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後日譚・取り違えたその後の二人

104 にくいあんちくしょう ④

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 翌日、婚姻届という名の奴隷契約書を提出した。前住んでた家は引き払ってきたし、今更他に行くあてもないから、腹をくくった。あとは、住民票の移動と薬師のギルドに登録して生活の基盤を確保。
 まずなすべきは、部屋の片づけだな。無駄に部屋数が多いので、長期戦覚悟で、一日一部屋ということにした。一度全て片づけば、あとはローテーションでハウスキーピングすればいいしな。あとは並行して、台所の整備だな。食材、ろくなもんがなかった。よく生きてたな。調理器具も手入れしてないからか概ね錆びてたし。とりあえず、食材と包丁・大鍋・フライパンの金物を買い、帰路につく。

 家に戻ると、不安げな表情のジュリエッタがいた。

「ようやく起きたのか、ねぼすけ」
「……で、出かけるなら、ちゃんと知らせてからにしなさいよね!」

 昨日のしおらしい様子は影をひそめ、出会った時の傍若無人さが復活しておる。

「悪い悪い。あんまりぐっすり寝てたから。町に出て、いろいろ用事済ませてきた」
「用事?」
「婚姻届出したり、住民票移したり、ギルドに登録したり、買い物したり」
「こ……婚姻届?」
「手続きいるだろ。魔法球があれば本人承諾済とみなされるから、俺一人でできることはやっといた」
「そ、そう……」
「起きたらいなかったから、やり逃げされたとでも思った?」

 冗談でそう言ってみたものの、気まずそうに黙られてしまったので、どうもシャレになってなかったらしいことに気づいた。

「……失礼な。俺、やり逃げとかしねーし。今までも、同意の上でしかしたことないし、彼女がいる時は彼女としかしねーよ」
「……バカ。婚姻届なんか出したら、もう私としかできないじゃない」
「まあ、そうだな。お前がやらせてくれんならな」

 神託の相手だし、俺はそれでいいと思ってたけど。アレ? そうじゃないのか?
 そして、ジュリエッタ、俺を信用してないというよりも、人から裏切られることそのものがあたりまえだと思ってる? と初めて感じたのがその時だった。

「まあ、奴隷は夜のご褒美を期待して、昼食を作り、午後は部屋の片づけに励みますので、お嬢様はしばしお待ちくださいませ」

 努めておどけて言うと、ようやくジュリエッタの不安げな表情が消えた。

「ばっ、バカ! 昼間っからなに言うのよ、このエロ魔人!」

 罵倒が返ってきたけど。
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