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「ここであってるかな……?」

ラノイはゴブリンを狩るため、西のポラン平原に来ていた。
緑の絨毯が一面に広がり、時折吹く風が心地よい。
本当にゴブリンなんているのか、そんなことを思ってしまうほど長閑な平原だった。

しばらく歩くと、前方に何かの物体が見えた。やや近づき、目を凝らして確認する。
小柄な体格と暗い緑色の皮膚、ぎょろぎょろと動く目玉と牙を生やした口を持っている。
間違いない、ゴブリンだ。

「やっと見つけた」

緊張し、喉が乾く。何度も戦闘には参加したことはあるが、自分で剣を握って戦うのがこれが初めてであった。
幸いにもゴブリンは一匹で、まだラノイに気づいていない。

――今なら一気に行ける。

ラノイはゴブリンの下へ駆け出した。その時、

「うわぁっ!」

勢いあまって足元の石に引っかかり転んだ。
すぐさま体勢を立て直しもう一度接近しようとすると、

「グギャギャーー」
「しまった!」

こちらに気づいたゴブリンが一直線に向かってくる。
ラノイは剣を抜き、攻撃に備える。
ゴブリンは持っている棍棒を振りかざす。ラノイはそれを剣で受け止め、跳ね返す。
ゴブリンはよろけ、その隙を逃すまいとラノイは腹に剣を突き刺す。
ゴブリンはそれを間一髪で交わし、逆にガラ空きになったラノイの横腹に棍棒で一撃を加える。

「うぐうっ」

横腹の鈍痛に、ラノイはたまらずよろける。
ゴブリンはすかさず次の攻撃を繰り出す。ラノイは回転して攻撃を避け、再び剣を構える。

――思ったより痛い!

一見華奢な見た目のゴブリンだが、攻撃力は思った以上にある。
復元魔法で傷を治したいところだが、今はその隙すらない。

「グギャア!」

息を整える間も無く、再びゴブリンが襲いかかる。ラノイは棍棒の攻撃を防ぎながら後退りをする。
隙を狙って斬りつけたいが、肝心の隙がない。何かないかと辺りを見回すと、足元にさっき躓いた小石があった。

ラノイは剣で攻撃をなぎ払う。その一瞬の隙に足元の小石を拾い、ゴブリンに向かって投げる。
小石はゴブリンの目玉に直撃し、たまらずゴブリンは目を瞑った。ラノイはその隙にゴブリンに駆け寄り、脇を斬った。

「ギャアアアア」

ドクドクとドス黒い血が流れる。それでもゴブリンは棍棒で攻撃をしようとする。
しかし、そこにさっきまでの勢いはなかった。ラノイは攻撃をかわしながらさらに斬り付けていく。
幾たびも斬りつけられ、もはやゴブリンには棍棒を持つ力はなく、息を乱しながらただただ立ち尽くしていた。

ラノイは無防備になったゴブリンの首をぶった斬った。首は地面に落ち、緑色の草が赤黒く染まった。
ラノイは剣帯に剣をしまい、その場に倒れ込む。

「つ、疲れた」

さっき受けた傷を治す。
昔赤竜とも対峙したことがあるからとどこか余裕をかましていたが、さすがに見るのとやるのでは大違いだと痛感させられた。

「あ、耳を剥ぎ取らなきゃ」

ゴブリンを討伐した証として耳を持っていかなければならない。全部で10個になれば依頼達成というわけだ。
ラノイはゴブリンから耳を剥ぐ。剥いでいる中で、ラノイはあることを思いつく。

「……復元」

試しにと、剥いだ耳の部分に復元の魔法をかける。すると耳は復元され元に戻った。
この行為を後4回繰り返したらそれで終わりだ。
しかし、本当にそれでいいのか。
葛藤する中、どこからか足音が聞こえた。ふとその方向を見ると、さっき戦ったゴブリンがいた。

ラノイはため息をつきながらも、ゴブリンの方へと走り出した。
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