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メス堕ちさせた元バリタチが自分の立場をわかってないので調教しなおす①

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 前回の飲みから三週間ほど経った頃、大鳥から次の飲み会の日時と場所の連絡がきた。あまりにさらりとした普段通りのメッセージに、僕も普段通りに了解を示すスタンプのみを押して返す。
 店の名前を調べホテルじゃないことを確認して安堵しながらも(がっかりしながらも)、あの日の記憶を消すことはできないしどうしたものかと頭を悩ませた。向こうは一体どんな顔をして来るのだろう。
 可愛い恋人を泣かせてしまったし、二度目はないと考えなければならない。大鳥本人も最初で最後と言っていたし。なにも起こらないと思う。
 思う、けれど。
 僕はあの夜の彼を思い返して、つい出雲に隠れて自慰をしてしまった。
 ネットで拾った、彼の画像を眺めながら。半裸で女性モデルの背を抱き、しっとりと、だが挑発的にカメラを睨む、そんな彼を眺めながら。
 記憶の中の、僕の下で涙声になりながらも甘えて種をねだる濡れた瞳に、射精した。





 スッキリして当日を迎える予定がかえって彼で抜いてしまったことに悶々としながら、指定された店の近くへ向かう。
 しかし待ち合わせ時刻よりも早く着いてしまいそうだったので(普段より待ち合わせ時刻が早かったため、なんとか定時に仕事を終わらせたおかげもあり)、近くにあったディスカウントショップで時間を潰すことにした。
 なぜここかと問われれば、彼に大人のおもちゃをプレゼントすると半分冗談、半分本気で言ったのを思い出したからである。
 彼はいらないと言っていたし、別に受け取らなければ出雲に使うし……という、軽い気持ちだ。ただ、これを渡した時の彼の反応には興味がある。
 きっと彼からはあの夜の話題を持ち出すことはない。
 これを渡して、知らん顔するか、怒るか、動揺するか、興奮するか。
 どれを想像しても楽しくなる。



 しかし、だ。
 予想外の展開だった。
 アダルトグッズコーナーに足を踏み入れようとしたところ、長身の男性二人組の姿がすぐ目に入ったのだ。
 目に入るのも当然だ、二人とも一九〇センチメートルを超える僕の身長に引けを取らない背の高さの上、常人とは比べ物にならない足の長さ。方やマスク、方やベースボールキャップで顔をすっぽりと隠しているが、それが顔の小ささをさらに強調してしまっている。
 何より、キャップを被った男のほうはどう見ても大鳥だった。

「これくらいなら入る?」
「いや、結構でけぇよ、コレ。ほら、やばくね?」

 連れの男が手に取ったスケルトンカラーのディルドを大鳥が受け取り、相手の股から腹のあたりに添えてサイズ感を見せつけ、ケラケラと笑う。

「もっと小さくていいだろ」
「ほんとだ、やっべ。小さいならバイブもいいよなぁ。隼人はどっちが好き?」
「俺むしろディルドは使ったことねぇわ」
「じゃあ試そっかなー?」

 男も笑いながら、大鳥の尻に玩具のパッケージを宛てがう。

「はは、いいじゃん。ものは試しってな」

 ここまで静観していたが、異様に腹が立ってきた。
 何をやっているんだ。悪ふざけか?  それにしてはお互いの股にあててサイズ感を見たり、なんだか生々しい。  
 腕時計をちらと見て時間を気にする大鳥を待たせ、男が会計向かったところで後ろからその腕を掴む。振り返った大鳥はキャップのつばをくいっと上にあげ、切れ長の目をまん丸くした。

「あれ、加賀見じゃん! 早く着いてたんだ。連絡すりゃ良かったな」
「君は?」 
「予定より早く仕事終わったから、仕事仲間の買い物付き合ってたとこ。予約の時間ちょうどいいんじゃね? そいつ会計してるからさ、戻ってきたら行こうぜ。ちょっと待ってて」
「買い物の付き合い? アダルトグッズの?」
「なんだよ、お前見てたの? キモッ。そうだよ、彼女に使うんだってさ」
「ふぅん?」

 ほんとかな、と思ったが、大鳥はなんともない顔でもう一度腕時計を見ているだけだ。
 首を少し下に傾けた時、あの香水の香りがした。
 甘い香りに誘われて、すんと鼻を鳴らしながら、右斜め下にある大鳥の耳元に顔を寄せる。

「僕はてっきり……君に、使うのかと」
「はぁ?」
「でも君、もっと大きいの入るもんね」

 軽く握った手の、人差し指の関節でへその辺りをぐりっと押し撫でる。 
 大鳥の腹はピクッと小さな反応を見せたが、それ以外はうんともすんとも言わなかった。
 これはその話題に関しては無視するパターンかと様子を伺っていたら、訝しげな顔で彼の仕事仲間(恐らくこの男もモデルなのだろう)が手を振りながら近づいてきた。大鳥はそれに応えて笑顔のまま、僕にしか聞こえない声量で「きっしょ」と呟いた。


 そして、なぜか。
 なぜか、予約していた店の個室席の対面に、大鳥とその仕事仲間が座っている。
 大鳥は彼にきちんと他と約束があると話していたようだが、僕を見た男は急に一緒に行きたいと言い出した。大鳥は断ろうとしていたが、あまりにしつこいので最終的には大鳥が折れる形で彼も着いてくることになってしまったのだ。
 仕事仲間であると同時に年齢も芸歴もどうやら彼の方が上らしく、どうもあまり無下にできない様子だったので了承したわけだが、理由はそれだけではなく。
 普段ならばこんな面倒くさい展開になったら「それなら二人でどうぞ」と帰る。絶対帰る。
 しかし、さっきのアダルトコーナーでの様子や、彼の僕や大鳥へ送るじっとり絡むような視線が気になったのでそうはしなかった。

「隼人って意外と酔ってるの顔に出るね。酒弱いの?」
「んあー? そこそこ飲めると思うけど」
「顔赤いくせにー。可愛いなー」

 頬をつつかれ、不愉快そうに眉根を寄せてその手を払う。

「いやいやいや、俺の方が飲んでるし。つかお前が悪酔いしてんじゃん」

 相手の男はスポーツマンのような短髪を明るい茶色に染め、一重まぶたにすっと通った鼻筋が印象的の、大鳥とは違ったタイプの美形だった。
 さっきからやたらと絡んでは大鳥にウザったそうにあしらわれているが、普段からこんな関係なのだろうか。
 なんにせよ、あらかた食事は終わりちびちびと酒を飲んでいるだけの二人を見ていると(僕はまだ全然飲んでいるが)、もうこの場はお開きにしても良い気がする。ここまで付き合えば十分だろう。というか早く二人になりたい。大鳥がどういう対応をしてくるか楽しみにしていたというのに。

「はやとー、酔っぱらいだからトイレ連れてってー」
「はぁ? まじで? しょうがねぇな……」
「連れてってくれんのー? 隼人って口は悪いけど優しいよね」
「連れてってやるから早く行くぞ、ほらちゃんと立てよ」

 しなだれかかって、頬にキスされてと散々な目にあいつつ(嫌そうにほっぺを拭いた)大鳥は、僕に目配せして苦笑いを見せた。通路側にいる彼を先に立ち上がらせている間、腰をかがめて対面に座る僕にこっそりと顔を寄せる。

「加賀見ごめんな、付き合わせて。これでもう帰ってもらうから二軒目行こうぜ。ここは俺が支払い持つよ」
「別にそれは……いいんだけど。大丈夫?」
「ん? 何が?」

 大鳥が首を傾げた瞬間、後方から大きな声が響き渡る。

「なー、しっこ漏れちゃうんだけどー?」
「あぁ、今行くよ。ったく……」

 大鳥はもう一度苦笑いして見せながら、よろしくの意味だろう、僕にウインクを投げる。あんまり綺麗にウインクするものだからドラマのワンシーンかと思った。というか現実世界でこんなことして様になる人間がいるのだな。
 男に自分が被っていたキャップを被せながら「そんな大声出したらバレんぞ」とトイレに連れて行く後ろ姿を見送りつつ、君の方がよほど目立つからキャップを彼に被せず自分が被った方がいいのではと心配になる。それとも彼は僕が知らないだけで有名なのだろうか。
 なんと名乗っていたかなと曖昧ながら試しにウェブ検索をかけてみれば、情報がボロボロと出てきた。どうやらモデルではあるが、最近は俳優活動の方が盛んらしい。活動の幅を広げ売り出し中なのだろう。
 あ、大鳥とも撮影してる。
 画像を見ていると、どうやら同じファッション誌によく出てるらしい。これなら無下にしづらいのも理解できる。
 二人の名前で再検索してみたら、口紅のCM動画がトップに表示された。再生数がとんでもないな。
 音を消して再生して見れば内容としてはとてもシンプルなもので、件の彼が大鳥にゆっくりと、CMの尺をたっぷり使ってあの薄い唇に口紅を当て赤く染めあげていくものだった。
 薄情そうなあの唇が、赤く染っていくだけで随分と印象が変わる。ずっと紅を塗る彼に向かれていた目線が、最後にカメラを見る。
 あの獣みたいな瞳孔の小さい鋭い瞳が、上目遣いから顎を上に向け見下す視線に移る……それがあまりに生意気で、その唇に噛みつきたくなった。
 いや、彼をまた抱くことがあっても、キスなどするつもりはないのだけれど。
 キスをするような仲ではない。
 それにしても……遅いな。
 かなり酔っていたようだし、具合でも悪くしたか、それとも。
 一応は元・養護教諭だし何かあれば介抱できるなどと自分に言い訳をしながら、様子を見に行くことにした。個室を出てすぐ通りがかった店員に、日本酒を二合ほど追加注文しながら。



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