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62.気持ちを通い合わせることが出来て*

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「これが今からレベッカの中に入るんだよ。……怖い?」
「……はい」

 頷く。
 だって指とは比較にならない大きさだ。
 こんなのを身体に入れたら裂けちゃうよ。

「そんなに怯えなくて大丈夫だよ。最初は苦しいかもしれないけど、レベッカならすぐに馴染む」
「……なんでそんなこと。分からないじゃないですか」

 言い切られて思わずむっとしてしまった。
 そんな私にくすくすと笑いながら、そしてまたキスをされた。
 近くでとろりと溶けそうな瞳に見つめられる。

「だって今、初めてなのに僕の指で甘く鳴いていたからね。大丈夫だよ、少し大きくなっただけだ」
「そんなこと」

 ないと思う。全然違う。すっごく、大きかった。

「それにね、泣いて抵抗しても止めてはあげられない。だから少しでも協力的でいてくれると嬉しいな」

 あんな凶悪なものを持っているとは思えないくらいにこやかに微笑む姿に、私も覚悟を決めた。
 ハンカチで結ばれた手首を持ち上げる。

「これ、ほどいてください」
「……なんで? やっぱり僕のことが嫌になった? それなら」
「違います」

 首を振りながら言い切る。

「これじゃエリオットを抱き締められないから」
「え?」
「怖いから、エリオットにもっとぎゅってしがみつきたいし、抱き締めて欲しいんです」

 でも自分でほどくのはエリオットを拒絶するのと同じ意味になっちゃうから。

「だから、エリオットにほどいて欲しいんです。……だめ、ですか?」
「そんなことないよ。……僕が抱き締めることで安心できるなら、こんなに嬉しいことはない」

 ハンカチをほどいてもらって、その背中に手を伸ばした。
 無駄のない引き締まった背中。素肌同士で触れ合っているのが妙に恥ずかしいけど、でもエリオットの身体も私と同じくらい熱くて汗ばんでいて、安心した。

「レベッカ、愛してるよ」
「私も大好きです」

 背中に手を回されて、抱き寄せられた。
 ぴったりと身体を密着させながらキスをする。

 そうして身体の中心にさっき見たものがあてられて、ずくりと中に入り込んできた。

「……んっ!」
「大丈夫だよ、大丈夫。僕がいるからね」
「は……はいっ」

 ずぶずぶと中に入ってこられる。
 やっぱり裂けちゃうんじゃないかなってくらいに痛いし苦しい。
 でもエリオットにぎゅっと掴まって、抱き締められて、そうして一分の隙もないくらいに重なって。
 恐怖はなかった。

「……これで、全部だよ」

 お腹の中が圧迫感で破裂してしまいそうなくらい、みっしりと埋まっている。
 エリオットが肩で息をしている私と同じくらいに熱い吐息で、一つになれたことを教えてくれた。

 見上げると、承知したようにキスをしてもらえる。
 柔らかな唇に、身体の緊張もほんの少しでもほぐれる気がした。

「……幸せ、です」
「ん?」
「前世ではずっと想うばっかりで、ルイス殿下も私が求めるばっかりで。ずっと、好きな人と想い合えるってどんな気持ちなんだろうって想像することしか出来なかったので」

 触れ合う肌からエリオットの少し早めの鼓動が伝わってくる。
 きっとバクバク鳴ってる私の心臓の音も全部バレてしまってるだろう。
 でも、すぐ近くにいるって、言葉よりも確かに感じる。

「エリオットで良かったです。エリオットとこうして気持ちを通い合わせることが出来て、幸せです」

 前世でずっと片思いしていた彼ではなく。
 誘惑してやるって息巻いてたルイス殿下でもなく。

 エリオットとだから、こんな暖かい気持ちになれるんだと思う。

「……それは全部僕の台詞だよ」
「エリオット?」
「レベッカがいてくれて、僕に振り向いてくれて、僕がどんなに感謝しているのか。幸せなのは僕の方だ」
「……いえ、私の方です。私の方がずっとずっと幸せです」
「いや、僕の方がもっとずっと幸せだ」
「私です」
「僕だ」
「私ですってば」
「……って」

 思わず顔を見合わせて笑ってしまう。

「こんな状況でなに意地を張り合ってるんだろうね」
「ほんと、でもなんだか緊張がほぐれました」
「みたいだね」

 私にキスをしたエリオットが小さく微笑んだ。
 その瞳が怪しい光を放ったのは、多分私の気のせいじゃない。

「じゃあレベッカ、お喋りはこのくらいにして、もうひと頑張りしよっか。僕らの幸せのために、ね」

 エリオットの言う「もうひと頑張り」は全然「ひと」頑張りレベルじゃなくて、「ひゃく」頑張りくらいだったことを私は忘れない。
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