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83.会えなくて寂しかった*

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「僕はずっと王族以上に王族らしくいなければと自分を律していた。ほんの少しでも疑われないように、疑われた時に責めをうけないように」

 暗いバルコニーにエリオットの小さな呟きが落ちる。

「そうする事でしか生きていけないと思っていたからだ。優秀な第一王子、そういう存在でしか認められないしそれ以外は求められることもないと思っていた」

 でも、とエリオットが顔を上げた。
 琥珀色の瞳が私をうつす。

「レベッカに出会えた。僕にとって、レベッカは奇跡なんだ。僕がただの僕自身として居られる、かけがえのない特別な女性なんだよ。君と離れなければいけないのなら、僕は王位継承権も王族としての立場もいらない。何もかも捨てて、レベッカとどこかで静かに暮らしたい。僕はレベッカさえ居てくれればそれでいいんだ」

 切実な訴えに涙が出そうになる。
 今まで抱えてきたエリオットの辛さと、そしてそんなエリオットの心の支えになれている喜びと。
 頬を包んで、そっとキスをした。

「私もエリオットと一緒ならどこにいたって幸せです」

 琥珀色の瞳が丸くなって、そして細められた。安心したようなその表情を見て、また唇を重ねる。
 エリオットが好き。
 エリオットと一緒ならどんな場所でもそこは物語の楽園のように幸せな場所になれる。
 そんな揺るぎない確信がある。

 何度もなんどもキスをして、そしてその隙間にそっと舌を入れてみた。
 一瞬エリオットの表情が固くなったのが手のひらで分かる。
 けれども腰を強く抱き締められるのと同時に、エリオットの舌が絡んできた。主導権もあっという間に奪われる。

 いやらしい音のするキスを沢山して、そうして離れた唇は銀糸が伸びてぷつんと切れた。

「こんな風に人のことを煽って……僕の自制心を試してるのかい?」

 エリオットの身体を跨ぐように座らされて、そして開かされた足の間に固いものが押し当てられた。
 思わず頬が熱くなる。

「ずっと会えなかったせいで余裕がないんだ」
「あ、煽ってるんじゃないです。……誘ってるんです」
「……レベッカ?」
「会えなくて寂しかったんです。エリオットに触れたかったし、触れて欲しかった。こんな私でも呆れませんか?」

 エリオットの激しさを知って私の身体も変えられてしまったのだと思う。

 一人のベッドが淋しい。
 エリオットと激しく求めあったあの夜が恋しい。
 毎晩のようにそう思っていたから。

 今日が月のない夜で良かった。
 顔が真っ赤でもきっといつもよりは見え辛いと思うから。

「呆れるなんてとんでもないね――大歓迎だよ」
「んんっ」

 エリオットが笑って、そして薄い寝間着の上から私の胸をぱくんと銜えた。正確に、先端を。
 熱い舌で布地ごとねっとりと舐められて、ぞくんと背筋が震える。

「はぁ、んっ」
「レベッカ、声は我慢できる? 艶っぽい声は意外に響くから」
「あ、あの……ここで? 先に部屋に移動して……んんっ」
「無理。こんな下着も着けていない薄い服のレベッカとずっと密着してたんだよ? ここまで我慢した僕を、むしろ褒めてよ」
「そ、んな……っ!」

 さっきまでそんな雰囲気全然なかったのに。
 突然の豹変っぷりに戸惑いを隠せない私を見上げて、エリオットがまた笑いながら胸を食べた。
 反対側も服の上からコリコリと擦られて、簡単に尖らせられてしまう。胸の先端が布地を押し上げる。

 もう夜も遅くて、お父様もグレッグお兄様も使用人もみんな寝ていると思う。
 だけど万一こんなところを見られてしまったらと思うとドキドキしてたまらない。
 でもそれ以上にエリオットに触れてもらえている事実が嬉しい。

「レベッカ、腰が揺れてるよ」
「ぁ……ん、だってぇ」
「ねぇ、スカートを自分で持ち上げて僕に見せてよ」
「……っ!」

 突然の命令に目眩がする。
 こんな外で、そんなこと。

「レベッカ」

 小さく名前を呼ばれた。
 いつもの優しい声音。甘さも含まれているはずなのに、どうしてか逆らうことができない。
 おずおずと寝間着のスカートの裾を持ち上げた。
 夜の風がひやりとする。
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