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告白録③
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狭いシングルベッドの中に逃げ場などなく、戸惑っている間にお酒の匂いが染み付いた舌が唇を滑ってするりと口内に入ってくる。ちっとも甘くない、苦味の強いアルコールの味を俺にも味合わせるかのように舌の表面を舌先で撫でられると声が出てしまう。手のひらで優しく抱かれていたはずのお腹も、いつのまにかくびれに腕がきつく巻かれ身動き一つとれなくなっている。
この間から路彦さんが変だ。寂しい時に抱きしめ合う、それくらいの関係だったのに。あの時きちんと路彦さんの真意を確かめておけばよかった。
しかし後悔したのも束の間、立ち上がった男性器に手をかけられる。代わりに顎が解放されたので唇を離したら獲物をとるような鋭い瞳が見え、しかしそれはすぐに微笑みによってぼかされた。
「みちひこさん……酔いすぎ、です……っ」
「そう、酔ってる。でもそれよりこれどうしたの? すっごい勃起して」
「あ、しごいちゃっ……しごいちゃ、やぁ……」
はじめはスウェットパンツ越しに握っていたのに、すぐに中に手を入れられ先ほどまで自分がしていたように上下に扱かれる。根元から先端まで丁寧に、くちゅ、くちゅ、と音を立てながらすでにベタベタのおちんちんが路彦さんの手の中でさらに固くなっていく。
「根元までぬるついてる。キスしたからじゃなさそうね。オナニーしてたの?」
「あ、ちがっ……ん、やぁ、ちがうぅ……」
「こうやってしこしこしてたんでしょ? 気持ちいい? ほーら、おちんちんしこしこしこって……」
後ろから耳元でそんな風に囁かれながら、言うのと同じリズムでしこしこと扱かれて恥ずかしさに煽られビクビクしてしまう。違う違うと一生懸命首を横に振っているが、カリ首の弱いところを刺激される度に声が裏返って説得力がない。
なんか……なんかやばい。路彦さんにこんなことされるの始めてなのに、弱いところ全部バレてるというか、すっごくすっごく気持ちいい。こんなことした事ないはずなのに。男性のきもちいいところは自分の身体でよく知っているのかもしれないけど、こんな俺が好きな触り方をされるとどう抵抗していいかわからなくなる。
「あっ……みちひこ、しゃ……やだぁ、なんでぇ……あぁぁ……」
ああもうやだ、声がとろけちゃう。どうして自分はすぐにこんなはしたない声をあげてしまうのだろう……先生には可愛いと言ってもらえたけれど今は恥ずかしくてたまらない。顔がどんどん熱くなって目が潤んで……あれ、気持ちよくてこうなってるんだっけ。恥ずかしくて? 頭が回らない。
理性があるうちに出しちゃう前に逃げなきゃと身体を揺するが、自分より随分と太く硬いその腕に抱かれたお腹はビクともしない。だから下半身だけが動いて、路彦さんの手に自ら腰を振ってるみたいになってしまった。手でも腰でも激しく扱かれ、背が仰け反り背筋に力が入る。
「そんなに腰振って物足りない? おっぱいも触る?」
「やっ、だめぇっ……でちゃう、でちゃう、から……もうやめて、くださいぃ……」
「出していいのに。気持ちいいでしょ」
「やだっ……やだっ……!」
抵抗しても無駄だがじっとしたら受け入れているようだし、気持ちよさに集中してしまうし、物理的な問題だけでなく、精神的にも逃げ場がない。もうこのままされるがままに出してしまって、路彦さんは酔っ払っていただけだと納得してしまうのが楽かもしれない。
ぎゅっと目を閉じて、先生のことを思い浮かべた。こんなの、オナニーの延長だから……先生のことしか俺は考えてないから。そう自分に言い聞かせ歯を食いしばり我慢する。
「出雲くん……?」
真っ黒な視界の中、不安に揺れる声が響く。
「そんなに僕が嫌?」
アルコールのにおいがして、べろりと首筋を舐めあげられる。金魚が泳いでるところだ。唇が滑って、舌が触れて、キスして舐めて。ぞくぞくして顎があがる。
「んっ……ん、んっ……」
「身体をもてあましてハッテン場まで行ってるんでしょ。何も知らない男にされるのは良くて僕は嫌なの? どうして?」
腹部をきつく抱いていた腕が緩み、平らな胸にぴったりと手のひらをくっつけたまま這っていく。扱く手は相変わらずで、いやそれどころかいつも自分がする時に扱くように、人差し指と中指で挟んで指の関節で絞り上げるようにされ堪らなかった。おちんちんとろとろになってて気持ちいい。やばい、もう本当にイッちゃいそう。どうしよう、このまま出すか、最後にもう一度抵抗をしてみるか。
幸いなことに身動きはとれそうだったのでベッドに手をついて起きることはできないかと、ずる、と僅かに動いてみる。しかし即座に気がついた路彦さんは俺の肩を掴み、肩が剥がれそうなほど強い力であっという間にベッドに仰向けで押し付けられた。片手で肩を抑えられているだけなのに動けそうになく、瞼を上げて滲む視界を開けば路彦さんに見下されていた。
「泣かないでよ」
「泣いてないです……路彦さん、も、やめて……肩痛い、です」
「だから、どうしてなの」
いつも優しく落ち着いた声の語気が強い。顔をしかめてるというわけではないのだが、こちらを見下ろす瞳が寂しそうだ。路彦さん誤解してる、俺はゆるゆると首を横に振った。
「路彦さんが、嫌なわけじゃないです……この間お話したずっと好きな人以外は嫌、で……」
「じゃあ椎名ちゃんと会った時の話はまた嘘なの?」
嘘じゃないとまた首を振ると路彦さんは、天井を見上げて聞かせるようにハァッと声が出るほどのため息をついた。また視線がぶつかると両足を抱えられ、太ももを大きく開かせながらもスウェットパンツと下着が脱がされた。一応足を振り払って抵抗するが、それは嫌だという意思表示以上の効果はない。力の差がありすぎて俺ももう半ば力で抵抗するのは諦め気味だった。
「えっちな子。ちんここんなに立てて扱いてって言ってるみたい。おしりもうずうずしちゃって」
「あっ……」
扱かれながら中指でお尻の穴の表面を撫でられてビクッと大きく反応を見せてしまう。
「路彦さん、路彦さん、聞いて……おれ、行ってない……ハッテン場、行ってないですっ」
「どっちなの」
「はなす、から、なでなでしないで……おちんちんも、おしりも、やです、やだぁ……」
「やーだ。このまま話すの」
「あ、あ、そんなっ……ン……」
シャワーは浴びたけど中まで綺麗にしてないし、お尻いやなのに……いやなのに、自分のお尻がヒクヒク動いてるのがわかる。言われた通りだ、うずうずして仕方ない。入口ぱくぱくしてて、中のピンク色の腸壁が見えちゃってたら恥ずかしい。
でもそんなことを考えていたらおちんちんから先走りが溢れ、亀頭をしごかれた瞬間にくちゅくちゅといやらしい音が耳に響いた。
「おしり、やっ……みちひこ、さ、やめ……はなせないぃ、きもちよくて、あっ、きもちいぃぃ……!」
ああ、もうなんかどうしよう。こんなんじゃ話せないし、きもちよくて出すことしか考えられない。ずっと我慢してるけど、出したくて出したくて仕方ない。精液出したい、そこしか見えないそこにしか向かえない頭回んない。
「みちひこしゃぁん、あ、みちひこしゃ、あ、おしり、おしりなでなでもっとぉ……っ」
「ほんと、けつまん撫でるだけでバカになる。だらしない子」
甘えた声を出し始めてしまったのに気を良くしたのか、口の端をぺろりと舐めて笑い、耳元でそんなやらしいことを言う。先生だったら絶対言わない単語に背筋がぞくぞくとした。
「や、そんな、えっちな言い方ぁ……はずかしい、や……ちがう、ちがくて、あ、出したら、出したらおはなしっ、できるからぁ……っ」
「そう……出したいの。僕におちんちんしこしこされて、けつまんなでなでされて出しちゃうの? あ、ちょっと出雲くん、けつまんって言っただけでさっきからどばどば我慢汁出して……」
「やだ、やだぁ……! やめて、やだ、きもちくなっちゃう、でちゃう、でちゃうぅ……」
「可愛い。本当に可愛い。出していいの。出して?」
路彦さんは俺の頭を撫でてくれたと思ったら、突然屈んでおちんちんをぱくっと簡単に咥えてしまった。えっ、という驚きと温かい口内でねっとりと吸いつかれ、衝撃のままに根元から先端へ吸い上げられると同時に絶頂がくる。
「あっ、あっ、でちゃ、でちゃう……! お口に出しちゃう、あ、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃっ……!」
あ、あ、あ……路彦さんのお口に、出てる。いっぱい溜まってたのに嫌だ、恥ずかしい。
足の先までピンと伸ばして、お尻をビクンビクンと逸らしながら量の多い、長い射精は気持ちよくてそのまま飛んでしまいそうだった。
「あ、あぁぁ……あー……きもちいぃ……」
頭ん中とけてなんだかわかんない。路彦さんは精液のたくさん吐き出されたお口のまま、亀頭だけをくちゅくちゅと吸い付き舐めまわし始めた。既にわけわかんないのに、それは絶対だめなやつで内股になって膝がガクガクと揺れた。
「あっあっ、あぁ、だめだめ、あ、らめぇぇぇ……おもらししちゃう、それ、らめなやつぅ……!」
「おもらし? やだ、そんなことになっちゃうの?」
ちゅぽっと吸い付きながら唇を離され、路彦さんの薄い唇の間からたらりと俺が出したばかりの精液が垂らされる。そのままそれはローション代わりに亀頭、特に鈴口を擦るのに使われ、残りはごくんと音を出して飲み込まれた。
もう居た堪れなくなって逃げ出したいくらいだが、今は情けなく背を反らして、シーツをそれぞれの手で必死に掴んで、おちんちんを突き出して喘ぐしかできない。先っぽに身体の全神経持ってかれちゃうこの感覚は久しぶりすぎて身体が期待と恐怖で震えている。
「あああぁ、きもちい、きもちいよぉ、だめ、だめだめだめ……っ! 死んじゃうぅぅ、おちんちんどっかいっちゃうぅぅ、こわいよぉ、あぁぁっ」
「大丈夫、怖くないからおもらし見せてみなさいよ。ほら、ドロドロになってすごい音。聞こえる? ちゅこちゅこちゅこーって」
「聞こえる、えっちだよぉ……あ、えっちなおと、しゅるぅ……ああ、だめ、だめぇ……っ」
もうやだ。射精して、潮まで吹かされちゃうんだ。先生以外の人にそんなとこまで見られちゃうんだ。今までずっと我慢してきたのに。
先生と最後にセックスして、もうたくさんの時間が流れた。高校の卒業式の前日だったのが、もう大学生活もあと半年ほどで終わろうとしている。
もう限界なのかなぁ、とふわふわして弱りきった頭に浮かぶ。
先生に会いたいけど、あの短い思い出だけであと何年過ごして待てば一緒になれるのだろう。ううん、先生はもう俺の事忘れてるかもしれないのに。俺しか愛せないはずの先生、でも俺を愛せたのだからもしかしたらって、浮かばない訳でもない。
「ふぁっ、みちひこしゃ……ぎゅう、ぎゅうして、こわい……あ、でちゃう、ぎゅうしてぇ……!」
「はいはい、しっかり掴まって」
路彦さんは両手で責め立てるのはやめず、上半身を下ろして金魚のいる首筋に顔を埋めた。その背中に腕を回せば温もりが感じられる。
あったかくて、ここにちゃんとこの人がいると感じられて、嬉しかった。
先生が恋しくて、恋しくて、ずっと寂しい。
「あっ、だめ、でちゃ……! ごめんなさ、あ、でる、あ、あ、あっ」
おちんちんの根元のずっと奥、おしりの中なのか、よくわからないけれどそこがぎゅっと先端のほうへ引っ張られるような感覚と共に、鼻の抜けただらしない声をあげながら精液とは違う、透明な液体を二回ほどに分けてビューッと勢いよく吹き出した。この尿道が擦れるのがすごく気持ちよくて、それで頭がいっぱいになって、口がぽかんと空いて……声が止まらない。
「は、あ……あ……あ……」
「あらら、揃ってびしょびしょ。シャワーでお話しましょうか?」
「あ……」
動ける気がしなくて、路彦さんにしがみついたまま首を横に振る。
「みちひこ、さん……おれ……おれ、一回しか行ってない。その時、椎名さんに……会ったんです」
ぼんやりしたまま、そうしなければいけないという思いで拙く話し始めた。当時の気持ちが蘇って、鼻の奥がつんとしてくる。
「酷いこと、されたかったんです。それで大人数でプレイできるところに、行こうとしたら……椎名さんに声をかけられて。慣れなくて、困っていると思われたみたいです」
実際それもあるんですけどと笑ってみたが、返って悲壮感が増したような気がする。路彦さんが慰めるように首筋や頬にキスをくれた。
「どうして酷いことされたかったの?」
聞かれて当然だし、そこもちゃんと言おうと思って話したと思う。でも緊張して口の中や喉がカラカラに乾いて嫌な気分だった。水分も出したあとだし、尚更だ。乾いた唇を舐め、唾を飲む。
「ぼろぼろに……なりたいんです。思わず助け出したくなるくらい……これなら閉じ込めておいたほうがマシってくらい、傷つけられて、真っ当な生活ができなくなりたいんです」
先生が思わず攫ってしまうくらい。もう解放なんてされないくらい。心でも体でも一生残る傷になってもいい、先生がずっと一緒にいてくれるなら。
恋しくて、恋しくてたまらなくなると、特に自暴自棄になる。
「でも俺は……人徳があるみたいなんです。好きな人にも、言われた気がします。君は人に好かれるって。たぶん、言われたと思います。だから俺の周りの人はみんな優しいし、助けてくれるし、そんなことにはならないんです」
言われたかな、本当に言われたかな。自信がない。俺も先生の観察日記つけておけばよかった。泣いてしまいそうになって、目が痒いフリをして路彦さんの肩に顔をこすって誤魔化した。
この間から路彦さんが変だ。寂しい時に抱きしめ合う、それくらいの関係だったのに。あの時きちんと路彦さんの真意を確かめておけばよかった。
しかし後悔したのも束の間、立ち上がった男性器に手をかけられる。代わりに顎が解放されたので唇を離したら獲物をとるような鋭い瞳が見え、しかしそれはすぐに微笑みによってぼかされた。
「みちひこさん……酔いすぎ、です……っ」
「そう、酔ってる。でもそれよりこれどうしたの? すっごい勃起して」
「あ、しごいちゃっ……しごいちゃ、やぁ……」
はじめはスウェットパンツ越しに握っていたのに、すぐに中に手を入れられ先ほどまで自分がしていたように上下に扱かれる。根元から先端まで丁寧に、くちゅ、くちゅ、と音を立てながらすでにベタベタのおちんちんが路彦さんの手の中でさらに固くなっていく。
「根元までぬるついてる。キスしたからじゃなさそうね。オナニーしてたの?」
「あ、ちがっ……ん、やぁ、ちがうぅ……」
「こうやってしこしこしてたんでしょ? 気持ちいい? ほーら、おちんちんしこしこしこって……」
後ろから耳元でそんな風に囁かれながら、言うのと同じリズムでしこしこと扱かれて恥ずかしさに煽られビクビクしてしまう。違う違うと一生懸命首を横に振っているが、カリ首の弱いところを刺激される度に声が裏返って説得力がない。
なんか……なんかやばい。路彦さんにこんなことされるの始めてなのに、弱いところ全部バレてるというか、すっごくすっごく気持ちいい。こんなことした事ないはずなのに。男性のきもちいいところは自分の身体でよく知っているのかもしれないけど、こんな俺が好きな触り方をされるとどう抵抗していいかわからなくなる。
「あっ……みちひこ、しゃ……やだぁ、なんでぇ……あぁぁ……」
ああもうやだ、声がとろけちゃう。どうして自分はすぐにこんなはしたない声をあげてしまうのだろう……先生には可愛いと言ってもらえたけれど今は恥ずかしくてたまらない。顔がどんどん熱くなって目が潤んで……あれ、気持ちよくてこうなってるんだっけ。恥ずかしくて? 頭が回らない。
理性があるうちに出しちゃう前に逃げなきゃと身体を揺するが、自分より随分と太く硬いその腕に抱かれたお腹はビクともしない。だから下半身だけが動いて、路彦さんの手に自ら腰を振ってるみたいになってしまった。手でも腰でも激しく扱かれ、背が仰け反り背筋に力が入る。
「そんなに腰振って物足りない? おっぱいも触る?」
「やっ、だめぇっ……でちゃう、でちゃう、から……もうやめて、くださいぃ……」
「出していいのに。気持ちいいでしょ」
「やだっ……やだっ……!」
抵抗しても無駄だがじっとしたら受け入れているようだし、気持ちよさに集中してしまうし、物理的な問題だけでなく、精神的にも逃げ場がない。もうこのままされるがままに出してしまって、路彦さんは酔っ払っていただけだと納得してしまうのが楽かもしれない。
ぎゅっと目を閉じて、先生のことを思い浮かべた。こんなの、オナニーの延長だから……先生のことしか俺は考えてないから。そう自分に言い聞かせ歯を食いしばり我慢する。
「出雲くん……?」
真っ黒な視界の中、不安に揺れる声が響く。
「そんなに僕が嫌?」
アルコールのにおいがして、べろりと首筋を舐めあげられる。金魚が泳いでるところだ。唇が滑って、舌が触れて、キスして舐めて。ぞくぞくして顎があがる。
「んっ……ん、んっ……」
「身体をもてあましてハッテン場まで行ってるんでしょ。何も知らない男にされるのは良くて僕は嫌なの? どうして?」
腹部をきつく抱いていた腕が緩み、平らな胸にぴったりと手のひらをくっつけたまま這っていく。扱く手は相変わらずで、いやそれどころかいつも自分がする時に扱くように、人差し指と中指で挟んで指の関節で絞り上げるようにされ堪らなかった。おちんちんとろとろになってて気持ちいい。やばい、もう本当にイッちゃいそう。どうしよう、このまま出すか、最後にもう一度抵抗をしてみるか。
幸いなことに身動きはとれそうだったのでベッドに手をついて起きることはできないかと、ずる、と僅かに動いてみる。しかし即座に気がついた路彦さんは俺の肩を掴み、肩が剥がれそうなほど強い力であっという間にベッドに仰向けで押し付けられた。片手で肩を抑えられているだけなのに動けそうになく、瞼を上げて滲む視界を開けば路彦さんに見下されていた。
「泣かないでよ」
「泣いてないです……路彦さん、も、やめて……肩痛い、です」
「だから、どうしてなの」
いつも優しく落ち着いた声の語気が強い。顔をしかめてるというわけではないのだが、こちらを見下ろす瞳が寂しそうだ。路彦さん誤解してる、俺はゆるゆると首を横に振った。
「路彦さんが、嫌なわけじゃないです……この間お話したずっと好きな人以外は嫌、で……」
「じゃあ椎名ちゃんと会った時の話はまた嘘なの?」
嘘じゃないとまた首を振ると路彦さんは、天井を見上げて聞かせるようにハァッと声が出るほどのため息をついた。また視線がぶつかると両足を抱えられ、太ももを大きく開かせながらもスウェットパンツと下着が脱がされた。一応足を振り払って抵抗するが、それは嫌だという意思表示以上の効果はない。力の差がありすぎて俺ももう半ば力で抵抗するのは諦め気味だった。
「えっちな子。ちんここんなに立てて扱いてって言ってるみたい。おしりもうずうずしちゃって」
「あっ……」
扱かれながら中指でお尻の穴の表面を撫でられてビクッと大きく反応を見せてしまう。
「路彦さん、路彦さん、聞いて……おれ、行ってない……ハッテン場、行ってないですっ」
「どっちなの」
「はなす、から、なでなでしないで……おちんちんも、おしりも、やです、やだぁ……」
「やーだ。このまま話すの」
「あ、あ、そんなっ……ン……」
シャワーは浴びたけど中まで綺麗にしてないし、お尻いやなのに……いやなのに、自分のお尻がヒクヒク動いてるのがわかる。言われた通りだ、うずうずして仕方ない。入口ぱくぱくしてて、中のピンク色の腸壁が見えちゃってたら恥ずかしい。
でもそんなことを考えていたらおちんちんから先走りが溢れ、亀頭をしごかれた瞬間にくちゅくちゅといやらしい音が耳に響いた。
「おしり、やっ……みちひこ、さ、やめ……はなせないぃ、きもちよくて、あっ、きもちいぃぃ……!」
ああ、もうなんかどうしよう。こんなんじゃ話せないし、きもちよくて出すことしか考えられない。ずっと我慢してるけど、出したくて出したくて仕方ない。精液出したい、そこしか見えないそこにしか向かえない頭回んない。
「みちひこしゃぁん、あ、みちひこしゃ、あ、おしり、おしりなでなでもっとぉ……っ」
「ほんと、けつまん撫でるだけでバカになる。だらしない子」
甘えた声を出し始めてしまったのに気を良くしたのか、口の端をぺろりと舐めて笑い、耳元でそんなやらしいことを言う。先生だったら絶対言わない単語に背筋がぞくぞくとした。
「や、そんな、えっちな言い方ぁ……はずかしい、や……ちがう、ちがくて、あ、出したら、出したらおはなしっ、できるからぁ……っ」
「そう……出したいの。僕におちんちんしこしこされて、けつまんなでなでされて出しちゃうの? あ、ちょっと出雲くん、けつまんって言っただけでさっきからどばどば我慢汁出して……」
「やだ、やだぁ……! やめて、やだ、きもちくなっちゃう、でちゃう、でちゃうぅ……」
「可愛い。本当に可愛い。出していいの。出して?」
路彦さんは俺の頭を撫でてくれたと思ったら、突然屈んでおちんちんをぱくっと簡単に咥えてしまった。えっ、という驚きと温かい口内でねっとりと吸いつかれ、衝撃のままに根元から先端へ吸い上げられると同時に絶頂がくる。
「あっ、あっ、でちゃ、でちゃう……! お口に出しちゃう、あ、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃっ……!」
あ、あ、あ……路彦さんのお口に、出てる。いっぱい溜まってたのに嫌だ、恥ずかしい。
足の先までピンと伸ばして、お尻をビクンビクンと逸らしながら量の多い、長い射精は気持ちよくてそのまま飛んでしまいそうだった。
「あ、あぁぁ……あー……きもちいぃ……」
頭ん中とけてなんだかわかんない。路彦さんは精液のたくさん吐き出されたお口のまま、亀頭だけをくちゅくちゅと吸い付き舐めまわし始めた。既にわけわかんないのに、それは絶対だめなやつで内股になって膝がガクガクと揺れた。
「あっあっ、あぁ、だめだめ、あ、らめぇぇぇ……おもらししちゃう、それ、らめなやつぅ……!」
「おもらし? やだ、そんなことになっちゃうの?」
ちゅぽっと吸い付きながら唇を離され、路彦さんの薄い唇の間からたらりと俺が出したばかりの精液が垂らされる。そのままそれはローション代わりに亀頭、特に鈴口を擦るのに使われ、残りはごくんと音を出して飲み込まれた。
もう居た堪れなくなって逃げ出したいくらいだが、今は情けなく背を反らして、シーツをそれぞれの手で必死に掴んで、おちんちんを突き出して喘ぐしかできない。先っぽに身体の全神経持ってかれちゃうこの感覚は久しぶりすぎて身体が期待と恐怖で震えている。
「あああぁ、きもちい、きもちいよぉ、だめ、だめだめだめ……っ! 死んじゃうぅぅ、おちんちんどっかいっちゃうぅぅ、こわいよぉ、あぁぁっ」
「大丈夫、怖くないからおもらし見せてみなさいよ。ほら、ドロドロになってすごい音。聞こえる? ちゅこちゅこちゅこーって」
「聞こえる、えっちだよぉ……あ、えっちなおと、しゅるぅ……ああ、だめ、だめぇ……っ」
もうやだ。射精して、潮まで吹かされちゃうんだ。先生以外の人にそんなとこまで見られちゃうんだ。今までずっと我慢してきたのに。
先生と最後にセックスして、もうたくさんの時間が流れた。高校の卒業式の前日だったのが、もう大学生活もあと半年ほどで終わろうとしている。
もう限界なのかなぁ、とふわふわして弱りきった頭に浮かぶ。
先生に会いたいけど、あの短い思い出だけであと何年過ごして待てば一緒になれるのだろう。ううん、先生はもう俺の事忘れてるかもしれないのに。俺しか愛せないはずの先生、でも俺を愛せたのだからもしかしたらって、浮かばない訳でもない。
「ふぁっ、みちひこしゃ……ぎゅう、ぎゅうして、こわい……あ、でちゃう、ぎゅうしてぇ……!」
「はいはい、しっかり掴まって」
路彦さんは両手で責め立てるのはやめず、上半身を下ろして金魚のいる首筋に顔を埋めた。その背中に腕を回せば温もりが感じられる。
あったかくて、ここにちゃんとこの人がいると感じられて、嬉しかった。
先生が恋しくて、恋しくて、ずっと寂しい。
「あっ、だめ、でちゃ……! ごめんなさ、あ、でる、あ、あ、あっ」
おちんちんの根元のずっと奥、おしりの中なのか、よくわからないけれどそこがぎゅっと先端のほうへ引っ張られるような感覚と共に、鼻の抜けただらしない声をあげながら精液とは違う、透明な液体を二回ほどに分けてビューッと勢いよく吹き出した。この尿道が擦れるのがすごく気持ちよくて、それで頭がいっぱいになって、口がぽかんと空いて……声が止まらない。
「は、あ……あ……あ……」
「あらら、揃ってびしょびしょ。シャワーでお話しましょうか?」
「あ……」
動ける気がしなくて、路彦さんにしがみついたまま首を横に振る。
「みちひこ、さん……おれ……おれ、一回しか行ってない。その時、椎名さんに……会ったんです」
ぼんやりしたまま、そうしなければいけないという思いで拙く話し始めた。当時の気持ちが蘇って、鼻の奥がつんとしてくる。
「酷いこと、されたかったんです。それで大人数でプレイできるところに、行こうとしたら……椎名さんに声をかけられて。慣れなくて、困っていると思われたみたいです」
実際それもあるんですけどと笑ってみたが、返って悲壮感が増したような気がする。路彦さんが慰めるように首筋や頬にキスをくれた。
「どうして酷いことされたかったの?」
聞かれて当然だし、そこもちゃんと言おうと思って話したと思う。でも緊張して口の中や喉がカラカラに乾いて嫌な気分だった。水分も出したあとだし、尚更だ。乾いた唇を舐め、唾を飲む。
「ぼろぼろに……なりたいんです。思わず助け出したくなるくらい……これなら閉じ込めておいたほうがマシってくらい、傷つけられて、真っ当な生活ができなくなりたいんです」
先生が思わず攫ってしまうくらい。もう解放なんてされないくらい。心でも体でも一生残る傷になってもいい、先生がずっと一緒にいてくれるなら。
恋しくて、恋しくてたまらなくなると、特に自暴自棄になる。
「でも俺は……人徳があるみたいなんです。好きな人にも、言われた気がします。君は人に好かれるって。たぶん、言われたと思います。だから俺の周りの人はみんな優しいし、助けてくれるし、そんなことにはならないんです」
言われたかな、本当に言われたかな。自信がない。俺も先生の観察日記つけておけばよかった。泣いてしまいそうになって、目が痒いフリをして路彦さんの肩に顔をこすって誤魔化した。
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