75 / 201
本編・取り違えと運命の人
074 騎士はお姫様がいるからがんばれるんだ ③
しおりを挟む
「もし、誰かがジュリエッタを口説いちゃって、ジュリエッタが受け入れてたら、神託申し込んだりしないし、この町俺の故郷から結構遠いし、たぶんジュリエッタに会えてすらなくて。あああ! もう、そんなの考えただけで嫌だ! ジュリエッタが神託申し込んでくれて、俺の相手に選ばれてくれて、ほんとよかった!」
「リカルド……」
「俺、十中八九、周りの男達は、見る目がなかったんじゃなくてヘタレだったんだと思ってる! だって、ジュリエッタ、すっごく可愛いもん! すっごくすっごく可愛いもん!!」
ものすごい勢いでリカルドは言って、私をぎゅうっと抱きしめる。
「ええと、でも、ジュリエッタが一年前より、もっとずっと可愛く綺麗になったのは……俺と一緒に過ごしたからだって、ちょっとうぬぼれてる」
リカルドの鼓動が伝わってくる。どきどきしてるの、私だけじゃないんだ。
「ジュリエッタ。俺にとって、君は、初めて見た時から、運命のお姫様なんだ。君がもっと幸せになるように、俺、これからもがんばるから」
少し腕をゆるめて、リカルドは私の目をじっと見つめ、続けた。
「だから、運命に感謝してる俺に付き合って、明日はお礼参りに行ってくれない?」
「……お礼参りって、なんか任侠の世界みたいね」
「ゴロツキが出てこようとも、不測の事態が起ころうとも、騎士は全力でお姫様の幸せを守るので!」
だからごほうびに、と言って、リカルドはそっとキスをしてきた。話の流れがなんだかもうめちゃくちゃで、思わずくすりと笑ってしまった。
「まだ、なにも起きてないのに」
「やっぱり、ジュリエッタ、笑った方がいい」
リカルドがいつものおひさまみたいな笑顔でそう言うので、つられてもっと笑ってしまう。
「おなかすいた! 早くジュリエッタのごはん食べたいな。明日もいろいろお祝い考えてるけど、まずは腹ごしらえしなきゃ!」
「うん。ごはん食べよ」
また、お祝い考えてくれてるみたいだけど、ほんとは既に毎日いろいろもらっているんだよね。明日も、俺に付き合ってとか、リカルドはすぐ自分のためって体にするけど、私の方こそ神託にお礼を言わなくちゃいけない。私の相手がリカルドでほんとによかったですって。
「気持ちとしては、その、すっごくしたいんだけど! 明日朝早いし、お楽しみは明日の夜にとっとくとして!」
ベッドに入ると、リカルドが訳のわからない主張を始めるから、またくすりと笑ってしまう。
「今夜は、抱きしめて眠っていい?」
「うん、もちろん」
リカルドは後ろから私を抱きしめると、寝息を立て始めた。おやすみも言わずに。知らない間にがんばっていた騎士が、ゆっくり休めますように。そう思いながら、私も眠りについた。
「リカルド……」
「俺、十中八九、周りの男達は、見る目がなかったんじゃなくてヘタレだったんだと思ってる! だって、ジュリエッタ、すっごく可愛いもん! すっごくすっごく可愛いもん!!」
ものすごい勢いでリカルドは言って、私をぎゅうっと抱きしめる。
「ええと、でも、ジュリエッタが一年前より、もっとずっと可愛く綺麗になったのは……俺と一緒に過ごしたからだって、ちょっとうぬぼれてる」
リカルドの鼓動が伝わってくる。どきどきしてるの、私だけじゃないんだ。
「ジュリエッタ。俺にとって、君は、初めて見た時から、運命のお姫様なんだ。君がもっと幸せになるように、俺、これからもがんばるから」
少し腕をゆるめて、リカルドは私の目をじっと見つめ、続けた。
「だから、運命に感謝してる俺に付き合って、明日はお礼参りに行ってくれない?」
「……お礼参りって、なんか任侠の世界みたいね」
「ゴロツキが出てこようとも、不測の事態が起ころうとも、騎士は全力でお姫様の幸せを守るので!」
だからごほうびに、と言って、リカルドはそっとキスをしてきた。話の流れがなんだかもうめちゃくちゃで、思わずくすりと笑ってしまった。
「まだ、なにも起きてないのに」
「やっぱり、ジュリエッタ、笑った方がいい」
リカルドがいつものおひさまみたいな笑顔でそう言うので、つられてもっと笑ってしまう。
「おなかすいた! 早くジュリエッタのごはん食べたいな。明日もいろいろお祝い考えてるけど、まずは腹ごしらえしなきゃ!」
「うん。ごはん食べよ」
また、お祝い考えてくれてるみたいだけど、ほんとは既に毎日いろいろもらっているんだよね。明日も、俺に付き合ってとか、リカルドはすぐ自分のためって体にするけど、私の方こそ神託にお礼を言わなくちゃいけない。私の相手がリカルドでほんとによかったですって。
「気持ちとしては、その、すっごくしたいんだけど! 明日朝早いし、お楽しみは明日の夜にとっとくとして!」
ベッドに入ると、リカルドが訳のわからない主張を始めるから、またくすりと笑ってしまう。
「今夜は、抱きしめて眠っていい?」
「うん、もちろん」
リカルドは後ろから私を抱きしめると、寝息を立て始めた。おやすみも言わずに。知らない間にがんばっていた騎士が、ゆっくり休めますように。そう思いながら、私も眠りについた。
0
お気に入りに追加
309
あなたにおすすめの小説
全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!
迷路を跳ぶ狐
BL
森の中の小さな領地の弱小貴族の僕は、領主の息子として生まれた。だけど両親は可愛い兄弟たちに夢中で、いつも邪魔者扱いされていた。
なんとか認められたくて、魔法や剣技、領地経営なんかも学んだけど、何が起これば全て僕が悪いと言われて、激しい折檻を受けた。
そんな家族は領地で好き放題に搾取して、領民を襲う魔物は放置。そんなことをしているうちに、悪事がバレそうになって、全ての悪評を僕に押し付けて逃げた。
それどころか、家族を逃す交換条件として領主の代わりになった男たちに、僕は毎日奴隷として働かされる日々……
暗い地下に閉じ込められては鞭で打たれ、拷問され、仕事を押し付けられる毎日を送っていたある日、僕の前に、竜が現れる。それはかつて僕が、悪事を働く竜と間違えて、背後から襲いかかった竜の王子だった。
あの時のことを思い出して、跪いて謝る僕の手を、王子は握って立たせる。そして、僕にずっと会いたかったと言い出した。え…………? なんで?
二話目まで胸糞注意。R18は保険です。
あなたは愛さなくていい
cyaru
恋愛
全てを奪われた女、ファティーナ。
冤罪で裁かれ、国外追放された日から13年。
幾つかの思惑が重なり、第1王子暗殺未遂事件の主犯として裁かれたファティーナ。
ファティーナの言葉を聞き入れてくれる者は誰もいなかった。
ファティーナを嵌めたのは婚約者のアロンツォ、そして従妹のマリア。その2人とは別枠でマリアの父、アロンツォの両親も明確な意図をもってファティーナを嵌めた。
全てをつまびらかにするには証拠が足らず、第1王子はファティーナの極刑だけは回避できたが当時は力もなく出来るのはそこまでだった。
稀有な力を持つ魔導士でもあるファティーナは追放された先で誰かを妬み、恨み、憎む気持ちも13年の時間をかけて鎮め、森の中にある小さな家で魔力を込めた薬を作り倹しく生きていた。
そんなファティーナを探して1人の青年シルヴェリオが森にやって来た。
運命は静かに暮らす事は許してくれないらしい。
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★8月2日投稿開始、完結は8月4日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
【完結】国王陛下の加護
Ringo
恋愛
嘗て小国が寄り合っていた大陸をひとつに纏められたルーベンス王国。
長く続いた戦争の末、ある理由から若くして国王に即位した絶世の美丈夫であるアルベルトは、こよなく愛している公爵令嬢シルビアを王妃に迎えた。
だが、婚姻後すぐにひとりの王子を生んだもののその後二年経過しても次子懐妊の兆しがない。
愛しているのは王妃シルビアだけ。
けれどとある理由からと次々沸き起こり抑えられない肉欲解消の為、召し上げられている愛妾との伽に足を向ける日々。
その頻度は年を経るごとに増し、やがて『王妃はもう愛されていない』とそんな噂が囁かれ始め、愛妾を迎え入れ始めてから気付けば四年の時が経っていた。
※作者都合の設定ですm(_ _)m
※全編濃い目のR18設定です。
※R18大好物!どんと来い!な方だけご覧ください
翠帳紅閨 ――闇から来る者――
文月 沙織
BL
有名な役者一家に生まれそだった竹弥は、美しいが、その春、胸に憂いを秘めていた。事情があって大学を休学し、古い屋敷で一人暮らしをはじめた。
そこには蔵があり、蔵の整理にやとわれた杉屋という男に、竹弥は手酷い凌辱を受ける。
危険な魅力を持つ杉屋から逃れられず、竹弥は夜毎、調教され、翻弄される。
誇りたかい梨園の貴公子が、使用人の手によって嬲られ、秘めていた欲望に火をつけられる、というお話です。
激しい性描写があります。ご注意ください。
現在では好ましくな表現も出てきます。苦手な方はご遠慮ください。
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
稀代の癒し手と呼ばれた婚約者を裏切った主様はすでに手遅れ。
ぽんぽこ狸
BL
王太子であるレオンハルトに仕えているオリヴァーは、その傍らでにっこりと笑みを浮かべている女性を見て、どうにも危機感を感じていた。彼女は、主様に婚約者がいると知っていてわざわざ恋仲になったような女性であり、たくらみがあることは明白だった。
しかし、そんなことにはまったく気がつかないレオンハルトはいつもの通りに美しい言葉で彼女を褒める。
レオンハルトには今日デビュタントを迎える立派な婚約者のエミーリアがいるというのに、それにはまったく無関心を決め込んでいた。
頑ななその姿勢が何故なのかは、オリヴァーもわからなかったけれども、転生者であるオリヴァーはどこかこんな状況に既視感があった。それはネットで流行っていた痛快な小説であり、婚約者を裏切るような王子は破滅の未知をたどることになる。
そういう王子は、何故か決まって舞踏会で婚約破棄を告げるのだが、まさかそんなことになるはずがないだろうと考えているうちに、レオンハルトの傍らにいる女性が彼を煽り始める。
それを皮切りに小説のような破滅の道をレオンハルトは進み始めるのだった。
七万文字ぐらいの小説です。主従ものです。もちろん主人公が受けです。若干SMっぽい雰囲気があります。エロ度高めです。
BL小説は長編も沢山書いてますので文章が肌に合ったらのぞいていってくださるとすごくうれしいです。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる