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第一章 人の好みは説明できない

026 私の彼氏は優しくて素敵 ⑪

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「はー……気持ちよかった……」

 ゴムを処理した新くんが再び私の隣にごろんと寝そべる。新しい眼鏡を掛けた姿がやっぱり素敵で、すごくどきどきする。新しい眼鏡は、あらたらしい眼鏡。ダジャレかな。
 目が合って、どちらからともなくキスをした。唇が離れると、私の頬をなでながら新くんは言う。

「若葉ちゃんも、気持ちよかったね」

 満面の笑みでそういうこと言わないでほしい……。

「もう……新くん、なんでそんないじわるなのぉ……?」

 悲しい訳じゃないのに、気持ちがあふれて、涙がぽろぽろ勝手にこぼれてしまう。くすくす笑いながら新くんは涙を拭ってくれた。

「いじわるかなあ? 大好きな彼女のこと、気持ちよくしてあげたいだけなんだけど」
「いじわるだよ! こんなに気持ちよくされたら、訳わかんなくなっちゃう!」

 私がそう言うと、新くんは、あははとのんきな声を上げて笑った。

「うん。じゃあ、いじわるでいい。若葉ちゃんにいじわるするの、僕、大好きだ」
「ひどい! 新くん! ひどい!」
「ごめんごめん」

 悪いなんて絶対思ってない声音! でも、声もやわらかな笑みもやっぱり私好みで、まあいいか、と思ってしまう。なんだか丸め込まれてる気がする!

「僕、若葉ちゃんが脱がせてくれて嬉しかったんだけど。何を気にしたの?」
「普段、自由に好き放題してるのに、こういう時は受け身で攻められたいとか、わがままだよねと思って……」
「そんなの気にするんだ!」
「気にするよ!」

 新くんがやっぱりケタケタ笑うので軽く小突く。

「うわあ、やられた!」

 新くんが笑いながら躱すものだから、なんだか猫パンチでじゃれるみたいになってしまった。やだもう! 楽しい!

「だって、相手がいることなんだから」
「全然わがままじゃないよ。若葉ちゃん、すっごく可愛い」

 新くんは私の唇にもう一度キスを落とし、きゅっと抱きしめてくれた。なんだかすごく安心する。

 新くんは私に細やかな気遣いを求めないし、私が思った通りに行動しても一緒に楽しんでくれて、いい意味で全然気にしない。とっても自然に呼吸できる感じ。
 だいすきなひとのうでのなかにいるのって、とってもしあわせだなあ。そう思っているうちに、私はいつのまにか眠ってしまった。



 そして、そのままのんびり楽しく過ごしつつ、現在に至る訳だけど。
 玲美ちゃんをはじめとする私の友達は口を揃えて言う。

「若葉と付き合えるのは、渋沢くんだけだよ」

 ほんと、私もそう思う。私は付き合い始めてからも、というか付き合い始める前よりももっと自由に過ごしている。私が何を希望しても、新くんはにこにこ笑って受け入れてくれる。友達は「放牧」とか「ボーダーコリー」とかって言う。

 新くんは付き合い始めたら、それまでの印象より喋るし、言葉も砕けてきてるし、意外と私の話聞いてなかったりする。けど、そのちょっと雑な扱いは実家の兄弟との関わりにも似ていて、すごく気楽だったりもする。

 こんなに楽で、楽しくて、私ばっかりいい思いしてて、いいのかな? そんな風に少しだけ思う。

 でも、新くんの穏やかで優しい笑顔を見ると、そんな気持ちは吹き飛んでしまうのだ。一緒にいるだけで楽しいし、嬉しいから、それでよし。めでたし、めでたし。
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