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ソマリの朝
06
しおりを挟むせめて美しいままでと手に掛けていたかもしれない。
「陣太、俺、できねぇ。やったことねえ」
「だからいんだろ」
「……やっぱいつもの、」
「男も女も度胸だわ」
億斗に『いつもの』と言わせた事実にも大変昂奮したが、抱きたい気持ちがそれを凌駕して、彼の腰を掴んで引きおろす。抵抗に遭って力比べになる。すんなり伸びた太腿がプルプルしているのが可笑しくてそんなにかよと脱力しそうになったけれど、億斗が自分を許しやすいように、引っぱるのはやめなかった。
勃ちあがる茎に手を添えて、じりじりと距離を詰めてくる窄まりを待ち受ける。被膜の先端がさわったところで一旦びっくりして跳ね上がったが、いなして引き下ろした。つるりとした丸みにそって押し開かれ、いっぱいまで伸ばされて、頭に貫かれてゆく。あたたかな胎内を繊細な器官で感じる。滑りは過分なほどにあった。
「く、……うぅっ、は、んん……ッ」
いきむと緩んですこし進んだ。一気に呑んでしまわないよう、億斗を支えるのに神経を全振りする。痛みを与えてしまったらこれまでの努力がパアだ。セックスはきもちいものだと思ったままでいてもらわなければ困る。
「ぜんぜん、はいんねぇ」
「ンなことねぇよ」
すこしずつすこしずつはみ出した分が短くなっている。もどかしいのは本当だが無慈悲に突きあげたりはしない。気づけば葵のほうも、息を詰めて奥歯をかみ締めている。だからなのか億斗のぬくったい掌が、刺青の走る肩から二の腕にかけてを頻りに撫でてくる。自分も怖くて苦しい筈なのに、こういう性質が嵐世みたいな子どもも引き寄せるのかもしれない。
逃げを打ってどうしても前へ前へかかろうとする重心を、微妙に傾けてうしろに行かせてやる。他人の手を加えられたほうが案外簡単にいく場合もあるのだ。腰を持って小刻みに上下に揺するのも、よかれと思って施したというのに快感が強烈すぎてかギッと涙目で睨まれて余計元気になってしまった。ああうまくいかない。
欲望に正直にふわふわの尻を揉んでみる。ここに何か小動物でも飼ってるのか?と疑いたくなるほど素晴らしい手触りは健在で、でれっとしていると鼻の頭をかじられた。しかしその仕種の御蔭で一番張り出していた部分がくぐったらしく、ぬぷぅっと残りは呆気ないほどあっという間に億斗の中に含まれていった。
「はー……」
「はい、ったぁ……」
「頑張ったな」
「でかすぎんだよ、んっ、ぁっ……じんたの」
まるで他の味も知っているかの如きくちぶりが可愛くない。顔を顰めるとビンタの痕がずきずき痛む。やってきた張本人がじっと見つめて、そうっと表面をかすめるくらいのキスをそこに置いた。睫毛の濃さに感動を覚える。そういう距離を許してくれている事実にも。葵にだけ。
「あっ、あっ、んっ、奥ぅ」
「お前が動かねえと届かねーぞ。おら、腰振れ」
「硬……っあ、ひらく、ッて、ゃ、」
これが余所でつまみ食いしてきた奴にできるかと思う。我ながら元気すぎやしないかと呆れるくらい膨れてガチガチになっている。目の前に差し出されている胸元を剥いてじかに顔を埋め、スーッと深く呼吸を取る。眠るより効果的なリフレッシュ法かもしれなかった。尻側にやらしく手をすべらせて億斗の上体を支え、葵からもゆるく突き込む。
持ち主からも放っておかれて律動に合わせてけなげに揺れている億斗の熱芯を手慰みにあやしながら、懸命に腰をくねらせて快楽を追いかける様に目を細める。各所に手は回しているけれど、やはり最も警戒しなければならないのは家族だろう。折を見て本人から連絡させたほうが小事で済むかもしれない。所属事務所はあっさり金でくちに蓋をすることができ、こう言ってはなんだが億斗は、それほど将来を嘱望されてはいなかったようだった。
それでも誰かには、家族には頼りにされていたに違いない。億斗名義で金を振り込むか、いろいろ仕込んで偶然大金が転がり込むように装うか、考えることはまだまだ山積している。情報収集を再度行なってから練り直そうと葵は唇を撓わせた。
「……に、余所事、してン、だよ」
「ん? 内緒」
「フン……こんな、だせぇツラじゃ、……女のとこ、行けねえな、ざまあみろ、ッ」
「あー妬くな妬くな」
してもあまり意味のない嫉妬だが葵は満たされる。そうとも知らず、億斗はむっとして、きゅうっとうしろで食い締めてきた。報復が褒美になってしまっている。気持ちのよさに素直に喘ぐ。
「ちげえ帰せ! 俺は犬猫じゃねえッ」
「バーカ俺様のネコだわ」
「――……」
長い腕が巻きついてきて軋んで息が止まるほどきつく抱擁される。情熱的な行為に高められ、舌なめずりする淫らな口元に誘われて深々と捩じ込みながらくちづけに溺れた。仰のく白雪の喉笛に唇を押しあて、先に億斗が絶頂したのを確かめて葵もあとを追うように、浮き上がるほど腰を叩きつける。立て続けの激しい悦楽に上ずった声をあげてすぐにまた極める姿は葵を甚く満足させた。男冥利に尽きるというやつだ。
とても一度では終われそうにない。そう悟って手際よくゴムをつけ替えたのはよかったが何か違和感が付いてまわる。正体まではわからない。不可解なことだったけれど今はいいとうち捨てて、次はいつも通りに億斗を裏返し尻を重点的に愛し尽くす。達く時に洩らした猫のような唸り声はやけに耳に残り、午後になっても思い出すだに葵の身体を熱くさせた。
それから一日二日経ってもまだ熱がひかないのでかかりつけの医者に診せると、青痣の下で二本ばかりあばらにひびが走っていた。
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