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しおりを挟む肩や胸を押し退けようとする力は弱くなかったが明治にはやはり及ばず、じわっと体重をかけてやれば背中からドサリと座面に倒れた。ここぞとばかりに覆いかぶさって杏里の脚の間に腰を入れてしまう。きつく抱きしめて何度も顎を入れ換えながら、ぐっぐっと腰を突き上げた。目的の透けて見える行為に美貌が徐々に染まっていく。
「……っゃ、めろ、って! 俺の話聞いてたか?!」
聞いていたが従う気はないので無視してキスを続ける。ふかふかした唇に歯を当て、内側のなめらかな粘膜を舐り、侵入して上顎のかたい天井をぬるぬると舐めまわす。背面に捩じ込んだ手はくっきりと浮いたかいがらぼねを辿って、もうひとつを若干下げ気味のボトムのウエストから差し込んで下着越しに尻を揉みしだいた。わざと開くように掴み、割れ目に指を添わせる。するする撫でると杏里が喉をヒクつかせてあえかな悲鳴を洩らした。
「七緒っ、ダメだって、」
「よく考えたら即ハメOKの男連れ込んでそのまま帰すとかありえねえだろ」
「……ッ」
杏里が座っていた滑り台はそういう意味も含む場所だ。指摘してやると目を見開いて唇を引き結ぶ。
わかっている。セックスで引き止めるなんて最低だが他に方法を思いつかない。ずっと我慢を重ねていた反動で自分でも手を離せないのだ。ろくに憶えてもないくせに杏里の匂いに、感触に、抱き心地に安らいでいる。欠けていたピースを埋めてもらったような快さだ。
すぐにでも交わりたいがここでは備えがない。押し倒したまましばし考え込んだ明治に、杏里が外したバッグを拾い上げ取り出した物を胸に押しつけてくる。見ると新品の避妊具だった。
「ハ、用意いいな」
「自衛だろ」
たしかに、どこの誰ともわからないゆきずりの相手と致すのだ。その時我が身を守らなければあとからでは逃げられてもすべがない。サイズもぴったりなのは偶然か、好みか、意味があったのならすこしは浮上したかもしれないがそれ以上彼がくちを開かなかったので曖昧に放置された。
フィルムを剥がして中身を抜き箱を床に打ち捨てる。一枚だけ噛んでちぎるしぐさを杏里がまばゆげに見あげていた。キスで濡れた唇は半開きで、中で赤い舌の蠢くのが凄絶に色っぽい。下着ごとパンツを脱がせて、あらわになった局部まできれいなのに思わずため息がこぼれた。これはさすがに無い。
心が伴わないのはもう諦めた。本気で言ったわけじゃないが、そう思っていれば杏里が自分を許しやすいならそうすればいい。長い腕が飛んできて明治のベルトを緩めようとしたが、やんわりと退けてパッケージの中身を指に嵌める。彼の下へ手をくぐらせると、割れ目をふたたび何回か往復して、窄まりをくすぐるように指先を触れさせた。
「……マジか」
「ン、っ」
これはひょっとすると、普通にその気だったのだろうか。縁は既にやわらかくほぐれて、ゼリーの助けがなくても咥えてくれたかもしれなかった。むにむにと反射で締めつけてくる壁の具合の良さときたら言葉にならない。ここに突っ込んだらさぞかし抜けそうだ。そうするつもりでさわっているけれど、おなじくらい面白くなくて明治は仏頂面になる。
軽くどこかで一発済ませてきたのではなく自分で下準備してきたのだろうとはわかる。わかるが、モヤモヤする。勝手にしてろと言われても仕様が無いただの我儘だが嫌なものは嫌だった。ぐちっ、ぐちっと激しめに出入りさせても杏里は痛がる様子も苦しむ様子もない。ひくひくと脚の付け根を震わせている。えろい。
「あっ、あっ、んぁっ、……は、あっ、んんっ」
「めちゃくちゃ仕上がってんじゃねえか……クソ、俺の愉しみ奪いやがって」
「んあ!」
なかで弱点を責めているからか若い茎は早くも完全形になって、暴発されても困るのでそちらにも避妊具をかぶせる。あまりサイズが変わらないのも微妙に矜持を刺激した。根元の袋をあやしてやると悩ましくかぶりを振る。
胎内で感じるのに慣れた身体はやはりネコ向きだと思うのだが。よもや明治しか経験がないわけじゃないだろう。相手が初めてじゃなくてもおかしくない歳になってくると、過去は触れないほうが互いのため、という暗黙の了解に縛られてあまり知る機会がない。別にどうでも良いのだが杏里のことだけは気になる。ローションを足しながら、奥を拡げながら、耳元に囁いてみる。
「なあ、鴫宮くんて、どのくらいネコやった?」
「そ、なの、……んたに、関係ねぇ、だろっ」
「……うしろだけでイケるよな?」
「はぁっ、んんんん……っ!」
やってみせろと言うように、ぐりっと腹に隠されていた杏里の弱みを捏ねると呆気ないほど簡単に彼は身体を反らし、ビクン、と大きく跳ねて絶頂した。ぶるぶると性器も揺れたがまだ硬さを保っている。くたりと座面に落ちた杏里が熱い息を吐いて下腹を波打たせる。快感の源は奥のほうで、吐精と違い達成感を得てない所為か感覚が長く尾を引くようだ。もぐもぐと明治の指を食む内側が別のものを欲して媚びている。清廉な見た目に反し、淫らすぎる肉体にあてられ、気づけば痛いほど腰が張り詰めていた。
「ぁっ、やっ、……んっ、……んぁっや、七緒、おねがぃ、」
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