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第5章 『死の森』へ
第83話 ピンチは重なるもの
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それにしてもあれが本場の『冷たい風』か。
俺の技を見てノアが笑っていた理由がようやくわかった。あんなのと比べると、俺の魔法はカス同然だ。
けれども、俺が攻めなければこの勝負は負ける。それに、俺も最初から魔法で勝負していない。
「おらぁ!」
気合いに身を任せ、バトルフォークを掲げたまま死神に突っ込む。しかし、その動きも完全に奴に見破られており、俺の攻撃を両腕で防いできた。
無理矢理押し込んでみようとするが、体格差のせいもあってか、奴はピクリとも動かなかった。そしてついには両腕を振るわれ、俺ごと吹っ飛ばした。
「ムギちゃん!」
アンジェが声をあげた時には俺は再び地面に転がされていた。しかし、これは然程ダメージはなく、すぐに立ち上がることができた。
「くっそー……邪魔だなあの腕……」
魔法もパワーも圧倒的。しかも相手のリーチは長い。これは攻撃を当てるのはかなり厳しそうだ。
つまるところ、大ピンチである。
そのピンチに追い打ちをかけるようにアンジェが告白する。
「ムギちゃん……謝りたいことがあるの」
「なんだよ、この期に及んで……」
「多分……あたし、魔法打てるのあと一発だわ」
「マジか」
ちらりとアンジェを見ると、彼は頬を引き攣らせながら滲んだ脂汗を手で拭っていた。
彼の場合、当の昔に体力の限界が来ていたはずだ。火事場の馬鹿力でここまで動いてくれたのだろうが、それも切れたのだろう。
しかし、ここまでふらふらなのにアンジェは徐に剣の切っ先を死神の前に向けた。
「だからこそ……これであいつの動きを止めるわ」
「そんな……無茶するなよ」
「いいえ、このままだと今度は体力がなくなっちゃう。動けるうちに動かないと」
だから、力を貸して。
そう紡いだ彼の剣は、すでにわずかに炎が纏っていた。
「……わかった」
彼の覚悟に俺も腹を括る。
おそらく彼は死神目がけて火炎放射を一直線に打つだろう。
そして死神がサイドどちらかに動く隙を突いて俺が攻撃を仕かけるのだ。同時に襲いかかれば一発は食らわせられるはず。
「行くわよ」
彼の言葉を合図に俺は一気に死神に距離を詰めた。その動きを見てアンジェが火炎放射を放った。
だが、その時空洞になっているはずの死神の口元がにやりと笑った気がした。
息を呑んだ時にはもう遅かった。俺は奴の術中にはまっていたのだ。
チームプレイなのは何も俺たちだけではない。奴らにも仲間がいるのだ。
「ケケケケッ!!」
笑い声をあげたブルースピリットたちが一斉に俺に飛びかかる。
しかも嚙みつくのではなく視界を阻んでいるように俺の顔面に纏わりつく。これのせいで俺の足は止まり、見事に押さえ込まれてしまった。
「こいつら……気持ち悪いんだよ!」
わらわらと群れるブルースピリットたちを力任せに薙ぎ払う。するとフォークに直撃したブルースピリットたちは喚きながらぶっ飛んでいった。
これでようやく邪魔者は消えた。
けれども、視界が晴れた俺を待っていたのは、振りかぶった死神の鋭利な爪だった。
はめられた。
ブルースピリットが俺の動きを止めたのは攻撃を防いだだけではない。死角を作って死神に攻撃させる隙を与えたのだ。あいつらは、初めから俺を狙っていたのだ。
しかし、この間合いでは避けることができない。
――刺される!
その恐怖に俺は反射的に目をつむってしまった。
途端、横から何かが俺に突っ込んできた。
あまりの勢いに俺は地面に転がるくらいふっ飛ばされた。一瞬何が起こったかわからなかったが、ハッと振り返ると、視界に飛び散った赤い鮮血が映じた。
――嫌な予感がした。
地面に倒れ込んだまま、恐る恐る顔を上げる。そこで見えた残酷な光景に俺は目を見開いたまま動くことができなかった。
俺の技を見てノアが笑っていた理由がようやくわかった。あんなのと比べると、俺の魔法はカス同然だ。
けれども、俺が攻めなければこの勝負は負ける。それに、俺も最初から魔法で勝負していない。
「おらぁ!」
気合いに身を任せ、バトルフォークを掲げたまま死神に突っ込む。しかし、その動きも完全に奴に見破られており、俺の攻撃を両腕で防いできた。
無理矢理押し込んでみようとするが、体格差のせいもあってか、奴はピクリとも動かなかった。そしてついには両腕を振るわれ、俺ごと吹っ飛ばした。
「ムギちゃん!」
アンジェが声をあげた時には俺は再び地面に転がされていた。しかし、これは然程ダメージはなく、すぐに立ち上がることができた。
「くっそー……邪魔だなあの腕……」
魔法もパワーも圧倒的。しかも相手のリーチは長い。これは攻撃を当てるのはかなり厳しそうだ。
つまるところ、大ピンチである。
そのピンチに追い打ちをかけるようにアンジェが告白する。
「ムギちゃん……謝りたいことがあるの」
「なんだよ、この期に及んで……」
「多分……あたし、魔法打てるのあと一発だわ」
「マジか」
ちらりとアンジェを見ると、彼は頬を引き攣らせながら滲んだ脂汗を手で拭っていた。
彼の場合、当の昔に体力の限界が来ていたはずだ。火事場の馬鹿力でここまで動いてくれたのだろうが、それも切れたのだろう。
しかし、ここまでふらふらなのにアンジェは徐に剣の切っ先を死神の前に向けた。
「だからこそ……これであいつの動きを止めるわ」
「そんな……無茶するなよ」
「いいえ、このままだと今度は体力がなくなっちゃう。動けるうちに動かないと」
だから、力を貸して。
そう紡いだ彼の剣は、すでにわずかに炎が纏っていた。
「……わかった」
彼の覚悟に俺も腹を括る。
おそらく彼は死神目がけて火炎放射を一直線に打つだろう。
そして死神がサイドどちらかに動く隙を突いて俺が攻撃を仕かけるのだ。同時に襲いかかれば一発は食らわせられるはず。
「行くわよ」
彼の言葉を合図に俺は一気に死神に距離を詰めた。その動きを見てアンジェが火炎放射を放った。
だが、その時空洞になっているはずの死神の口元がにやりと笑った気がした。
息を呑んだ時にはもう遅かった。俺は奴の術中にはまっていたのだ。
チームプレイなのは何も俺たちだけではない。奴らにも仲間がいるのだ。
「ケケケケッ!!」
笑い声をあげたブルースピリットたちが一斉に俺に飛びかかる。
しかも嚙みつくのではなく視界を阻んでいるように俺の顔面に纏わりつく。これのせいで俺の足は止まり、見事に押さえ込まれてしまった。
「こいつら……気持ち悪いんだよ!」
わらわらと群れるブルースピリットたちを力任せに薙ぎ払う。するとフォークに直撃したブルースピリットたちは喚きながらぶっ飛んでいった。
これでようやく邪魔者は消えた。
けれども、視界が晴れた俺を待っていたのは、振りかぶった死神の鋭利な爪だった。
はめられた。
ブルースピリットが俺の動きを止めたのは攻撃を防いだだけではない。死角を作って死神に攻撃させる隙を与えたのだ。あいつらは、初めから俺を狙っていたのだ。
しかし、この間合いでは避けることができない。
――刺される!
その恐怖に俺は反射的に目をつむってしまった。
途端、横から何かが俺に突っ込んできた。
あまりの勢いに俺は地面に転がるくらいふっ飛ばされた。一瞬何が起こったかわからなかったが、ハッと振り返ると、視界に飛び散った赤い鮮血が映じた。
――嫌な予感がした。
地面に倒れ込んだまま、恐る恐る顔を上げる。そこで見えた残酷な光景に俺は目を見開いたまま動くことができなかった。
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