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本編・取り違えと運命の人

019 リカルドの誕生祝い ⑤

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「せっかくだから、明かり消そうか?」

 リカルドに提案するけど、ろうそくをじっと見つめて考えごとをしていたらしく、しばらくして返事がきた。

「……あ、そうだね」

 そのまま見つめていてもらい、私はそっと明かりを消す。

「綺麗ね」
「うん、すごく綺麗だ……」

 ついぼんやり眺めてしまうけど、あんまりそのままにしてると、ろうそくがケーキに垂れちゃう。

「もっと見つめていたいけど、ろうそくが短くなってきたから……」

 そう言って、私は誕生祝いの歌を一節歌う。

「願いを込めて、吹き消して!」
「うん!」

 リカルドはろうそくを一気に吹き消した。
 再び明かりを点けると、リカルドが、あじゃー、と苦笑している。

「ごめん! 溶けたろうそく、ケーキに散っちゃった」
「あはは! 大丈夫、取ればいいから!」
「ろうそくの明かりがあんまり綺麗で、見とれちゃったのが敗因」
「そうね。来年はもっと早く吹き消せばいいし、もし散っても取れば大丈夫!」
「ジュリエッタ、優しいなあ」

 優しいのは、リカルドの方だよ。いつも、人のことばっかり気づかってる。

「ケーキ切るから食べよ」
「うん!」
「今年は急だったから買ってきたけど、来年はちゃんと作るから、どんなケーキがいいか、考えといてね」
「え! ケーキまで作ってくれるの?」
「うん。買った方がよければ、そうするけど」
「ううん! 俺、ジュリエッタのケーキがいい!」
「了解」

 切り分けたケーキをリカルドに渡す。

「誕生祝いだから、プレートも」

 チョコのプレートに「リカルドお誕生日おめでとう!」と書いてもらったのだ。子供っぽいかな? とも思ったけど、やっぱり誕生祝いらしさがよりかもしだされるから。急なことなのに、対応してくださった店長さん、本当にありがとうございました。

「うわあ、こんなの、何年振りかな? ありがとう! いただきます!」
「いただきます」

 口にして、二人ともしばし無言になる。

「……このケーキ、すっごくおいしい……!」
「ほんとおいしい……! これは、来年からも、ここに頼んだ方がいいかも……」
「や、やだ! それは、ジュリエッタのケーキがいい!」
「そう?」
「でも、このケーキ屋さんのケーキはすごくおいしいから、これから一緒に町に出るたび買いに行こう!」
「異議なし!」

 新しいお店だったから初めて入ったけど、町に行く楽しみが増えた。やったあ!
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