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第五章 今が一番よいタイミング
121 私の彼氏と素敵な自動車 ④
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「何回払いにいたしますか?」
ヤスさんが笑顔で訊ねると、新くんは即答した。
「一括で」
新くんがそう言った瞬間、みんな固まった。
「え、え、七桁いくよ……?」
「うん。貯金全部使えば、買えるから」
「でも、貯金全部なくなったら、困らない?」
「今なら貯金なくてもなんとかなるし、これからバイトしてまた貯めればいいから。社会人になってから貯金全部なくなった方が、よほど困ると思って」
新くんは淡々と言うけど、本当にいいんだろうか。
「若葉ちゃんの彼氏は、思い切りがいいねえ」
「ボーダーコリー、甲斐性あるな……」
「『一括で買えるものは買え。借金はするな』が家訓の一つなので」
新くんは笑顔でそう答える。すごい。
一括ということで、ヤスさんはお得になるように、かなりサービスしてくれたみたい。お兄ちゃんが少しびっくりした顔をしていたから。結果的に分割で買うよりもよかったのかもしれない。
「間違いがないよう、少し時間をかけて確認いたしますので、しばらくお待ちください」
「ヤス、そういう確認作業、昔から苦手だったもんなあ」
「こういうのはがんばりとかそこまで関係なくて、向き不向きだなあって、実感するね。自分でやる時はチェックシート使うのと時間かけるしか手がない」
「きっちりした嫁が来てくれて、ほんとによかったな」
ヤスさんは幸せそうにあははと笑った。
「では。ほんとに時間がかかるので、ゆっくりしていてください」
「あの! 車、もう一回見てきてもいいですか?」
思わず挙手してヤスさんに訊ねる。お部屋で待っているよりも、新くんが選んだ車をもう少しじっくり見たくて。
「もちろんいいよ。展示場でも、この部屋でも、好きに過ごして」
「やったあ!」
ヤスさんが事務所に引っ込んだ後、お兄ちゃんは応接室でのんびりしているということだったので、私と新くんだけでもう一度車のところに戻った。
改めて見てみると、コンパクトで、なんだか可愛らしい。本当に新くんのものになるのだと思うと、とても愛着が湧く。
「ねえ! 名前はどうするの?」
「え? 名前?」
「そう! 新くんの大事な相棒なんだから! 素敵な名前つけないと!」
わくわくして訊ねると、少し考えて新くんは答えてくれた。
「うーん…………じゃあ、ピーターラビット号」
「ピーターラビット号!!」
まさかの名づけに興奮してしまう。
「あの絵本、私、大好きだから、とっても嬉しい!」
「好きなんだ?」
「うん! 初めて買ってもらった絵本なの! ねえ、どうしてピーターラビット号なの?」
「…………この車の色、ピーターラビットの上着の色と、少し似てるから」
「そっかあ!」
絵本は色が淡く塗られているから、確かに近い色合いかもしれない。
「これからよろしくね! ピーターラビット号!」
私がそっとボンネットをなでると、新くんは優しく微笑んでくれた。
ヤスさんが笑顔で訊ねると、新くんは即答した。
「一括で」
新くんがそう言った瞬間、みんな固まった。
「え、え、七桁いくよ……?」
「うん。貯金全部使えば、買えるから」
「でも、貯金全部なくなったら、困らない?」
「今なら貯金なくてもなんとかなるし、これからバイトしてまた貯めればいいから。社会人になってから貯金全部なくなった方が、よほど困ると思って」
新くんは淡々と言うけど、本当にいいんだろうか。
「若葉ちゃんの彼氏は、思い切りがいいねえ」
「ボーダーコリー、甲斐性あるな……」
「『一括で買えるものは買え。借金はするな』が家訓の一つなので」
新くんは笑顔でそう答える。すごい。
一括ということで、ヤスさんはお得になるように、かなりサービスしてくれたみたい。お兄ちゃんが少しびっくりした顔をしていたから。結果的に分割で買うよりもよかったのかもしれない。
「間違いがないよう、少し時間をかけて確認いたしますので、しばらくお待ちください」
「ヤス、そういう確認作業、昔から苦手だったもんなあ」
「こういうのはがんばりとかそこまで関係なくて、向き不向きだなあって、実感するね。自分でやる時はチェックシート使うのと時間かけるしか手がない」
「きっちりした嫁が来てくれて、ほんとによかったな」
ヤスさんは幸せそうにあははと笑った。
「では。ほんとに時間がかかるので、ゆっくりしていてください」
「あの! 車、もう一回見てきてもいいですか?」
思わず挙手してヤスさんに訊ねる。お部屋で待っているよりも、新くんが選んだ車をもう少しじっくり見たくて。
「もちろんいいよ。展示場でも、この部屋でも、好きに過ごして」
「やったあ!」
ヤスさんが事務所に引っ込んだ後、お兄ちゃんは応接室でのんびりしているということだったので、私と新くんだけでもう一度車のところに戻った。
改めて見てみると、コンパクトで、なんだか可愛らしい。本当に新くんのものになるのだと思うと、とても愛着が湧く。
「ねえ! 名前はどうするの?」
「え? 名前?」
「そう! 新くんの大事な相棒なんだから! 素敵な名前つけないと!」
わくわくして訊ねると、少し考えて新くんは答えてくれた。
「うーん…………じゃあ、ピーターラビット号」
「ピーターラビット号!!」
まさかの名づけに興奮してしまう。
「あの絵本、私、大好きだから、とっても嬉しい!」
「好きなんだ?」
「うん! 初めて買ってもらった絵本なの! ねえ、どうしてピーターラビット号なの?」
「…………この車の色、ピーターラビットの上着の色と、少し似てるから」
「そっかあ!」
絵本は色が淡く塗られているから、確かに近い色合いかもしれない。
「これからよろしくね! ピーターラビット号!」
私がそっとボンネットをなでると、新くんは優しく微笑んでくれた。
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