真夜中

うるさい

 今日も眠れずテレビを眺めている。聞こえるのは暖房の激しい呼吸音のみ。テレビからはうるさい映像が流れている。このうるさい映像に音まであったら僕の世界がパンクしてしまう。
 心臓が早鐘を打っている。うるさい。体の中が一番うるさい。理由は分かっている。あの人のことを考えるとこうなってしまう。あの人は今何をしているのだろう。他の男といるのだろうか。だから傍らに置いたスマートフォンが光らないのだろうか。もう仕事は終わっているでしょう？何がいけなかったのだろう。ああ、本当にうるさい。僕を選んでくれたのではなかったのか。
 頭の中にちかちかと光が瞬いた。こんなにも心を揺さぶる彼女は、もういっそのこと死んでくれないだろうか。僕の頭の中でだけ生きていてくれればこんな思いしなくても済むのに。
 目の前のテレビがいつの間にか消えていた。暖房の音も聞こえない。真っ暗な中に独り。
 なのに、何で、こんなにもうるさいのか。