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おまけ
その2 ②
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「ずいぶん早かったね」
「恥ずかしい……」
「恥ずかしがらなくていいよ。気持ちよかった?」
「気持ちよかったの……サーシャ」
コンスタンツェから名前を呼ばれるたびにアレクサンドルはときめく。
アレクサンドルにとってコンスタンツェとの婚姻は長年の悲願だった。彼女を手に入れるために万策尽くしたという意味では政略であったが、コンスタンツェにとっては他に選択肢がない文字通りの政略結婚である。
婚礼前の六夜は彼女の身体を慣らすためだけではなく、少しでも自分に好意を重ねてもらうための時間でもあった。誠意を尽くした気であったし、コンスタンツェからの好意が生じているのもうっすらとは感じていた。六夜目に誘いをかけたのは、単に抱くことを許されているというだけではなく、コンスタンツェの意志で選ばれて交わりたかったというのも大きかった。彼女は初夜をただの政略結婚の義務と考えているのだろうから。だが、蓋を開けてみると、彼女はただの政略結婚相手も、最初から大切に想ってくれていたのだ。
しばらく動かずにいるアレクサンドルに、コンスタンツェが優しく問いかけてきた。
「サーシャはまだ達していないでしょう? 動いていいのよ」
「少し、考えごとをしていて」
「まあ! 私との大切な閨の最中に?」
コンスタンツェがあえておどけて言うので、アレクサンドルはくすりと笑い、正直に伝えることにした。
「コニーが私人のサーシャを愛してくれたことも、皇帝アレクサンドルを会う前から大切に想ってくれていたことも、どちらも僥倖だと改めて考えていた」
アレクサンドルの言葉を聞き、コンスタンツェは微笑んで言った。
「アレクサンドル陛下、私にお慈悲をくださいませ。私の秘められた最奥にある宮に、どうか、どうか子種を……!」
「誰よりも愛おしいコンスタンツェ殿下、聖なる春の女神に我が子種を捧げましょう」
くだらない三文芝居。だが、コンスタンツェが今も皇帝としてのアレクサンドルを大切に想ってくれていると改めて実感し、妙に胸が熱くなった。
「恥ずかしい……」
「恥ずかしがらなくていいよ。気持ちよかった?」
「気持ちよかったの……サーシャ」
コンスタンツェから名前を呼ばれるたびにアレクサンドルはときめく。
アレクサンドルにとってコンスタンツェとの婚姻は長年の悲願だった。彼女を手に入れるために万策尽くしたという意味では政略であったが、コンスタンツェにとっては他に選択肢がない文字通りの政略結婚である。
婚礼前の六夜は彼女の身体を慣らすためだけではなく、少しでも自分に好意を重ねてもらうための時間でもあった。誠意を尽くした気であったし、コンスタンツェからの好意が生じているのもうっすらとは感じていた。六夜目に誘いをかけたのは、単に抱くことを許されているというだけではなく、コンスタンツェの意志で選ばれて交わりたかったというのも大きかった。彼女は初夜をただの政略結婚の義務と考えているのだろうから。だが、蓋を開けてみると、彼女はただの政略結婚相手も、最初から大切に想ってくれていたのだ。
しばらく動かずにいるアレクサンドルに、コンスタンツェが優しく問いかけてきた。
「サーシャはまだ達していないでしょう? 動いていいのよ」
「少し、考えごとをしていて」
「まあ! 私との大切な閨の最中に?」
コンスタンツェがあえておどけて言うので、アレクサンドルはくすりと笑い、正直に伝えることにした。
「コニーが私人のサーシャを愛してくれたことも、皇帝アレクサンドルを会う前から大切に想ってくれていたことも、どちらも僥倖だと改めて考えていた」
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