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第8章 崩壊の足音
第129話 設定詰め込みすぎじゃない?
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「ところで……この子はいったい何者なのだ」
腕を組み、ひと息ついて改まったようにミドリーさんは尋ねる。彼の治癒魔法の凄さは今の蘇生魔法だけで十分理解されただろう。しかし、流石ミドリーさんというか、着目するところはそれだけではなかった。
「この少年……属性魔法は風なんだろう?」
「わかるんすか?」
「ああ。魔法の空気感が私よりフーリに近い。ただ、彼の場合は副属性魔法も属性魔法と同じくらいの力量を扱えて
いる」
「ふ、副属性魔法……?」
なんだか難しい話になってきたし、初めて聞く単語も出てきた。
副属性。おそらく属性魔法以外にも扱える魔法のことなのだろう。魔法のことはノアからもちゃんと聞いていないが、髪と瞳の色に特色が現れることと遺伝性が強いことは理解できている。
「ところで、副属性って誰でも扱えるもんなのか?」
なんとなしに浮かんだ疑問をぶつけると、三人とも難しそうに首を傾げた。
「副属性に関してはクラスによるわね。魔法を主に使うクラスだと扱えることが多いけれど……」
「どっちかといえば副属性魔法って属性魔法と合わさった魔法のことをいうんだよな。ほら、お前だって氷と風が混ざった魔法を使えるだろ?」
「え? あ、『冷たい風』ってそうなのか」
フーリに言われるまで気づかなかったが、確かにあの魔法は「氷」と「風」が合わさっている。けれどもリオンの奴は「風」と「光」を両方扱えている。本当に彼は魔法に関してはチート級だ。当の本人はその凄さがわかっておらず、目をぱちくりさせているけれども。
「こんな子供でもここまで魔法を扱えるというのなら、これこそがエルフの力なのか。それとも彼の遺伝子の中にとんでもない魔力を持つ者がいるのか……」
ミドリーさんがリオンを見下ろしながら顎ひげに手を当てて考える。
遺伝が魔法に顕著に表れるというのなら、一つ心当たりがある。
「そういえば、リオンの母親は【創造者】っすよ。オリビアっつうんすけど」
「オリビアだって!?」
彼女の名前にミドリーさんだけでなく、フーリやセバスまで度肝を抜いた。
「知ってるのか?」
「知ってるも何も、ギルドで働いていたらその名前を知らない奴なんていないぜ」
目を丸くするフーリの隣で、セバスが真顔でクイッと眼鏡を上げる。
「オリビア様……若くしてギルドの【創造者】を作り上げた創設者様なのですが、絶対的な地位にいながらある日突然『世界を知りたい』と言って旅に出たという人でしてね……」
「要するに、変わり者の天才だった訳か……」
しかし、ここのギルドの礎が彼女の知的好奇心だとしたら、研究に重きを置いていたギルドの理念に納得がいく。それに、ライザの話だと天才的に魔力や能力値が高かったらしいから、若くして創設者になるのもわかる。
つまり、元から魔力の高い光属性のジャンさんと、人間の中ではぶっ飛んだ能力値を誇るオリビアさんの両方の血を受け継いだ結果、彼のようなチートが生まれたという訳か。
「しかし、オリビアがギルドからいなくなったのは二十五年近く前の話だろう? それが、こんなにも幼い子がいるとは……」
「う~ん」と唸るミドリーさんだが、リオンは相変わらず目をパチクリさせている。オリビアのことを話しても、彼にとっては物心つく前の話だ。おそらくピンと来ていないのだろう。
それにしても、オリビアさんがそこまで有名だったのは。世の中わからないものだ。
「でも、そこまで凄いのなら、この子のクラスっていったいなんなのかしらね」
アンジェが腕を組み、人差し指を頬に当てながらふと尋ねる。
「そういえば……ライザは『回復役じゃない』って言っていたけど、実際どうなんだろ」
「リオちゃん。自分のクラス知ってる?」
アンジェはリオンに視線を合わせるようにしゃがんで訊いてみるが、リオンは不思議そうな顔で首を傾げる。だが、エルフにはそもそも神官がいないから彼が自分のクラスを知るはずもないのだ。
腕を組み、ひと息ついて改まったようにミドリーさんは尋ねる。彼の治癒魔法の凄さは今の蘇生魔法だけで十分理解されただろう。しかし、流石ミドリーさんというか、着目するところはそれだけではなかった。
「この少年……属性魔法は風なんだろう?」
「わかるんすか?」
「ああ。魔法の空気感が私よりフーリに近い。ただ、彼の場合は副属性魔法も属性魔法と同じくらいの力量を扱えて
いる」
「ふ、副属性魔法……?」
なんだか難しい話になってきたし、初めて聞く単語も出てきた。
副属性。おそらく属性魔法以外にも扱える魔法のことなのだろう。魔法のことはノアからもちゃんと聞いていないが、髪と瞳の色に特色が現れることと遺伝性が強いことは理解できている。
「ところで、副属性って誰でも扱えるもんなのか?」
なんとなしに浮かんだ疑問をぶつけると、三人とも難しそうに首を傾げた。
「副属性に関してはクラスによるわね。魔法を主に使うクラスだと扱えることが多いけれど……」
「どっちかといえば副属性魔法って属性魔法と合わさった魔法のことをいうんだよな。ほら、お前だって氷と風が混ざった魔法を使えるだろ?」
「え? あ、『冷たい風』ってそうなのか」
フーリに言われるまで気づかなかったが、確かにあの魔法は「氷」と「風」が合わさっている。けれどもリオンの奴は「風」と「光」を両方扱えている。本当に彼は魔法に関してはチート級だ。当の本人はその凄さがわかっておらず、目をぱちくりさせているけれども。
「こんな子供でもここまで魔法を扱えるというのなら、これこそがエルフの力なのか。それとも彼の遺伝子の中にとんでもない魔力を持つ者がいるのか……」
ミドリーさんがリオンを見下ろしながら顎ひげに手を当てて考える。
遺伝が魔法に顕著に表れるというのなら、一つ心当たりがある。
「そういえば、リオンの母親は【創造者】っすよ。オリビアっつうんすけど」
「オリビアだって!?」
彼女の名前にミドリーさんだけでなく、フーリやセバスまで度肝を抜いた。
「知ってるのか?」
「知ってるも何も、ギルドで働いていたらその名前を知らない奴なんていないぜ」
目を丸くするフーリの隣で、セバスが真顔でクイッと眼鏡を上げる。
「オリビア様……若くしてギルドの【創造者】を作り上げた創設者様なのですが、絶対的な地位にいながらある日突然『世界を知りたい』と言って旅に出たという人でしてね……」
「要するに、変わり者の天才だった訳か……」
しかし、ここのギルドの礎が彼女の知的好奇心だとしたら、研究に重きを置いていたギルドの理念に納得がいく。それに、ライザの話だと天才的に魔力や能力値が高かったらしいから、若くして創設者になるのもわかる。
つまり、元から魔力の高い光属性のジャンさんと、人間の中ではぶっ飛んだ能力値を誇るオリビアさんの両方の血を受け継いだ結果、彼のようなチートが生まれたという訳か。
「しかし、オリビアがギルドからいなくなったのは二十五年近く前の話だろう? それが、こんなにも幼い子がいるとは……」
「う~ん」と唸るミドリーさんだが、リオンは相変わらず目をパチクリさせている。オリビアのことを話しても、彼にとっては物心つく前の話だ。おそらくピンと来ていないのだろう。
それにしても、オリビアさんがそこまで有名だったのは。世の中わからないものだ。
「でも、そこまで凄いのなら、この子のクラスっていったいなんなのかしらね」
アンジェが腕を組み、人差し指を頬に当てながらふと尋ねる。
「そういえば……ライザは『回復役じゃない』って言っていたけど、実際どうなんだろ」
「リオちゃん。自分のクラス知ってる?」
アンジェはリオンに視線を合わせるようにしゃがんで訊いてみるが、リオンは不思議そうな顔で首を傾げる。だが、エルフにはそもそも神官がいないから彼が自分のクラスを知るはずもないのだ。
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