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後日譚・取り違えたその後の二人
132 ぶらり二人旅 ⑨ (はじめまして・その2)
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「あ、しまった。馬車、つかまらないかな」
ゆっくり歩きながら墓地を出ると、リカルドがはっとしたように言った。
「ここらへん、そんなに人来ないし。ごめん、通りに出るまで少し歩くことに」
「あ」
リカルドの言葉をさえぎるように声をあげてしまった。おあつらえ向きに馬車がいたから。かけよるように二人で馬車に向かう。
「あの、すみません、乗せて」
「あれ? さっきの」
今度はリカルドが声をあげる。
「ここらへん、馬車捕まえるのも大変だろうから、待ってたよ、リカルド」
「え?」
「気づいてないのか。お前の同級生のアンドレアの父親だ」
「え! す、すみません、アンドレアとはもう何年も会ってないからピンとこなくて……」
申し訳なさそうなリカルドに、アンドレアさんのお父さんが笑いながら答える。
「まあ、リカルドは目立つから、俺が一方的に覚えてただけだけどな」
早く乗れ、というように手招きされる。
「アンドレア、元気ですか?」
馬車に乗り込みながらリカルドが訊ねる。
「アンドレアは去年結婚して、もうすぐ子供が産まれるよ」
「そりゃ、おめでとうございます!」
「で、そのべっぴんさんは、お前の嫁さんか?」
リカルドにそう訊ねると、アンドレアさんのお父さんは馬車を走らせる。
「はい! ジュリエッタといって、神託で決めてもらった最高の嫁です!」
「ちょ、リカルド……。は、はじめまして、ジュリエッタと申します」
「幸せそうでよかったな! 父ちゃんと母ちゃんもきっと喜んでるよ」
「そう、墓地には挨拶にきたんです。俺も大喜びしてると思います!」
「親は子供の幸せがなにより嬉しいからな! ほんとによかった!」
リカルドとアンドレアさんのお父さんの掛け合いを見て、リカルドは本当にこの町で親しまれてたんだな、と微笑ましく思う。
駅まで戻ってもらい、料金を払おうとすると、アンドレアさんのお父さんは笑顔で首を横に振った。
「駅に戻るついでに乗せたようなもんだし、いらねえよ。まあ、結婚祝いと思ってとっとけ。せっかくの里帰りだし、楽しんでけよ!」
「えー、申し訳ないな」
「こういうのは黙って礼を言っとけばいいんだよ!」
「あ、ありがとうございます!」
「べっぴんさんに礼を言われると格別だな!」
がははと笑いながら、アンドレアさんのお父さんは行ってしまった。
「リカルド、有名人なんだね」
「いや、そんなことない! アンドレアが俺と同級生だったから、たまたま覚えててくれただけだよ!」
「そう?」
絶対違うと思うのよね。それからも、会う人会う人、みんなリカルドに笑顔で挨拶してくれたもの。
お昼ご飯はリカルドの元同僚の弟さんのお店で食べた。
「すっごくおいしかった!」
「でしょー? 同僚に初めて連れてきてもらってから、あんまりうまいから一人でもよく食べに来てたんだ」
「ほんと友達とか知り合い、いっぱいいるんだね、リカルド」
普通、同僚の兄弟と関わったりするものなのかな? とそこまで顔の広くない私は思う訳なんだけど。
「うーん、いい人達に恵まれただけかな。父ちゃんの同僚の方々にすごく可愛がられたから、そういうのがあたりまえだと思ってたのもあるし。俺だってさすがにヤなヤツとは友達になれないし、関わりあわないよ」
なんの前触れもなく、コトッと器が置かれる。服装からして、給仕の人じゃなくて、コックさん、なのかな?
「え? 頼んでないよ?」
リカルドが不思議そうに訊ねる。
「おまけ」
ボソッとつぶやくように言って、コックさんはサッと奥に引き上げてしまった。
「……あいかわらず、照れ屋だなあ」
「えっと、今のが、同僚の弟さん?」
「そう。俺、実は彼とあんまり話したことないんだ。奥で作ってばっかでめったに出てこないし、普段給仕は別の人がするから」
「そうなんだ」
「あ、これ! 俺が好きだったデザート! 今日はメニューに載ってなかったからあきらめてたのに……!」
「やっぱり、リカルド、みんなから愛されてるよ」
リカルドがみんなを見ているように、みんなもリカルドを見てくれていて、温かい循環がこの町にはあったんだなと微笑ましく思った。
ゆっくり歩きながら墓地を出ると、リカルドがはっとしたように言った。
「ここらへん、そんなに人来ないし。ごめん、通りに出るまで少し歩くことに」
「あ」
リカルドの言葉をさえぎるように声をあげてしまった。おあつらえ向きに馬車がいたから。かけよるように二人で馬車に向かう。
「あの、すみません、乗せて」
「あれ? さっきの」
今度はリカルドが声をあげる。
「ここらへん、馬車捕まえるのも大変だろうから、待ってたよ、リカルド」
「え?」
「気づいてないのか。お前の同級生のアンドレアの父親だ」
「え! す、すみません、アンドレアとはもう何年も会ってないからピンとこなくて……」
申し訳なさそうなリカルドに、アンドレアさんのお父さんが笑いながら答える。
「まあ、リカルドは目立つから、俺が一方的に覚えてただけだけどな」
早く乗れ、というように手招きされる。
「アンドレア、元気ですか?」
馬車に乗り込みながらリカルドが訊ねる。
「アンドレアは去年結婚して、もうすぐ子供が産まれるよ」
「そりゃ、おめでとうございます!」
「で、そのべっぴんさんは、お前の嫁さんか?」
リカルドにそう訊ねると、アンドレアさんのお父さんは馬車を走らせる。
「はい! ジュリエッタといって、神託で決めてもらった最高の嫁です!」
「ちょ、リカルド……。は、はじめまして、ジュリエッタと申します」
「幸せそうでよかったな! 父ちゃんと母ちゃんもきっと喜んでるよ」
「そう、墓地には挨拶にきたんです。俺も大喜びしてると思います!」
「親は子供の幸せがなにより嬉しいからな! ほんとによかった!」
リカルドとアンドレアさんのお父さんの掛け合いを見て、リカルドは本当にこの町で親しまれてたんだな、と微笑ましく思う。
駅まで戻ってもらい、料金を払おうとすると、アンドレアさんのお父さんは笑顔で首を横に振った。
「駅に戻るついでに乗せたようなもんだし、いらねえよ。まあ、結婚祝いと思ってとっとけ。せっかくの里帰りだし、楽しんでけよ!」
「えー、申し訳ないな」
「こういうのは黙って礼を言っとけばいいんだよ!」
「あ、ありがとうございます!」
「べっぴんさんに礼を言われると格別だな!」
がははと笑いながら、アンドレアさんのお父さんは行ってしまった。
「リカルド、有名人なんだね」
「いや、そんなことない! アンドレアが俺と同級生だったから、たまたま覚えててくれただけだよ!」
「そう?」
絶対違うと思うのよね。それからも、会う人会う人、みんなリカルドに笑顔で挨拶してくれたもの。
お昼ご飯はリカルドの元同僚の弟さんのお店で食べた。
「すっごくおいしかった!」
「でしょー? 同僚に初めて連れてきてもらってから、あんまりうまいから一人でもよく食べに来てたんだ」
「ほんと友達とか知り合い、いっぱいいるんだね、リカルド」
普通、同僚の兄弟と関わったりするものなのかな? とそこまで顔の広くない私は思う訳なんだけど。
「うーん、いい人達に恵まれただけかな。父ちゃんの同僚の方々にすごく可愛がられたから、そういうのがあたりまえだと思ってたのもあるし。俺だってさすがにヤなヤツとは友達になれないし、関わりあわないよ」
なんの前触れもなく、コトッと器が置かれる。服装からして、給仕の人じゃなくて、コックさん、なのかな?
「え? 頼んでないよ?」
リカルドが不思議そうに訊ねる。
「おまけ」
ボソッとつぶやくように言って、コックさんはサッと奥に引き上げてしまった。
「……あいかわらず、照れ屋だなあ」
「えっと、今のが、同僚の弟さん?」
「そう。俺、実は彼とあんまり話したことないんだ。奥で作ってばっかでめったに出てこないし、普段給仕は別の人がするから」
「そうなんだ」
「あ、これ! 俺が好きだったデザート! 今日はメニューに載ってなかったからあきらめてたのに……!」
「やっぱり、リカルド、みんなから愛されてるよ」
リカルドがみんなを見ているように、みんなもリカルドを見てくれていて、温かい循環がこの町にはあったんだなと微笑ましく思った。
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