54 / 100
54.嫌われて当然だな
しおりを挟む
「レベッカの心は僕だけのものだ。勿論この魅力的な身体も、指一本他の男に触れさせないで?」
「あら、エリオット殿下はわがままですわね」
「君にだけだよ。君の愛のためなら僕は床に膝を付いて乞う事もいとわない。その代わり僕だけだと誓って欲しい」
くすりと微笑んで、そして私はわなわなと震えていた二人に振り向いた。
エリオット殿下の首に手を回して、より一層身体を密着させて潰れる胸を強調する。
「エリオット殿下がここまで言ってくださるのだもの、ルイス殿下は床に膝だけでなく額を擦り付けて願ってくださるのならば少しは考えて差し上げてもよくてよ? 勿論ほんの一瞬考えてさし上げるだけですけども」
*
中庭でエリオット殿下が頭をさげた。
「すまなかった」
「どうしてエリオット殿下が謝るんですか?」
なんだかそのままパーティー会場に戻る気も起きなくて、二人で中庭へ出てきた。
キラキラと明るく賑やかだった会場と違い、中庭は静かで他に人もいない。
下げられた金色の頭を見て、ふと気がついた。
「ルイス殿下の気持ちを知っていたんですね?」
顔を上げたエリオット殿下が頷く。
「……ルイスがレベッカに本心で惹かれているんじゃないなとは、薄々。あいつは小さな頃から甘やかされて好き放題に振る舞っていたからね。ただあそこまで酷いとは思わなかったけれど」
すまない、とまた頭をさげられる。エリオット殿下が悪いわけでは無いのだから、そんな風に申し訳なく思ってもらう必要もないのに。
「気にしないでください。事前に教えられていたとしても、私がエリオット殿下の話を信じていた保証もないんですし」
「それはそうかもしれないが……」
僕は、とエリオット殿下が続ける。
「ルイスの真実を話して、信じてもらえずにレベッカに嫌われることを避けたんだ。そしてこうして謝罪すれば、優しい君は僕を許すしかないことも計算している。……君に嫌われて当然だな」
エリオット殿下の物言いに私は首をかしげた。
「私はエリオット殿下を嫌いになんてなっていませんけど」
「慰めは無用だ」
「慰めなんかじゃありません。……どうしてそんな誤解を?」
まぁ元々は好きも嫌いもない距離感だったし、記憶を取り戻してからも厄介だなぁとは思っていたけれど、でも一度も嫌いになんてなってない。
「……出自を話して以来、僕を避けていただろう。あそこまであからさまであれば察するなという方が難しい」
「えっ」
そう言えばそんな話を聞いた直後だった。タイミング的にそうだったと、今更気が付かされる。
そうだよね。確かにエリオット殿下にしてみれば自身の秘密を一大決心で話してくれたに違いない。
その直後から私は明らかな言い訳をつけて誘いを断ってしまっていた。
誤解させていたことにすら気が付かなかったなんて、私はなんてバカだったんだろう。
「違います! 避けてしまっていたことは確かですが、それはエリオット殿下のお話を聞いたせいではなくてっ」
「だったらどういう理由だと言い訳するつもりだい?」
エリオット殿下が私の言う事を信じていない事が分かる。
ぎゅっと両手を握り締めた。
「あら、エリオット殿下はわがままですわね」
「君にだけだよ。君の愛のためなら僕は床に膝を付いて乞う事もいとわない。その代わり僕だけだと誓って欲しい」
くすりと微笑んで、そして私はわなわなと震えていた二人に振り向いた。
エリオット殿下の首に手を回して、より一層身体を密着させて潰れる胸を強調する。
「エリオット殿下がここまで言ってくださるのだもの、ルイス殿下は床に膝だけでなく額を擦り付けて願ってくださるのならば少しは考えて差し上げてもよくてよ? 勿論ほんの一瞬考えてさし上げるだけですけども」
*
中庭でエリオット殿下が頭をさげた。
「すまなかった」
「どうしてエリオット殿下が謝るんですか?」
なんだかそのままパーティー会場に戻る気も起きなくて、二人で中庭へ出てきた。
キラキラと明るく賑やかだった会場と違い、中庭は静かで他に人もいない。
下げられた金色の頭を見て、ふと気がついた。
「ルイス殿下の気持ちを知っていたんですね?」
顔を上げたエリオット殿下が頷く。
「……ルイスがレベッカに本心で惹かれているんじゃないなとは、薄々。あいつは小さな頃から甘やかされて好き放題に振る舞っていたからね。ただあそこまで酷いとは思わなかったけれど」
すまない、とまた頭をさげられる。エリオット殿下が悪いわけでは無いのだから、そんな風に申し訳なく思ってもらう必要もないのに。
「気にしないでください。事前に教えられていたとしても、私がエリオット殿下の話を信じていた保証もないんですし」
「それはそうかもしれないが……」
僕は、とエリオット殿下が続ける。
「ルイスの真実を話して、信じてもらえずにレベッカに嫌われることを避けたんだ。そしてこうして謝罪すれば、優しい君は僕を許すしかないことも計算している。……君に嫌われて当然だな」
エリオット殿下の物言いに私は首をかしげた。
「私はエリオット殿下を嫌いになんてなっていませんけど」
「慰めは無用だ」
「慰めなんかじゃありません。……どうしてそんな誤解を?」
まぁ元々は好きも嫌いもない距離感だったし、記憶を取り戻してからも厄介だなぁとは思っていたけれど、でも一度も嫌いになんてなってない。
「……出自を話して以来、僕を避けていただろう。あそこまであからさまであれば察するなという方が難しい」
「えっ」
そう言えばそんな話を聞いた直後だった。タイミング的にそうだったと、今更気が付かされる。
そうだよね。確かにエリオット殿下にしてみれば自身の秘密を一大決心で話してくれたに違いない。
その直後から私は明らかな言い訳をつけて誘いを断ってしまっていた。
誤解させていたことにすら気が付かなかったなんて、私はなんてバカだったんだろう。
「違います! 避けてしまっていたことは確かですが、それはエリオット殿下のお話を聞いたせいではなくてっ」
「だったらどういう理由だと言い訳するつもりだい?」
エリオット殿下が私の言う事を信じていない事が分かる。
ぎゅっと両手を握り締めた。
0
お気に入りに追加
4,708
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする
カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m
リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。
王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる