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「いや~、結構な金額になったね」
「そうですね。こんなにたくさん銀貨を持ったことありませんよ」
あの後、二人はギルドへ行き剥ぎ取ったワイバーンの翼を銀貨へ換金した。受付嬢はもちろんのこと、周りの冒険者も、まさか二人でワイバーンを討伐するなんて思っていなかったために、呆然とそのブツと二人を見ていた。
「あの、精算お願いします」
「……あ、はいっ!」
はっと我に帰った受付嬢がいそいそと精算を始める。
「えと、ワイバーンは一頭のはずでしたが……」
「ああ、これはたまたま遭遇したやつなんです。これもついでに」
「かしこまりました。では二頭で銀貨五十枚になります。お受け取りください」
こうして、二人はギルドを後にした。
「これだけあれば、しばらくは大丈夫そうだね」
「はい。でも本当に全部貰っていいんですか?」
「いいよ。もともとそのつもりだったしね」
ラノイは今回の報酬を全てドゥールと路地裏の人々にあげることにした。
そもそも今回の依頼は路地裏の人々を救うためであり、それに盗みを辞めさせるためとは言え強引にパーティーを組ませてしまった後ろめたさも少なからず感じていたこともあるだろう。
「じゃあ、俺何か買ってきますよ。お礼も兼ねて」
「そう、じゃあお願いしようかな」
「まかしてください!」
満面の笑みを見せ、ドゥールは市場の方へ走っていった。
ラノイは傍のベンチに腰掛ける。空には雲ひとつなく、日差しが心地よかった。
ふと、ラノイは昨日の戦いを思い出す。あのワイバーン戦で放った付加。あれで今までなんとなくだった予想が確信に変わった。
ある程度剣も扱えるようになったし、付加も理解できた。次は何のクエストに挑もうかと考えていると、
「あの、すみません。ラノイさんですよね?」
唐突に声をかけられた。声のした方をみると、おそらくパーティーを組んでいるのだろうか、四人が立っていた。
「あの、僕に何か用でも?」
「ラノイさん、僕たちのパーティーに入ってくれませんか?」
青髪の、リーダーっぽい青年が柔らかな口調で話しかける。
「…………え?」
ラノイはじっと青年を見つめたまま固まっていた。
街の喧騒が嫌にはっきりと耳に入ってきた。
ラノイたちは、適当なカフェにいた。もちろん、午後のティーブレイクを楽しむためではなかった。むしろ、それとは逆の事態が今起きている。
「あらためまして、僕はこの真紅の眼のリーダーのエルディです」
「あ、ラノイです」
「ドゥールです」
「こっちがメンバーの……」
「ダンブ、タンクをやってる」
「パネラです。回復術師です」
「シャブラ、魔術師だ」
すらすらと自己紹介され、その度ラノイは軽く会釈をした。
「あの、なぜ僕なんでしょうか?」
いきなり核心に迫った質問をした。
エルディは落ち着いた調子で話し始める。
「ずばり、いまいち決め手にかけるんです。僕とシャブラが一応アタッカーなんですが、これからのことを考えるともう一人アタッカーが欲しいなと思いまして」
「は、はあ」
「そんな時、あなたを見つけたんです。ワイバーンを討伐するその力、今ウチに必要なものなんです」
エルディは実に饒舌に喋った。まるで何回も練習したかのようなその喋りに、ラノイはいつのまにか引き付けられていることに驚いた。
「ちなみに、ラノイさんはどんな魔法を?」
「復元です」
「ふ、復元ですか!」
エルディの目が大きく見開く。横にいた他のメンバーも皆一様にラノイの方を向いた。
「素晴らしい、やっぱりこれは運命だ!」
エルディはオーバーなリアクションで自身の喜びを表現した。最初声をかけてきたときとは別人のようだった。
「ラノイさん、今すぐにでもパーティーに入ってください」
エルディは興奮気味にラノイの手を強く握る。しかしラノイは即答できずにいた。
「……少し返事を待っていただけますか?」
「……わかりました、今日のところは帰ることとします。では後日同じ時間に僕たちはここにいますので、その時に返事をお願いします」
そういうと真紅の眼はカフェを出て行った。
気がつくと雲が空を覆い、街全体が薄暗くなった。
「そうですね。こんなにたくさん銀貨を持ったことありませんよ」
あの後、二人はギルドへ行き剥ぎ取ったワイバーンの翼を銀貨へ換金した。受付嬢はもちろんのこと、周りの冒険者も、まさか二人でワイバーンを討伐するなんて思っていなかったために、呆然とそのブツと二人を見ていた。
「あの、精算お願いします」
「……あ、はいっ!」
はっと我に帰った受付嬢がいそいそと精算を始める。
「えと、ワイバーンは一頭のはずでしたが……」
「ああ、これはたまたま遭遇したやつなんです。これもついでに」
「かしこまりました。では二頭で銀貨五十枚になります。お受け取りください」
こうして、二人はギルドを後にした。
「これだけあれば、しばらくは大丈夫そうだね」
「はい。でも本当に全部貰っていいんですか?」
「いいよ。もともとそのつもりだったしね」
ラノイは今回の報酬を全てドゥールと路地裏の人々にあげることにした。
そもそも今回の依頼は路地裏の人々を救うためであり、それに盗みを辞めさせるためとは言え強引にパーティーを組ませてしまった後ろめたさも少なからず感じていたこともあるだろう。
「じゃあ、俺何か買ってきますよ。お礼も兼ねて」
「そう、じゃあお願いしようかな」
「まかしてください!」
満面の笑みを見せ、ドゥールは市場の方へ走っていった。
ラノイは傍のベンチに腰掛ける。空には雲ひとつなく、日差しが心地よかった。
ふと、ラノイは昨日の戦いを思い出す。あのワイバーン戦で放った付加。あれで今までなんとなくだった予想が確信に変わった。
ある程度剣も扱えるようになったし、付加も理解できた。次は何のクエストに挑もうかと考えていると、
「あの、すみません。ラノイさんですよね?」
唐突に声をかけられた。声のした方をみると、おそらくパーティーを組んでいるのだろうか、四人が立っていた。
「あの、僕に何か用でも?」
「ラノイさん、僕たちのパーティーに入ってくれませんか?」
青髪の、リーダーっぽい青年が柔らかな口調で話しかける。
「…………え?」
ラノイはじっと青年を見つめたまま固まっていた。
街の喧騒が嫌にはっきりと耳に入ってきた。
ラノイたちは、適当なカフェにいた。もちろん、午後のティーブレイクを楽しむためではなかった。むしろ、それとは逆の事態が今起きている。
「あらためまして、僕はこの真紅の眼のリーダーのエルディです」
「あ、ラノイです」
「ドゥールです」
「こっちがメンバーの……」
「ダンブ、タンクをやってる」
「パネラです。回復術師です」
「シャブラ、魔術師だ」
すらすらと自己紹介され、その度ラノイは軽く会釈をした。
「あの、なぜ僕なんでしょうか?」
いきなり核心に迫った質問をした。
エルディは落ち着いた調子で話し始める。
「ずばり、いまいち決め手にかけるんです。僕とシャブラが一応アタッカーなんですが、これからのことを考えるともう一人アタッカーが欲しいなと思いまして」
「は、はあ」
「そんな時、あなたを見つけたんです。ワイバーンを討伐するその力、今ウチに必要なものなんです」
エルディは実に饒舌に喋った。まるで何回も練習したかのようなその喋りに、ラノイはいつのまにか引き付けられていることに驚いた。
「ちなみに、ラノイさんはどんな魔法を?」
「復元です」
「ふ、復元ですか!」
エルディの目が大きく見開く。横にいた他のメンバーも皆一様にラノイの方を向いた。
「素晴らしい、やっぱりこれは運命だ!」
エルディはオーバーなリアクションで自身の喜びを表現した。最初声をかけてきたときとは別人のようだった。
「ラノイさん、今すぐにでもパーティーに入ってください」
エルディは興奮気味にラノイの手を強く握る。しかしラノイは即答できずにいた。
「……少し返事を待っていただけますか?」
「……わかりました、今日のところは帰ることとします。では後日同じ時間に僕たちはここにいますので、その時に返事をお願いします」
そういうと真紅の眼はカフェを出て行った。
気がつくと雲が空を覆い、街全体が薄暗くなった。
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