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2.面倒事はごめん

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 剣を下げているということは騎士だろう。
 今まで見掛けたことが無い顔だから、新しく配属されたのかもしれない。
 配属されて早々に酒場で女に声を掛けるだなんて風が吹けば飛んでいってしまいそうなくらいに軽いけど、まぁ顔が良いから許す。

「どうする? 一杯くらいなら奢ってもいいが、すぐに宿屋に行くか?」
「それじゃ奢ってもらおうかな。あと初めて見る人だから言っておくけど、セックスするならそれとは別にお金もらうから」

 慣れた風にするりと腰に回された手をちらりと見下ろして、言う。
 店の中で座っていた時には気が付かなかったけれど、男は随分と背が高いらしかった。隣に並ぶと顔の位置がだいぶ高くて、首が痛くなりそうだ。
 男は私の目を真っ直ぐに見ながら、切れ長の目を更に細くした。

「……身体を売っているのか」
「違うから、プロのサービスが欲しいなら他所行って。あとただ素人女を好きにしたいってだけでも他を探して。私はただ、知らない男とヤるリスクをお金っていう対価でチャラにしたいだけ」
「割り切った行為を楽しむのはお互い様じゃないのか?」
「あなたがセックス上手な保証もないし、病気を持ってない事を今ここで証明もできないでしょ?」

 私は指を立てる。高いわけではないけど、安いわけでもない。

 ちなみに別にいっつもこんなことを言ってるわけじゃない。
 常連さんや顔見知りに誘われるならお金なんてもらわない。貰うほうが面倒だ。男の言うようにお互いに割り切って一晩ベッドを共にして気持ち良くなるだけ。

 でもよく知りもしない、名乗ったわけでもない名前を周りが言ってるってだけで当然のように呼んできて誘いをかけるような男だ。
 警戒しても損はない。

 セックスは遊びだから面倒事はごめんだ。
 これで相手に断られたからってどうってこともない。誘われれば悪い気はしないけど、追いすがる気にはなれない。あと数年後は分からないけど、少なくとも今は相手に困ってない。

「なるほどな、良いだろう」

 頷いた男は妙に渋い顔をしているようにも見えたけれど、私が気にする事じゃなかった。
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