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第八章 人の数だけ気持ちがある
203 狭き門にあるマシュマロ ④
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大学に入学し、俺は教職課程を履修した。ディスカッションやグループワークを行う授業が多いこともあり、同じく履修しているメンバーは段々覚えてくる。片岡は積極的で発言力もあるので、最初から目立っていた。
初めは人の話を聞かない奴だと思っていた。でもそうではないと、ずいぶん後になってから気づいた。周囲が片岡の雰囲気に飲まれて勝手に黙ってしまうだけで、こちらから話し掛ければきちんと向き合ってくれる。あまりにも自信を持っていて、正しく見える人間に立ち向かうのは、勇気がいる。人を委縮させてしまう雰囲気のせいで、むしろ片岡は損をしているのかもしれない。
片岡は決して悪い奴ではない。ただ、報われてきた者特有の傲慢さなのだろう。「達成できないのは努力が足りない」と判断しがちだ。もっといろいろな要因があるのに。
そして、自分が免除されていることに無頓着だ。他者が気を遣って先回りしてやってくれている部分に気づいていない。おそらく、彼にとってはあたりまえに与えられてきた、当然の権利だからだろう。
両親が中学校の教員で、親族も教員が多いと言っていた。採用試験対策のノウハウがあるし、サポートも期待できる。きっと彼は通るだろう。真面目で、勤勉で、年長者の受けがいい。そして彼の科目は英語で、募集人数が多い。仮に教員になれなくても、英語なら潰しがきく。
俺が目指している中学社会は、募集人数が少ない上に倍率が高い。
難関を突破できる人数が少ない状況を、「狭き門」なんていうけれど、本来の意味は違う。「狭き門」は新約聖書の「マタイによる福音書」と「ルカによる福音書」に出てくる聖句が由来だ。
狭い門からはいれ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い。そして、そこからはいっていく者が多い。命にいたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見出すものが少ない。
つまり、「救いに至る道は困難である」という意味。「勝ち組」「負け組」のように誤用されることが多い言葉だ。いや、もう、誤用が定着しつつあるかもしれない。言葉は生き物だ。
初めは人の話を聞かない奴だと思っていた。でもそうではないと、ずいぶん後になってから気づいた。周囲が片岡の雰囲気に飲まれて勝手に黙ってしまうだけで、こちらから話し掛ければきちんと向き合ってくれる。あまりにも自信を持っていて、正しく見える人間に立ち向かうのは、勇気がいる。人を委縮させてしまう雰囲気のせいで、むしろ片岡は損をしているのかもしれない。
片岡は決して悪い奴ではない。ただ、報われてきた者特有の傲慢さなのだろう。「達成できないのは努力が足りない」と判断しがちだ。もっといろいろな要因があるのに。
そして、自分が免除されていることに無頓着だ。他者が気を遣って先回りしてやってくれている部分に気づいていない。おそらく、彼にとってはあたりまえに与えられてきた、当然の権利だからだろう。
両親が中学校の教員で、親族も教員が多いと言っていた。採用試験対策のノウハウがあるし、サポートも期待できる。きっと彼は通るだろう。真面目で、勤勉で、年長者の受けがいい。そして彼の科目は英語で、募集人数が多い。仮に教員になれなくても、英語なら潰しがきく。
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狭い門からはいれ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い。そして、そこからはいっていく者が多い。命にいたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見出すものが少ない。
つまり、「救いに至る道は困難である」という意味。「勝ち組」「負け組」のように誤用されることが多い言葉だ。いや、もう、誤用が定着しつつあるかもしれない。言葉は生き物だ。
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