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18.欲しい物は自分の力で手に入れる

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「そういえばルイス殿下、先ほど王妃様が探していらっしゃいましたようですぅ」
「母上が? 何の用だ?」
「申し訳ありません、私もそこまではお伺いいたしませんでしたぁ」
「いや問題ない。悪いな、席を外す」

 あ、と口を挾む余裕もなくルイス殿下はまたあっさりと城の方へと戻って行ってしまった。
 少しは意識を向けてくれるかなと思ったのに、躊躇なく離れてしまったその背中を目で追う。

「人違いかと思いましたがレベッカ様だったんですねぇ。突然人の婚約者に手を出すだなんて、悪い物にでも憑かれたんですかぁ? そんなにみだりに肌を露出して、みっともないですぅ」

 甘ったるい声に気を取られて、内容が一瞬頭の中をすり抜けていった。
 にこにことした、けれども嫌な感じのするセシリアの笑顔を僅かな時間見つめ返す。
 言われた事は正論だとも言える。けれど真っ当な主張の中に隠されたナイフは抜き身で、気が付かずにはいられなかった。
 今まで社交界に出たことなんてほとんどなかったから知らなかったけれど、セシリア・ライルズ侯爵令嬢はこんな性格だったらしい。

 以前の私だったなら何を言われたって俯く事しかできなかっただろう。
 今だって別に気がついたからってどうと言うこともない。
 間違ったことを言われているとも思えない。
 ルイス殿下とセシリアは正式に婚約したわけではないけれど、私が常識外れなことをしていることに変わりはないのだから。

 けれど「悪女」は言われっぱなしになんてならないはずだ。
 他人を押しのけてでも欲しい物は自分の力で手に入れると自分が決めたんだから。
 そっちがそうくるならばと、真っ赤な薔薇と毒々しさを意識して表情を作りながら長い足を組んだ。

「あら。正式な婚約者でもないのに束縛しようとするような狭量な女性と、どちらがみっともないかしら」

 頬に手を当て、悩ましげに両手で胸元をきゅっと寄せる。

「それにルイス殿下もまんざらではない様子でしたわ。こちらがヤケドしてしまいそうなくらい熱い視線を感じましたもの。ああ、貴女も悲観することはなくてよ。童女のようにおうとつのない体型が好きだと言う男性も世の中にはいるようですものね」

 そうして私は挑発するように唇の端を持ち上げた。
 ぐぅっとセシリアが息を詰める。

 フリルとリボンで目立たないよう誤魔化しているが、セシリアの胸元が寂しいのはよく見ればすぐに分かる。
 別に胸の大きさだけが女性の魅力だなんて思わないけれど、最初に喧嘩を売ってきたのは向こうだ。

 微笑み合う私達の間で、バチリと音がした。

「楽しそうなお茶会だね」

 この場に似つかわしくないゆったりとした声の持ち主は、エリオット殿下だった。
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