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第8章 崩壊の足音

第130話 『風使い』

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「というか、ミドリーさんってクラスわかるんじゃなかったでしたっけ? リオンのはどうなんすか?」

 俺の時は魔力が足りないと言ってクラスがバレずに済んだが、リオンほど魔力があるのなら彼のクラスがわかるのではないだろうか。

 と、訊いてはみたものの、ミドリーさんの表情は浮かない。

「できるかもしれないが、魔力は十五歳からでないと安定しない。いくらリオンの魔力が高かろうが、その年齢に達していない彼の魔力を擦れるだろうか」

「な、なるほど……リオンは十歳くらいだもんな」

 となると、リオンのクラスを探るのは難しそうか。

 そう思っていた矢先、今まで黙っていたリオンの口が徐に開いた。

「僕、十八歳だよ?」

「はっ!?」

 この発言にその場にいた誰もが驚愕する。それもそのはずだ。こんな幼い姿をしているのに、そんな十八歳とか言われたって信じられない。見た目は子供。中身は大人ということか? いや、中身が大人にも見えないのだけれども。

 みんながみんな信じられないでいる最中、ミドリーさんだけが「そうか」と納得したように頷く。

「エルフは我々の人間の倍以上の寿命がある。もしかすると、体の老化、または成長も人間の半分のスピードなのかもしれない」

「つまるところ、人間でいうと九歳ってことか……ペットかよ」

 人間に「人間でいうと」なんて言葉初めて使ったわ。

 というか、こいつだけ設定詰めすぎじゃない? ハーフエルフというだけで相当だと思うのに、合法ロリかよ。

「あれ? つうことは、ライザの年齢って?」

「四十四」

「おっさんじゃねえかよ! ずっと同い年タメだと思ってたわ!」

 リオンの回答に頭を抱える。あ、でも、人間でいえば二十二歳だからやはり同い年タメか。ややこしいわ、もう。

 そんな喚いている中、ミドリーさんが切り替えさせるように「コホン」とわざとらしく咳をする。

「ともかく、リオンのために探る価値はあると思う。どうだリオン。やってみないか?」

 そう言ってミドリーさんはリオンを見下ろす。

 リオンもきょとん顔でミドリーさんを見上げていたが、やがてコクリと首を縦に振った。

「よくわかんないけど、やってみる」

 その答えにミドリーさんも満足そうに頷く。

「では、さっそく……」

 リオンの小さな頭を大きな手で鷲掴みするミドリーさん。クラスがどうこうより、その手でリオンの頭がつぶれないのかというほうが心配だ。

 だが、他の連中はその様子を固唾を呑んで見守っている。ミドリーさんだって、目を閉じて集中しているほど真剣だ。

 暫時の沈黙に緊張感が漂う。

 そうしているうちにミドリーさんは静かに目を開け、小さく息をついた。

「……【風使いウィンダー】 それが、君のクラスだ」

「う、うぃんだー……?」

 初めて聞く単語に小首を傾げる。ただ、セバスは「おぉ……」と感嘆の息を漏らす。

「まさかこんなところでこんな珍しいクラス持ちに会えるなんて……」

「そんな凄いクラスなのか?」

「天地雷鳴士は知ってますか? それの下級クラスだと思ってください」

「ああ。賢者とスーパースターを極めたらなれる奴な」

「そ、それはよくわかりませんが……とにかく、天候を操れる非常に稀なクラスです。それでいて治癒魔法も持っているのですから、侮れませんよ」

 眼鏡のつるを持ちながら、セバスはリオンを見つめる。

「な、なんかとんでもない奴を仲間にしちまったな……」

 彼の凄さはお墨付きとはいえ、クラスを知ると改めて凄まじさを知る。

 ただし、この力も発展途上のようで、リオンの魔力もまだ安定していないらしい。彼が疲れやすく、すぐ眠くなってしまうのもそのためだ。そこは、前の戦いでも実証済みである。

「君のことだから魔力を過信することはないだろうが、くれぐれも無茶はするなよ」

「うん。わかった」

「よし、えらいぞ」

 ニッと笑いながらミドリーさんはガシガシとリオンの頭を撫でる。撫で方は荒いが、褒められて嬉しいのか、リオンの表情も綻んでいる。

 そんな穏やかな空気が流れている中、セバスが気を取り直したように「さて」と切り込んだ。
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