追放された回復術師、実は復元魔法の使い手でした

理科係

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「復元か、これは中々お目にかかれない魔法だぞ」

久しぶりのレア物に、チョウカは思わず笑みを浮かべる。

「ど、どういうことですか! 僕は回復術師じゃないってことですか!」
「まあまあ落ち着いて」

語気を荒らげて喋るラノイをチョウカはなだめた。

「そもそもラノイ君は、回復と復元の違いはわかるかい?」
「いや、はっきりとは……」
「そうか、じゃあそこから説明するね」

チョウカは続けざまに言う。

「そもそも回復というのは、悪い状態から元の状態になることを言うんだ。元々10だったものが1になった時、それを10に戻すことと考えてくれ。それに対して復元は、一度失われた形なんかを元に戻すことを言う。0を1にすると考えてくれ。」
「…………」

唐突の説明にラノイは困惑し、怪訝な表情を浮かべる。

「あれ、ちょっと説明が難しかったかな? やっぱり言葉だけで説明するのには限界があるな。よし、じゃあリル、ちょっとその辺の木を斬ってくれないか?」
「……え、あ、わ、分かりました」

午後のひだまりに思わずうとうとしていたリルははっと目を覚まし、すぐさま柄つかに手をやり剣を抜いた。

「せえぃ!」

掛け声とともに、リルの剣は弧を描き、幹を削った。

「さて、ラノイ君」

チョウカは削られた幹を指差す。

「この削られた部分、回復と復元どっちだと思う?」
「か、回復ですか?」
「残念。これは復元なんだ」
「え、どうしてですか?」

ラノイは困惑した顔でチョウカを見つめる。

「いいかい、この削られた部分は無・い・んだ。つまりこれは0を1にすることになる。だから回復より復元が適していることになる。どうだい、ちょっとは理解できたかな?」
「は、はい、少しずつですけど」
「ま、最初から全部を理解するのは難しいからね。それじゃ、百聞は一見にしかずって言うし早速使ってみようか」

チョウカに手招きされ、ラノイは木の幹へ近づく。

「削れた部分に手を近づけて、復元レストレイションって言ってごらん」
「は、はい。復元レストレイション

ラノイが唱えると、削られた部分が発光した。1、2秒発光したのちに光は消え、削られた部分は元に戻っていた。

「あ、元に戻ってる!」
「すごい、完璧に元通りに……」

同じくそばで見ていたリルも、思わず息を呑む。

「驚いたかい? それが復元魔法さ」

チョウカはまるでそれが自分の魔法であるかのような誇らしさで言った。
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