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第六章 まだ願いごとが叶った頃

135 お気に入りを身に纏って ②

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「一泊二日の旅行に、気合い入れすぎじゃない?」
「だって! 初めての旅行で! 誕生日なんだもん!」

 ゴールデンウィーク初日。今日は玲美ちゃんに付き合ってもらって、買い物に来ている。
 私が「せっかくだから洋服と下着は新調したいし、おやつと飲みものも用意したい! 旅館で遊ぶためにボードゲームかカードゲームなんかがあってもいいかなあ!」と主張したら、少しあきれた表情で「修学旅行じゃないんだから」と返された。

 はしゃぎすぎたかなと私がしょんぼりしていると、玲美ちゃんは「たぶん旅館ではゲームなんかする暇ないから、荷物になるだけ。ないと思うけど、場が持たなかったら、スマホのゲームでもすればいいし。おやつと飲み物は嵩張るし重いから、最後に近所のスーパーかドラッグストアで買えばいいでしょ」と言ってくれた。なるほど、確かに。
 私はつい夢見がちなことを言ってしまうけど、玲美ちゃんはきちんと現実的に捌いてくれる。それでいて私の意図も汲んでくれる、優しいところが好き。

 このところ着回しに凝っていたから、服を買いに来るのはひさしぶり。そんなに流行を追う方ではないけれど、やっぱり新しいものは見ていてわくわくするなあ。
 玲美ちゃんと一緒にお店を回るのも、とっても楽しくて嬉しい。大学でお昼を一緒に食べることは多いけど、最近それ以外の時間はなかなかスケジュールが合わなかったから。

「あ! このワンピース、素敵!」

 紫色のノースリーブの膝丈ワンピース。ノースリーブだから羽織ものがあればスリーシーズンいけるはず。

 いい羽織ものがないかなあと見回してみると、シンプルな白いVネックのカーディガンがあった。風合いのよい綿だから、これも使い回しが利くはず。貝ボタンをよく見ると、五弁のお花を模した形をしていて、とても素敵。こういうちょっとしたところが凝っていると、ぐっといい感じになるよね。一日目はこれでいい。

 二日目は若葉色のスカートを着たいから、合いそうなトップスを選んで、このVネックのカーディガンを着まわせばよさそう。
 もう一度周囲を見回してみると、フロントに細かいフリルがたくさんついた紺のシフォンのタンクトップがあった。紺だけどフリルが縦方向にふんだんに使われているから華やかな印象だし、タンクトップだから下着の紐のことをあまり気にしなくていい。紺だから透けも気にならないし、とても便利そう。

「玲美ちゃん! この三つにしようと思うから、試着したところ見てみて!」
「わかった」

 玲美ちゃんは美的感覚に優れているし、忌憚なく的確な意見をくれるから、こういう時にとても頼りになる。
 店員さんに声を掛け、試着させてもらう。どれも着心地は問題なくて、玲美ちゃんからもお墨付きをもらったから、笑顔で購入した。
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