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第二章 真実はプディングの中に

049 僕の彼女と楽しむ誕生日 ⑤

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 スマホの時計が二十三時五十九分を刻んだ。

「新くん、誕生日だね! おめでとう!」
「ありがとう」
「誕生日プレゼントはこれ!」

 若葉ちゃんは笑顔で大きい方の紙袋を僕に手渡した。

「えっ!」
「なんでそんなに驚くの?」
「いや……。若葉ちゃんが今日来てくれて、ロールケーキ作ってくれて、充分お祝いだし、今まで結構、お年玉と誕生日プレゼント、一緒にされてきたから」
「それ! たまに聞くよね! クリスマス生まれの人も誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントまとめられるとかって。でも、それ絶対だめ! 他の人は誕生日プレゼントとは別にもらってるんだから!」

 いつも荷物の少ない若葉ちゃんが、なんかやたら持ってたのに、プレゼントと結びつかない僕の残念さ。誕生日貧乏。
 ありがとうと言って紙袋を受け取り、入っていた箱の包装紙を丁寧に剥がす。蓋を開けると出てきたのは、焦げ茶の革のトートバッグ。

「私、革製品がすごく好きで! 最初の状態もピカピカしてて綺麗だけど、使いこめば使い込むほど味が出るのがいいなあって!」
「格好いいね」
「でしょう? この革、軽い傷だったら擦れば消えるし、傷もまた格好よく見えるのが、そそっかしい私にはありがたくて!」

 僕は同封されている説明の書かれたカードを手に取り、読んだ。

「……ミネルバボックス?」
「革の名前! これ、シボ革だけど、使っていくうちに凹凸が落ち着いてくるから、いろんな状態を楽しめるよ!」

 鞄は消耗品だと思っていたから、安いものしか買ったことがなかった。でも、こんな風に素敵なものをずっと使っていくのも、いいかもしれない。
 ミネルヴァって知恵と芸術の女神だった気がする。あと工芸と製織だっけ。どれも若葉ちゃんっぽい。この鞄を持ってればいつでも若葉ちゃんがついてくれてるみたいだ。

「ありがとう。大切にするね」

 僕の言葉に、若葉ちゃんは花がほころぶような素敵な笑みを浮かべた。
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