記憶のカケラ

シルヴィー

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ストーリー

見知らぬもう1人

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通常サイズから2回りほど小さくなったリュカスの背に、フェインを先頭にペディアも乗り込んで街外れまで疾走した。

街はいつも以上に活気あふれ……てはいなかった。人々の混乱が目の前を繰り広げられ、裸足で逃げる者、子どもを抱えて泣く者、必死に街を護ろうと抗う者、様々だった。

その中で飛び出してくる緑色の髪の子がいた。

「ペディア! 逃げて!! あの人が…あの人が……!!」

ペディアのよく知るジニアだった。いつもの笑顔はなく、完全に怯えた表情で僅かに身体が震えている。

「大丈夫。それを何とかするために来たから。というか、私の問題なのに、みんなを巻き込んでしまってごめんね」

「あっ! ペディア……!!」

ジニアと話している間に大型犬サイズのリュカスとフェインが先に家へ向かっている。ペディアも後を追いかけて走っていった。

リュカスが言った時は結界がしていると言っていたが、これはヤバい。結界は既に無くなり、念入りに張っていたであろう護符も破けていた。

新しい結界が張ってあるため、一時的に安心は出来るかもしれないが、漏れ出て行った魔素は濃く、周辺の土や家を駄目にしていた。

「リュカス! フェイン!」

結界内に入るなり叫ぶ。すると、リュカスからの返答が念話を通して伝えられた。

『ペディア。2階へ来い。そこに奴はいる』

体力を消耗しない程度に疾走し、家の中を駆け上がって行く。廊下で窓際にいると対峙していた。

「おやおや、新客が現れましたねぇ」

「……誰?」

前に会った人じゃないと瞬時に思った。見た目が父なだけに心が痛む。

わたくしですか? あなたにお世話になったルアンの上司に当たる者です」

「……ル、アン……!! なんで、その体を使うの?! お父さんを返してよ!!」

「この持ち主はあなたのご家族のものでしたか。しかし、何年も前にお亡くなりになられていますよ?」

「そんなの関係ない!」

『ペディア、せ!』

『展開、14の黒陣こくじん

リュカスの制止を聞かず、ペディアはに向かって攻撃を仕掛けようと走った。フェインは自身の闇魔法で盾をつくり、ペディア周辺に展開する。

こいつリュカが待てって言ってるんだ。連携を取れ、馬鹿が!』

「……ぅ…」

ペディアは涙目になりながら彼を睨む。は微笑みながら手を叩く。

「お話は済みましたか? そろそろルアンに代わりますね。では、また会いましょう」

数秒して父の体が倒れる。抜け殻になったからだろう。その間にフェインが周囲の魔素を利用して闇属性の拘束をかけた。

『……リュカ、なんとなくだが、まだ倒すには何かが足りない気がする。その何かが分かればいいんだが…全く分からない』

『そうか。やれるだけのことはやってみるとしよう。

ペディア、お前は出来るだけ強力な光の結界を張れ。……ああ、あるじは囲むなよ。我とおぬしのみだ』

「えっ、なんで?」

あるじが存分に戦えないだろう?』

「うあっ、うあっ、何これ何これ気持ち悪りぃいいい!!」

あの人──ルアンが戻ってきたらしい。存分に叫び倒しているが、性格が若干変わっているような……?

『来たようだ。くぞ!』
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