60 / 242
第4章 ギルド、崩壊
第60話 「荒くれ」なんて本当にいるんだな
しおりを挟む
「てめえ! ふざけてるのか!?」
「こっちがでたらめ言ってるとでも思ってんのか!!」
耳を塞ぎたくなるような男の大声に店の人が「ひぃぃ!」と情けないくらい戦慄している。
店の人は細見で枝のような骨はダルマンさんのようなゴリマッチョ体系な人にぽっきりとおられてしまいそうだ。
変わってあの店の人に声を荒げた男たちは二人ともガタイが良く、目つきも鋭くて荒々しい。一人はバンダナを頭に巻いているし、もう一人は顔を見られないように覆面をかぶっている。勿論覆面のほうは半裸だ。こんな典型的な荒くれがこの世界にいるもんだなと逆に関心してしまう。
まじまじと見ていたのが悪かったのか、俺の視線に気づいた荒くれが今度はこちらに絡んできた。
「何見てんだてめえ」
「いや、何騒がしくしてるのかなって思って」
「この商人がぼったくってるから成敗してるんだよ。こちとら正義の味方だ」
「ぼ、ぼったくりなんてそんな!」
ひ弱そうな商人が半泣きで俺たちに訴えてくる。
話によるとこの荒くれ共はどれもこれも二ヴァルや三ヴァルなどありえない金額でせがんでくるらしい。
店のラインナップは幸いミドリーさんのところと変わらず、彼の商品を比較しても価格は同じだ。彼がぼったくりをしているようには見えない。なるほど、この荒くれ共の言いがかりか。
「この店のものが適正価格じゃないっていうなら、このダルマンのおっさんもぼったくってるってことか?」
「よく見ろよ、商品の質が違うだろうが」
「質って言われてもねえ……この商品は全部魔法で作っているから質も何もないと思うんだけど」
「なんだてめえら……俺たちが適当に言ってると思ってんのか?」
「まあな。もう営業妨害じゃねえか」
「不届き者は滅べばいいと思うわ」
完全に冷めた目で見る俺たちに荒くれ共が青筋を立てる。
「さっきから聞いていればムカつくガキとカマ野郎だぜ……」
「死にてえのかてめえら!」
バンダナをつけた荒くれに胸倉を捕まれる。だが、怒りの導火線に火が点いたのは何も奴らだけではなかった。いや、むしろ一番憤怒しているのは彼であった。
「……誰がカマ野郎ですって?」
アンジェがにっこりと笑いながら荒くれの腕を掴む。
だが、顔は笑っていても、目は笑っていない。禍々しいどす黒いオーラが見えてしまうくらい彼が怒っているのがわかる。どうやらこの荒くれ共は彼の禁句を言ってしまったらしい。お陀仏。
「あっつ!」
いきなりバンダナの荒くれがいきなり俺の胸倉から手を離す。アンジェが掴んだところにくっきりと赤い痕がついているのでどうやらアンジェが手に熱を込めたらしい。これには荒くれ二人の堪忍袋の緒が切れたようだ。
「何してくれんだてめえ!」
二人して大きな拳で振り下ろしてきたが、俺もアンジェもバックステップで避ける。いよいよあちらもやる気みたいだ。
「おい、ノア。邪魔だから降りてろ」
「フフ……せいぜい楽しむがよい」
悪戯っぽく笑ったノアはポンッと俺の頭から落りて、商品が並ぶテーブルに器用に着地した。
「おいおい、商品壊すんじゃねえぞ」
「わかってるって」
やれやれとため息をするダルマンさん。その隣では例の商人が「どうしようどうしよう」とうろたえている。こっちとら彼のトラブルを引き受けているというのに。
「商人さん、こいつらぶっ飛ばしたら商品の割引お願いしまーす」
「ムギちゃん……いい案だけど、こいつらとやってること変わらないからね」
笑いながらアンジェは肩慣らしをする。だが、覆面をかぶった荒くれはそれを隙と捉えたようで一気に俺に殴りかかった。
その殴りを俺は腰を反らせてさらりと受け流す。そして腰を反らしたままバランスを崩さず、そのまま蹴りを食らわした。
覆面の荒くれが「ぐはっ」と唾を吐き出してよろける。
これには観戦していたノアとダルマンさんが感嘆の声をあげた。俺があのアンバランスから強打の蹴りを食らわせられるとは思っていなかったらしい。だが、体幹の良さと蹴りは元々自信があった。正直、スライムより戦いやすい。
一方、アンジェは丸腰なのにも関わらず圧勝していた。
「あちちち!」
バンダナを着けた荒くれが涙目になっている。彼に近づけば熱が籠った手で火傷するはめになるだろう。「もう終わり?」と涼しい顔で笑みを浮かべている。
「もうやめましょう。これ以上やるとそちらが怪我をするだけよ」
「やれやれ」とため息をつくアンジェだったが、荒くれ共はまだ諦めていなかった。
「こっちがでたらめ言ってるとでも思ってんのか!!」
耳を塞ぎたくなるような男の大声に店の人が「ひぃぃ!」と情けないくらい戦慄している。
店の人は細見で枝のような骨はダルマンさんのようなゴリマッチョ体系な人にぽっきりとおられてしまいそうだ。
変わってあの店の人に声を荒げた男たちは二人ともガタイが良く、目つきも鋭くて荒々しい。一人はバンダナを頭に巻いているし、もう一人は顔を見られないように覆面をかぶっている。勿論覆面のほうは半裸だ。こんな典型的な荒くれがこの世界にいるもんだなと逆に関心してしまう。
まじまじと見ていたのが悪かったのか、俺の視線に気づいた荒くれが今度はこちらに絡んできた。
「何見てんだてめえ」
「いや、何騒がしくしてるのかなって思って」
「この商人がぼったくってるから成敗してるんだよ。こちとら正義の味方だ」
「ぼ、ぼったくりなんてそんな!」
ひ弱そうな商人が半泣きで俺たちに訴えてくる。
話によるとこの荒くれ共はどれもこれも二ヴァルや三ヴァルなどありえない金額でせがんでくるらしい。
店のラインナップは幸いミドリーさんのところと変わらず、彼の商品を比較しても価格は同じだ。彼がぼったくりをしているようには見えない。なるほど、この荒くれ共の言いがかりか。
「この店のものが適正価格じゃないっていうなら、このダルマンのおっさんもぼったくってるってことか?」
「よく見ろよ、商品の質が違うだろうが」
「質って言われてもねえ……この商品は全部魔法で作っているから質も何もないと思うんだけど」
「なんだてめえら……俺たちが適当に言ってると思ってんのか?」
「まあな。もう営業妨害じゃねえか」
「不届き者は滅べばいいと思うわ」
完全に冷めた目で見る俺たちに荒くれ共が青筋を立てる。
「さっきから聞いていればムカつくガキとカマ野郎だぜ……」
「死にてえのかてめえら!」
バンダナをつけた荒くれに胸倉を捕まれる。だが、怒りの導火線に火が点いたのは何も奴らだけではなかった。いや、むしろ一番憤怒しているのは彼であった。
「……誰がカマ野郎ですって?」
アンジェがにっこりと笑いながら荒くれの腕を掴む。
だが、顔は笑っていても、目は笑っていない。禍々しいどす黒いオーラが見えてしまうくらい彼が怒っているのがわかる。どうやらこの荒くれ共は彼の禁句を言ってしまったらしい。お陀仏。
「あっつ!」
いきなりバンダナの荒くれがいきなり俺の胸倉から手を離す。アンジェが掴んだところにくっきりと赤い痕がついているのでどうやらアンジェが手に熱を込めたらしい。これには荒くれ二人の堪忍袋の緒が切れたようだ。
「何してくれんだてめえ!」
二人して大きな拳で振り下ろしてきたが、俺もアンジェもバックステップで避ける。いよいよあちらもやる気みたいだ。
「おい、ノア。邪魔だから降りてろ」
「フフ……せいぜい楽しむがよい」
悪戯っぽく笑ったノアはポンッと俺の頭から落りて、商品が並ぶテーブルに器用に着地した。
「おいおい、商品壊すんじゃねえぞ」
「わかってるって」
やれやれとため息をするダルマンさん。その隣では例の商人が「どうしようどうしよう」とうろたえている。こっちとら彼のトラブルを引き受けているというのに。
「商人さん、こいつらぶっ飛ばしたら商品の割引お願いしまーす」
「ムギちゃん……いい案だけど、こいつらとやってること変わらないからね」
笑いながらアンジェは肩慣らしをする。だが、覆面をかぶった荒くれはそれを隙と捉えたようで一気に俺に殴りかかった。
その殴りを俺は腰を反らせてさらりと受け流す。そして腰を反らしたままバランスを崩さず、そのまま蹴りを食らわした。
覆面の荒くれが「ぐはっ」と唾を吐き出してよろける。
これには観戦していたノアとダルマンさんが感嘆の声をあげた。俺があのアンバランスから強打の蹴りを食らわせられるとは思っていなかったらしい。だが、体幹の良さと蹴りは元々自信があった。正直、スライムより戦いやすい。
一方、アンジェは丸腰なのにも関わらず圧勝していた。
「あちちち!」
バンダナを着けた荒くれが涙目になっている。彼に近づけば熱が籠った手で火傷するはめになるだろう。「もう終わり?」と涼しい顔で笑みを浮かべている。
「もうやめましょう。これ以上やるとそちらが怪我をするだけよ」
「やれやれ」とため息をつくアンジェだったが、荒くれ共はまだ諦めていなかった。
10
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
今度は悪意から逃げますね!
れもんぴーる
ファンタジー
国中に発生する大災害。魔法師アリスは、魔術師イリークとともに救助、復興の為に飛び回る。
隣国の教会使節団の協力もあり、徐々に災害は落ち着いていったが・・・
しかしその災害は人的に引き起こされたものだと分かり、イリークやアリス達が捕らえられ、無罪を訴えても家族までもが信じてくれず、断罪されてしまう。
長期にわたり牢につながれ、命を奪われたアリス・・・気が付くと5歳に戻っていた。
今度は陥れられないように力をつけなくちゃ!そして自分を嵌めた人間たちや家族から逃げ、イリークを助けなければ!
冤罪をかけられないよう立ち回り、災害から国民を守るために奮闘するアリスのお話。え?頑張りすぎてチートな力が?
*ご都合的なところもありますが、楽しんでいただけると嬉しいです。
*話の流れで少しですが残酷なシーンがあります。詳しい描写は控えておりますが、苦手な方は数段飛ばし読みしてください。お願いします。
婚約破棄は結構ですけど
久保 倫
ファンタジー
「ロザリンド・メイア、お前との婚約を破棄する!」
私、ロザリンド・メイアは、クルス王太子に婚約破棄を宣告されました。
「商人の娘など、元々余の妃に相応しくないのだ!」
あーそうですね。
私だって王太子と婚約なんてしたくありませんわ。
本当は、お父様のように商売がしたいのです。
ですから婚約破棄は望むところですが、何故に婚約破棄できるのでしょう。
王太子から婚約破棄すれば、銀貨3万枚の支払いが発生します。
そんなお金、無いはずなのに。
愛する彼には美しい愛人が居た…私と我が家を侮辱したからには、無事では済みませんよ?
coco
恋愛
私たちは仲の良い恋人同士。
そう思っていたのに、愛する彼には美しい愛人が…。
私と我が家を侮辱したからには、あなたは無事では済みませんよ─?
とある婚約破棄の顛末
瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。
あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。
まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
伯爵夫人のお気に入り
つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。
数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。
喜ぶ伯爵夫人。
伯爵夫人を慕う少女。
静観する伯爵。
三者三様の想いが交差する。
歪な家族の形。
「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」
「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」
「家族?いいえ、貴方は他所の子です」
ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。
「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。
転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。
トロ猫
ファンタジー
2024.7月下旬5巻刊行予定
2024.6月下旬コミックス1巻刊行
2024.1月下旬4巻刊行
2023.12.19 コミカライズ連載スタート
2023.9月下旬三巻刊行
2023.3月30日二巻刊行
2022.11月30日一巻刊行
寺崎美里亜は転生するが、5ヶ月で教会の前に捨てられる。
しかも誰も通らないところに。
あー詰んだ
と思っていたら後に宿屋を営む夫婦に拾われ大好きなお菓子や食べ物のために奮闘する話。
コメント欄を解放しました。
誤字脱字のコメントも受け付けておりますが、必要箇所の修正後コメントは非表示とさせていただきます。また、ストーリーや今後の展開に迫る質問等は返信を控えさせていただきます。
書籍の誤字脱字につきましては近況ボードの『書籍の誤字脱字はここに』にてお願いいたします。
出版社との規約に触れる質問等も基本お答えできない内容が多いですので、ノーコメントまたは非表示にさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる