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第十章 扉が閉じて別の扉が開く

272 あなたが一番の贈りもの ③

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「新くん」
「ん? 何?」
「……しようよ」

 顔を覗き込んでくる眼鏡を掛けていない新くんと目が合った。間近で見る素顔に、なんだかとてもどきどきする。ああ、やっぱり私、新くんの顔、大好きだなあ。

「新くん、嫌……?」

 返事がないので不安になり、思わず訊ねると、新くんは優しい笑みを浮かべて言った。

「ううん。今日は若葉ちゃんがとても疲れているように見えたから、誘えなかっただけ。もちろんしたいよ」

 新くんは私の唇にそっとキスを落とし、ナイトウェアのボタンをゆっくり外し始めた。
 レースのタンクトップの上から優しく胸を揉まれる。布越しの刺激は気持ちいいけれど、もどかしくもあって、直にふれてほしいと新くんの耳元に囁いた。

「我慢できないんだ」
「うん……」

 新くんのくすくす笑う声がなんだか少し遠くに聞こえる。ショーツを下ろされた時、ああ、私は早く中に新くんを受け入れたくてたまらないんだと実感した。蜜が糸を引いて、脚からシーツへとゆっくり伝い落ちる感触。

「新くん、私、今日は対面がいい」

 新くんと密着したくてリクエストする。新くんは、わかったと快諾してくれた。
 ゴムを着けゆるく脚を開いて座っている新くんに、私は少しずつ腰を下ろしていく。受け入れているのに、受け入れられている。私の中は縋りつくように締まっていくのに、新くんの剛直で広げられていく。全て入っても、なんだか心もとなくて、思わず私は新くんにしがみついた。

「おつかれさま」

 つながったまま新くんが優しく頭をなでてくれて、すごく安心する。

「私、すごくがんばったの」
「うん。よくがんばったね」
「ずっと、新くんと抱き合いたかった」
「僕も」

 新くんの腕の中は、温かくて、優しくて、安心できる場所。
 何も考えずに気持ちよくなりたい。そんな願いを新くんは簡単に叶えてくれる。

 新くんは私にくちづけ、舌を絡めながら、そっと背中をさすってくれた。ふんわりした羽でそっと触れられるような繊細な動きに、思わず身震いする。
 一度腕の戒めを解き、新くんは私の乳首に口をつけ、吸った。甘い快感が胸とお腹の奥に走る。思わず漏らしてしまった嬌声に、新くんが上目遣いで微笑んだ。いつもの新くんとは違う、魔性のようなものを感じる。私をもっと魅了してほしい。
 ああ、身体が中から外から、ぐずぐずに溶けてしまいそう。溶けてしまいたい。

 新くんは私を抱きかかえるようにして、下から何度も優しく突き上げてくれた。密着していて気持ちいいけれど、なんだか少し物足りない。
 もっと無理矢理奪われたい。そう、耳元で囁くと、新くんはくすくす笑いながら「若葉、わがまま」と言って、私をゆっくりベッドに横たわらせた。
 私を組み敷くような態勢になった時の新くんは無敵だ。少し乱暴に入口を擦られて、中ほどがめくられるみたいにしばらく出し入れされて、最奥まで容赦なく突かれて、私は絶頂へと導かれる。
 心地よい疲労感と充足感のおかげで、私はひさしぶりに熟睡した。
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