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第三章 カバーで本を判断するな

076 僕と彼女と装備と経験値 ①

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 今、僕は、自室で向井と試験勉強をしている。「お互いノートを貸し合い、教え合えば、効率がいいだろう」という向井の案に乗ったのだ。

「渋沢、冬休み、どんな風に過ごした?」
「実家に帰省して、おせちとお雑煮食べた」
「若葉ちゃんと実家近いんだろ。姫初めとか姫初めとか姫初めとか」

 にやにやしながら向井が言う。下世話な男だな。

「正月に会ったけど、そこらへんは想像に任せる」
「渋沢、淡泊そうに見えるのに、すっげえ変態なプレイしてたらどうしよう。……なんか妙に納得するな。ああ、若葉ちゃんかわいそう……」
「前言撤回する。想像するな」

 別にプレイは特殊じゃないけど、若葉ちゃんをそういう目で見るのも想像するのも、もう僕にしか許されていない。

「正月のいつ会ったん?」
「元日の夜。僕、元日が誕生日だから、例年夜まで動けなくて」
「渋沢、お前、誕生日元日だったのかよ! 言えよ! 祝うのに!」
「誕生日、大抵スルーされるから、言わない癖ついてた」
「不憫な奴……今度奢るな……」
「別にいいよ。その気持ちだけで」
「誕生日大事だろ! その日に生まれたからこそ、今、存在すんだから」

 下世話かと思ったら、意外とロマンティックな男だ。向井、お前こそ読めない。

「で、元日の夜、どうしたん? 車で迎えに行ったりした訳?」
「いや、二十三時に若葉ちゃんの実家の最寄駅に来てもらって、合流した」

 僕がそう言うと、向井は、ん? っとなんだか微妙な表情を浮かべた。

「何かおかしかった?」
「渋沢がその時間にしか動けないのは仕方ないけど、その間、若葉ちゃん、どうしてたんだろうと思って」

 向井の言っている意味がわからない。その間?

「最寄駅、実家から五分だから、家にいたはず」

 それを想定して、駅を待ち合わせ場所にしたのだ。

「いや、女子が実家を夜十一時には、出発できないんじゃない?」
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