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治療
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少年はエリカの案内で父の部屋に入ったが、見た瞬間になにか分かったのか、顔を曇らせていた。
「……申し訳ございません」
少年は小声でそれだけ言うと、彼のそばに行き、紫色の淡い光を放った。優しく、安心する光だったが、同時に恐ろしさも感じるものだった。
しばらくそうしていると、父の顔色は良くなり、呼吸も安定してきた。
「……君は、一体……」
シルディックはギルドの医療担当者に治せないと言われたにも関わらず、徐々に、しかし、あっという間に治っていく体に驚きを隠せなかった。それはエリカも母も同じだろう。少年はただ微笑むだけでなにも言葉を発さず、治療に専念していた。
全体的に治癒を施した後、念入りに、魔核と呼ばれる魔力を体内に精製する臓器から治療を行った。それが終わると、少年の懐から3つのカプセルを取り出した。
「……あの、すみませんが、この3つの薬を飲んでいただけますか? 解毒剤です」
「……本当に…」
俺は何かを言おうとして、口をつぐんだ。禍々しい雰囲気の薬で飲むことを躊躇ってしまう。しかし、体が治癒で治っている以上、最後の仕上げのようなものだろうと結論付けた。妻に水を取ってきてもらい、3つのカプセルを飲んだ。が、すぐに戻しかけた。
「……ぅ…グェ……!!」
「ちょっと!変なことし……」
エリカが抗議しようと口を荒げて言おうとすると、少年が手を挙げて制をした。
「……この薬は解毒剤です。普通の治療では治らないのです。数十分ほどその状態が続きますが、ご容赦ください」
「普通の治療って……、じゃあ、あなたは何をしているの?」
「……現在、この方を治すために治療をしているところです。大丈夫です。今日中に治りますから」
少年は微笑んだまま表情を変えずに答えた。エリカは質問の意味が違うと不満そうな顔になったが、もう一度聞くことはできなかった。しばらく言葉を発さなかった母が不安そうに口を開いたからだ。
「……これで、シルは大丈夫よね?」
「はい。薬の効果は即効性のため、すぐに効くはずです。数十分ほどここに居ることをお許しください。その後、効果を診ます。それで何もなければ、恐らくもう大丈夫でしょう」
「……よかった」
母の不安そうな顔がほぐれ、微笑を浮かべた。エリカは不満そうだったが、父がまだ生きてくれるならと許すことにした。その2人の顔に、少年は新たな疑問を浮かべることになった。
「……あの、立ち入ったことをお聞きしますが…、なにか悲しい出来事がおありですか?」
「え?」
エリカは少年の言っている意味がわからず、首を傾げた。母は何やら驚いているらしく少し目を見開いて少年を見る。
「……差し支えなければ、教えていただけますか?」
母はじっと少年を見つめた。少年は少し眉尻を下げて母を見返した。
「まずは、あなたのお名前を聞かせてくれるかしら? あなたから、何の情報もなしに教えることは出来ないわ」
「これは失礼致しました。僕の名前はギルです。シャーゴット様の父上様が来られた泉の近くに住んでいる者です」
少年ギルはハッとしたように自分の情報を明かした。
「なんのお仕事をしているの?」
「普段は見張りをしています」
「泉の?」
「はい」
母は再びじっとギルを見つめて、ため息を吐いた。その隣でエリカは疑問符を浮かべながら聞く。
「普段は、ってことは、他に何してるのよ?」
「使いっ走りですね。僕は万屋ですから」
「万屋……?」
エリカは聞いたことのない店の名前に疑問符が再び浮かんだが、母が先に話を進めた。
「……いいわ。あなたは他の誰とも違う、不思議な雰囲気を持っているのね。私の……いいえ、このシャーゴット家のさがしものを聞いてちょうだい」
「お母さん!!」
エリカはようやく何について聞かれているのか、ハッと気がついた。母は首を振りながらきっと大丈夫だと伝える。
「いいのよ、エリカ。このギル君は信頼できる」
母の勘は当たりやすい。とはいっても、確率的に当たりやすいだけで外れることもあるのだが……。
母の真っ直ぐな目を見て、エリカは何も言えなくなってしまった。
「……申し訳ございません」
少年は小声でそれだけ言うと、彼のそばに行き、紫色の淡い光を放った。優しく、安心する光だったが、同時に恐ろしさも感じるものだった。
しばらくそうしていると、父の顔色は良くなり、呼吸も安定してきた。
「……君は、一体……」
シルディックはギルドの医療担当者に治せないと言われたにも関わらず、徐々に、しかし、あっという間に治っていく体に驚きを隠せなかった。それはエリカも母も同じだろう。少年はただ微笑むだけでなにも言葉を発さず、治療に専念していた。
全体的に治癒を施した後、念入りに、魔核と呼ばれる魔力を体内に精製する臓器から治療を行った。それが終わると、少年の懐から3つのカプセルを取り出した。
「……あの、すみませんが、この3つの薬を飲んでいただけますか? 解毒剤です」
「……本当に…」
俺は何かを言おうとして、口をつぐんだ。禍々しい雰囲気の薬で飲むことを躊躇ってしまう。しかし、体が治癒で治っている以上、最後の仕上げのようなものだろうと結論付けた。妻に水を取ってきてもらい、3つのカプセルを飲んだ。が、すぐに戻しかけた。
「……ぅ…グェ……!!」
「ちょっと!変なことし……」
エリカが抗議しようと口を荒げて言おうとすると、少年が手を挙げて制をした。
「……この薬は解毒剤です。普通の治療では治らないのです。数十分ほどその状態が続きますが、ご容赦ください」
「普通の治療って……、じゃあ、あなたは何をしているの?」
「……現在、この方を治すために治療をしているところです。大丈夫です。今日中に治りますから」
少年は微笑んだまま表情を変えずに答えた。エリカは質問の意味が違うと不満そうな顔になったが、もう一度聞くことはできなかった。しばらく言葉を発さなかった母が不安そうに口を開いたからだ。
「……これで、シルは大丈夫よね?」
「はい。薬の効果は即効性のため、すぐに効くはずです。数十分ほどここに居ることをお許しください。その後、効果を診ます。それで何もなければ、恐らくもう大丈夫でしょう」
「……よかった」
母の不安そうな顔がほぐれ、微笑を浮かべた。エリカは不満そうだったが、父がまだ生きてくれるならと許すことにした。その2人の顔に、少年は新たな疑問を浮かべることになった。
「……あの、立ち入ったことをお聞きしますが…、なにか悲しい出来事がおありですか?」
「え?」
エリカは少年の言っている意味がわからず、首を傾げた。母は何やら驚いているらしく少し目を見開いて少年を見る。
「……差し支えなければ、教えていただけますか?」
母はじっと少年を見つめた。少年は少し眉尻を下げて母を見返した。
「まずは、あなたのお名前を聞かせてくれるかしら? あなたから、何の情報もなしに教えることは出来ないわ」
「これは失礼致しました。僕の名前はギルです。シャーゴット様の父上様が来られた泉の近くに住んでいる者です」
少年ギルはハッとしたように自分の情報を明かした。
「なんのお仕事をしているの?」
「普段は見張りをしています」
「泉の?」
「はい」
母は再びじっとギルを見つめて、ため息を吐いた。その隣でエリカは疑問符を浮かべながら聞く。
「普段は、ってことは、他に何してるのよ?」
「使いっ走りですね。僕は万屋ですから」
「万屋……?」
エリカは聞いたことのない店の名前に疑問符が再び浮かんだが、母が先に話を進めた。
「……いいわ。あなたは他の誰とも違う、不思議な雰囲気を持っているのね。私の……いいえ、このシャーゴット家のさがしものを聞いてちょうだい」
「お母さん!!」
エリカはようやく何について聞かれているのか、ハッと気がついた。母は首を振りながらきっと大丈夫だと伝える。
「いいのよ、エリカ。このギル君は信頼できる」
母の勘は当たりやすい。とはいっても、確率的に当たりやすいだけで外れることもあるのだが……。
母の真っ直ぐな目を見て、エリカは何も言えなくなってしまった。
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