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番外編・個人授業!!

53 あなたを愛してしまう ①

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「律さん、今週末、泊りがけで僕の雪辱戦に付き合ってもらえる?」
「雪辱戦?」
「そう。もう一度、一緒にロシア料理食べに行きたい」
「もちろんいいよ」

 何が雪辱戦なのか、よくわからない。

「あ、じゃあ、尚さんに選んでもらったワンピース、着るね」

 ちょっといい服がほしくなって、尚さんに見立ててもらったのだ。とても素敵で気に入っているけれど、着ていく場所がなくて、タンスの肥やしになりかけていた。ちょっとしたパーティなんてないし、私みたいな人間は、普段着る服をグレードアップした方がいいような気がする。



「前と違うとこに停めるから、ちょっと歩くけど、ごめんね」
「いいよ。気にしないで」
「そう言ってくれると思ってた」

 今回は尚さんもウォッカを飲んでいる。ああ、そうか。運転があるから、前回は飲めなかった。尚さんも飲みたかったよね。

 おいしく食べて、お会計して、外に出る。二人で歩くのも、今回はドレスアップしていて、手をつないでいて。なんだかときめく。
 笑顔を向けると、尚さんも微笑み返して、そっとくちづけをしてきた。
 人気ひとけのない道を歩いているとはいえ、まさか外でキスされるなんて思ってなかった。すごくどきどきする。
 ……人気のない道?
 あれ? どこに行こうとしてるの?

「お鮨食べた後さ、僕はどきっとしたんだよね」
「え?」

 どきっとさせるような、何かあったっけ? まあ、私の元彼と尚さんの経験が重なってたのは、心臓によくなかっただろうけど。

「少し、休んでいってもいいですか」

 尚さんはそう言って前方の建物を指し示す。

「ら、ラブホ?」
「そういうお誘いかと思って、律さんが指す方見たら、公園のベンチで脱力した」
「いや……その頃は、まだ、好きな自覚なかったし……」
「今日は、雪辱戦。ご休憩じゃなくて、お泊りだけど」

 そう言って、尚さんはにやりと笑った。



「正直、ちょっと意外」
「何が?」
「泊まるなら、普通のホテルかと」
「僕は俗物だから、律さんといろいろしたいんだよね」
「いろい……ろ……?」

 私の顔を見て、尚さんの笑みがくすくすと可愛らしいものに変わる。

「怖いことはしないから、安心して。僕ら、すぐ結婚しちゃったから、デートらしいデートとか、あんまり恋人っぽいことしてないなと思って」
「確かに」
「隙あらば取り戻していこうと」
「貪欲な俗物」
「そう!」
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