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communication 03

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 ここから抜け出すには、勉強しかない。小学校の社会科で職業について学習した時、悟った。女性の職業選択肢は少ない。そして、金を稼げる、いわゆるエリートと呼ばれる職業に就くためには、学歴がいる。店番の合間に教科書を読んだ。それこそ、手垢にまみれ、擦り切れるほど。他の娯楽がなかったのもあるし、塾に行くことのできない私は、それくらいしか巻き返しの術を持たなかった。

 絶対に負けたくない。環境にも、甘やかされて育ってきた同級生達にも。
 そう思っていても、現実は厳しい。学費のことを考えると、私立は論外だった。模試の結果から、公立のトップ校に余裕で受かることは想定できたけれど、運の悪いことにその高校は学区内で最も遠く、通うにはどうしても交通費がかなりかかる。私は自宅に最も近い、2ランク落とした学校を受験した。

 早朝と放課後は近所のコンビニと新聞配達のバイト。夕方からは母の店の手伝い。勉強は深夜。たぶん、がんばればもう少しバイトを増やすことも可能だったけど、セーブするのも大事だろうと判断した。結果、バイト代は大した額にならないし、いつも眠いと思ってた。トップの成績はキープしていたけれど、もっと偏差値の高い学校に通えていたなら、バイトの負担がなければ、私の学力はもっと伸ばせるんじゃないかという思いが、どうしても時折、頭をかすめた。
 甘やかされて育ってきた同級生は、苦もなく明るく整備された道を進んでいく。
 名前はユキなのに、私の人生はどしゃぶり。ぬかるんだ道に足を取られて転びそうだ、なんて、全然シャレにならない。

 あんなにほしかった未来への切符は、えらくあっさりと手に入ってしまった。母が義父に身売りをしてくれたおかげで。母は小料理屋を閉めた。今は悠々自適な専業主婦で、店で出していた料理を私達のためだけにふるまっている。なんて贅沢。再婚してからの母は、いつもにこにこしていて、ずいぶん若返った気がする。朝から晩まであんなに身を粉にして働いて得られる金はわずかだったのに、家事をするだけでこんなに優雅な生活ができるなんて、母自身びっくりしているに違いない。
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