34 / 42
ストーリー
ジニアの行動2
しおりを挟む
ペディアの書いた魔法陣の中に入ると、真っ暗な世界だった。平衡感覚を失いそうな世界だったが、この精神世界のどこかにペディアが居るらしい。彼女を探すために1歩、足を踏み出す。
ペディアの時と同様、ポチャンと波紋を描くような水の音がした。歩く度に聞こえるそれを楽しみながら宛もなく歩いていると、幼い誰かが立っていた。
思わず声を上げる。
「ねぇ! あなたは誰?」
言わないとすぐに消えてしまいそうな存在は、ゆっくりとジニアの呼びかけで振り向いた。長髪の黒髪に青い瞳。色白の女の子だった。無表情で感情が無いように見える。
幼い少女は答えない。ジニアを見て、敵か味方か見定めているようだった。怖がらせないように微笑みながら、何故ここに来たのかを説明する。
「私はジニア。リュカスさんに頼まれて、ペディアとフェインを助けるために来たの」
幼い少女はそれでも無言だった。数分の沈黙の後、口を開いた。
「ペディアお姉ちゃんはすぐそばに居る」
その言葉を聞いた瞬間、世界が変わった。幼い少女は居ない。代わりに極寒の如く寒い風と尋常ではない数の抉れた地面があった。そして、一際目立つ青と黒の禍々しい柱。
「ペディアは……」
足場の悪い地面から、風魔法を使って宙に浮きながら移動する。ペディアを捜そうと少し移動すると、叫ぶような小さな声が聞こえた。
「そう! 助けに来っ……?!」
声につられて振り向くと、柱から数十mほど離れたところでペディアが転んでいた。
『……だめ…、逃げ……て…』
弱々しい、苦しそうな声が頭に響く。ペディアは助けたい一心で叫び続けていた。
「どうして? 私はフェインを助けたいだけなのに!」
ペディアは柱に向かって、注意深く歩く。しかし、足場が悪いために歩きづらそうだった。
ペディアのボヤく声が、近づいたことではっきりと聞こえる。
「フェインに近づくのに何かいい方法は……」
「そんな時は私に任せなさいよっ!」
私が力強い発言をすると、驚いたようにペディアが振り向く。その顔は驚きと不安な顔で染まっていた。
「ジニア! どうしてここに……!?」
……聞かれると思った。でも、精神世界に入り続けるのは無理がある。フェイン自身の身体に、フェインとペディアと私の魂、全部で3つ入っていることになる。
そんな状態で長時間いるのはフェインの体力を膨大に消費する上に拒絶反応を起こしかねない。
「そんな話は後よ! いまは時間がないから、私の独断で行かせてもらうわ。ペディア、あの子を早く解放してあげて!」
私は右手をペディアにかざし、風の力を使って禍々しい柱の前まで運ぶ。ペディアが行きたがっていた場所だと判断したからだ。
無事に運び終えると、柱に背を向けて現状を見渡す。……さっきより地面が崩れてる気がする。
「さて……、私にはフェインを助けてあげられるだけの力はないから、現状維持に努めようかな」
ペディアの時と同様、ポチャンと波紋を描くような水の音がした。歩く度に聞こえるそれを楽しみながら宛もなく歩いていると、幼い誰かが立っていた。
思わず声を上げる。
「ねぇ! あなたは誰?」
言わないとすぐに消えてしまいそうな存在は、ゆっくりとジニアの呼びかけで振り向いた。長髪の黒髪に青い瞳。色白の女の子だった。無表情で感情が無いように見える。
幼い少女は答えない。ジニアを見て、敵か味方か見定めているようだった。怖がらせないように微笑みながら、何故ここに来たのかを説明する。
「私はジニア。リュカスさんに頼まれて、ペディアとフェインを助けるために来たの」
幼い少女はそれでも無言だった。数分の沈黙の後、口を開いた。
「ペディアお姉ちゃんはすぐそばに居る」
その言葉を聞いた瞬間、世界が変わった。幼い少女は居ない。代わりに極寒の如く寒い風と尋常ではない数の抉れた地面があった。そして、一際目立つ青と黒の禍々しい柱。
「ペディアは……」
足場の悪い地面から、風魔法を使って宙に浮きながら移動する。ペディアを捜そうと少し移動すると、叫ぶような小さな声が聞こえた。
「そう! 助けに来っ……?!」
声につられて振り向くと、柱から数十mほど離れたところでペディアが転んでいた。
『……だめ…、逃げ……て…』
弱々しい、苦しそうな声が頭に響く。ペディアは助けたい一心で叫び続けていた。
「どうして? 私はフェインを助けたいだけなのに!」
ペディアは柱に向かって、注意深く歩く。しかし、足場が悪いために歩きづらそうだった。
ペディアのボヤく声が、近づいたことではっきりと聞こえる。
「フェインに近づくのに何かいい方法は……」
「そんな時は私に任せなさいよっ!」
私が力強い発言をすると、驚いたようにペディアが振り向く。その顔は驚きと不安な顔で染まっていた。
「ジニア! どうしてここに……!?」
……聞かれると思った。でも、精神世界に入り続けるのは無理がある。フェイン自身の身体に、フェインとペディアと私の魂、全部で3つ入っていることになる。
そんな状態で長時間いるのはフェインの体力を膨大に消費する上に拒絶反応を起こしかねない。
「そんな話は後よ! いまは時間がないから、私の独断で行かせてもらうわ。ペディア、あの子を早く解放してあげて!」
私は右手をペディアにかざし、風の力を使って禍々しい柱の前まで運ぶ。ペディアが行きたがっていた場所だと判断したからだ。
無事に運び終えると、柱に背を向けて現状を見渡す。……さっきより地面が崩れてる気がする。
「さて……、私にはフェインを助けてあげられるだけの力はないから、現状維持に努めようかな」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる