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本編・取り違えと運命の人
028 リカルドの本当の誕生日 ②
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約束(?)通り、ジュリエッタは俺がリクエストした水色の服を着てくれて、朝食を作りに台所へ向かった。いきなりのリクエストにも対応してくれて、ジュリエッタ、ほんと優しいな。その間、俺も着替えたり、出勤前の持ち物最終チェックをしたりする。
「ごはんできたよー」
ジュリエッタが声をかけてくれる。
「ほーい!」
ジュリエッタのごはんで一日が始まるって、ほんとに幸せだ。にやにやするのを抑えきれない。いそいそと食卓へ向かう。
「今日もすっごくおいしい……!」
「それは、ありがとう」
俺の言葉にジュリエッタが照れて少し赤くなってる。可愛い。
おいしいごはんがたくさんあって、作ってくれたのが愛しいジュリエッタで、向かい合って一緒に食べられて、しかも俺のリクエストした服を着てくれてるし、めちゃくちゃ似合ってて可愛くて、嬉しくてたまんない、とか、ほんともう、幸せすぎてどうしよう。
「なにかあった?」
「え?」
「すごくにこにこしてる」
ははは、やっぱり顔の緩みは隠せないんだ。
「うん、いいことあった!」
「ふうん? よかったね?」
腑に落ちないけどまあいいか、みたいな感じで、ジュリエッタは食事に戻る。
「じゃ、行ってきます!」
そろそろ出ないと間に合わない時間。名残惜しいけど、職場へ向かうことにする。
「行ってらっしゃい」
笑顔でジュリエッタが見送ってくれる。ああ、可愛いなあ。愛しさが込み上げて、思わず抱きしめてキスを落としていた。
「……リカルド?」
「やっぱりこの服、すごく似合うよ。とても可愛い」
「え、と……ありがとう」
ジュリエッタ、照れて赤くなってる。ますます可愛い。
「じゃ、ほんとに行ってきます!」
俺はほとんどスキップせんばかりに、職場へと向かっていた。
午前中一心不乱に働いて昼休み。現場近くの定食屋でごはんを食べ、残りの時間をぼんやり過ごす。誰にも誕生日を告げていないから、今日お祝いされることはない。考えてみると、毎年、俺、いろんな人にお祝いされてたんだな。どの誕生日も楽しい思い出ばかりだ。
祝われる日ではない、誕生日の本質とは。ふと、そんなことが頭をよぎる。
今、俺はものすごく幸せで、この幸せは生まれてきたからこそ享受できるもので。幸せだと感じられるのも生きているからで。そう考えると、父ちゃんと母ちゃんに感謝しかない。
そっか、感謝する日なんだ。命をさずけてくれて一生懸命育ててくれた父ちゃんと母ちゃんに。いろいろと勉強を教えてくれた先生に。俺ら一家を見守ってくれた故郷の町のみなさんに。こっちに来るまで遊んでくれた友達に。そして、愛しいジュリエッタに。誰が欠けても今の俺はない。
俺は今、小さい頃からの憧れだった大工として働いている。毎日充実してて、とても楽しい。仕事があって、それが自分の好きな、ずっとやりたかったことなのは、本当に幸せだと思う。これが天職だったなら、とても嬉しい。
俺の思考を遮るように、サイレンが鳴る。
「あ、もう、時間だ。戻らなきゃ」
午後からもがんばろう、そう思いを新たにして、持ち場へと向かった。
「ごはんできたよー」
ジュリエッタが声をかけてくれる。
「ほーい!」
ジュリエッタのごはんで一日が始まるって、ほんとに幸せだ。にやにやするのを抑えきれない。いそいそと食卓へ向かう。
「今日もすっごくおいしい……!」
「それは、ありがとう」
俺の言葉にジュリエッタが照れて少し赤くなってる。可愛い。
おいしいごはんがたくさんあって、作ってくれたのが愛しいジュリエッタで、向かい合って一緒に食べられて、しかも俺のリクエストした服を着てくれてるし、めちゃくちゃ似合ってて可愛くて、嬉しくてたまんない、とか、ほんともう、幸せすぎてどうしよう。
「なにかあった?」
「え?」
「すごくにこにこしてる」
ははは、やっぱり顔の緩みは隠せないんだ。
「うん、いいことあった!」
「ふうん? よかったね?」
腑に落ちないけどまあいいか、みたいな感じで、ジュリエッタは食事に戻る。
「じゃ、行ってきます!」
そろそろ出ないと間に合わない時間。名残惜しいけど、職場へ向かうことにする。
「行ってらっしゃい」
笑顔でジュリエッタが見送ってくれる。ああ、可愛いなあ。愛しさが込み上げて、思わず抱きしめてキスを落としていた。
「……リカルド?」
「やっぱりこの服、すごく似合うよ。とても可愛い」
「え、と……ありがとう」
ジュリエッタ、照れて赤くなってる。ますます可愛い。
「じゃ、ほんとに行ってきます!」
俺はほとんどスキップせんばかりに、職場へと向かっていた。
午前中一心不乱に働いて昼休み。現場近くの定食屋でごはんを食べ、残りの時間をぼんやり過ごす。誰にも誕生日を告げていないから、今日お祝いされることはない。考えてみると、毎年、俺、いろんな人にお祝いされてたんだな。どの誕生日も楽しい思い出ばかりだ。
祝われる日ではない、誕生日の本質とは。ふと、そんなことが頭をよぎる。
今、俺はものすごく幸せで、この幸せは生まれてきたからこそ享受できるもので。幸せだと感じられるのも生きているからで。そう考えると、父ちゃんと母ちゃんに感謝しかない。
そっか、感謝する日なんだ。命をさずけてくれて一生懸命育ててくれた父ちゃんと母ちゃんに。いろいろと勉強を教えてくれた先生に。俺ら一家を見守ってくれた故郷の町のみなさんに。こっちに来るまで遊んでくれた友達に。そして、愛しいジュリエッタに。誰が欠けても今の俺はない。
俺は今、小さい頃からの憧れだった大工として働いている。毎日充実してて、とても楽しい。仕事があって、それが自分の好きな、ずっとやりたかったことなのは、本当に幸せだと思う。これが天職だったなら、とても嬉しい。
俺の思考を遮るように、サイレンが鳴る。
「あ、もう、時間だ。戻らなきゃ」
午後からもがんばろう、そう思いを新たにして、持ち場へと向かった。
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