現れたことで、彼女の人生は一変します。予約制のレストランに無断で入り込み、巧みにサミーの心を奪ったセリーナ。その後、アリッサは突然の婚約解消を告げられてしまいます。
家族からは容姿よりも能力だけを評価され、自信を持てなかったアリッサ。サミーの裏切りに心を痛めながらも、真実の愛を探し始めます。しかし、その道のりは平坦ではなく、新たな障害が次々と立ちはだかります。果たしてアリッサは、真実の愛を見つけ、幸福を手にすることができるのでしょうか――。
清楚で美しい容姿の裏に秘めたコンプレックス、そして家と運命に縛られた令嬢が自らの未来を切り開く姿を描いた、心に残る恋愛ファンタジー。ハッピーエンドを迎えるまでの波乱万丈の物語です。
可愛い子ウサギの精霊も出演。残酷すぎないざまぁ(多分)で、楽しい作品となっています。
昭和浪漫ノスタルジー「遥か彷徨の果の円舞曲」
歴野理久♂
BL
「オメガバース」等、現在のBLが苦手なゲイ♂の僕ですが、昭和に流行った「お耽美」とか「やおい」の感覚は懐かしいです。そこで思いっ切り劇的な昭和風ドラマに挑戦してみようと思います。財閥の御曹司とか高級男娼とか当たり前に登場します。養父は一代で財を成した大立者、養母は旧公家華族出身のおひい様。更におフランスの侯爵様まで顔を出し、そこに横溝正史風な因縁話まで絡み、これでもかと言うくさ~い物語に仕上げます。はっきり言って見切り発車です(どうなる?俺!)
代表作の私小説「僕のこの恋は何色?」もよろしくお願いしま~す♡
【完結】似て非なる双子の結婚
野村にれ
恋愛
ウェーブ王国のグラーフ伯爵家のメルベールとユーリ、トスター侯爵家のキリアムとオーランド兄弟は共に双子だった。メルベールとユーリは一卵性で、キリアムとオーランドは二卵性で、兄弟という程度に似ていた。
隣り合った領地で、伯爵家と侯爵家爵位ということもあり、親同士も仲が良かった。幼い頃から、親たちはよく集まっては、双子同士が結婚すれば面白い、どちらが継いでもいいななどと、集まっては話していた。
そして、図らずも両家の願いは叶い、メルベールとキリアムは婚約をした。
ユーリもオーランドとの婚約を迫られるが、二組の双子は幸せになれるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる