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第2章 創造者《クリエイター》の冒険者ギルド
第32話 バトル終了
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うさぎは目くじらを立てて俺を睨んでいる。
鼻息も興奮のせいで荒くなっているし、殴られて怒っているのだろう。
うさぎがいつ飛び込んでくるのかわからないので、ひとまず両手でフォークを握る。だが、突進してくると思ったのに、うさぎはその場で力んで頭を振った。
すると、ツノから鋭利な氷柱が何発も噴射してきた。
「やっべ――」
氷柱はまるで弾丸のように俺のほうへと飛ぶ。
咄嗟にフォークの面を盾にしようとするがおそらく間に合わないだろう。
痛みを堪えるためにギュッと目をつぶる。だが、その瞬間に俺の横から火炎が一直線に放射された。アンジェの炎だ。炎は氷柱の弾丸を溶かすだけでなく、奥にいたうさぎまでも燃やしていく。属性が氷だからうさぎもあれだけで痛恨の一撃なのだろう。断末魔をあげると紫色の靄を発して消えていった。
「サンキュー、アンジェ」
アンジェのほうを見るとちょうど彼が安堵の息をついているところだった。
しかし、その背後ではムカデが最後の力を振り絞って体を起こしあげていた。気配を察したアンジェも慌てて振り向くが、牙はすでにアンジェに向けられている。
アンジェが、危ない。そう頭によぎった時には、俺も反射的に動いていた。
「アンジェ! しゃがめ!」
声をあげた後、強く握ったフォークをムカデに向かって投げる。
フォークはまるで槍投げのようにまっすぐムカデのほうへ飛んでいき、そのまま体を貫通させた。
耳を塞ぎたくなるほどの金切り声をあげたムカデは、うさぎと同様にコアを消えていく。
フォークはというと、戦いを終えると元の大きさに戻って地面に転がり落ちた。
戦闘終了。なんとか無傷で勝てた。
ホッとすると力が抜け、ついその場で座り込む。その様子をアンジェが目をパチクリさせて見ていたが、やがてニッコリと笑って俺に近づいた。
「やるじゃないムギちゃん!」
「いやー、それほどでも……正直ギリギリだし。ほとんどダメージ与えてるのアンジェだし」
「そんなことないわ。助けてくれてありがとう。惚れちゃいそう」
「それは……やめてくれ」
ウフッと語尾にハートをつけたアンジェに苦笑いを浮かべながら、徐に立ち上がる。
顔を上げると岩から飛び降りていたノアがこちらへ近づき、話しかけてきた。
「貴様、こっちの世界のほうが向いているでは?」
褒められているようなセリフだが、ノアに言われると皮肉に聞こえる。
「うるせ」
アンジェに聞こえないよう小声で吐く。
とりあえず武器を回収しようと、俺は落ちたフォークに目を向けた。
すると、地面に転がっていたフォークが紫色の靄に包まれて消えた。だがそれも一瞬で、今度は俺の右手にフォークが戻ってきた。どうやら武器を手放しても、主人の元に戻ってくる仕組みらしい。
とはいえ、これにはアンジェも驚いていた。
「その武器……自在に伸びたり、戻ってきたりして凄いわね」
彼がそう言うということは、他の武器はそんな機能はないということなのだろう。
不思議な現象に首をひねることしかできないが、一旦革ケースにフォークを戻す。
静まり返った空気にアンジェが「ふぅ」と息を吐く。
「――先に進みましょうか」
アンジェの言葉に俺も深く頷いた。道は、まだ長そうだ。
◆ ◆ ◆
一本道なので迷いはしないが、あれからも何回か魔物と戦闘があった。
ただ、洞窟の中が太陽の光が届かなくて涼しいからか、氷属性の魔物が多かった。
この世界でも属性の弱点があるようで、炎属性のアンジェは奴らと相性が良い。一対一だとまず負けない。
だが、同属性である俺の魔法攻撃は効果がいま一つだ……と言いたいところだが、俺の魔法は弱すぎてそもそもダメージを与えていない。せいぜい雪で目眩しできるくらいだ。倒すなら物理攻撃のほうが断然早い。
「おい、ノア……ステータスボード出してくれないか?」
頭上のノアに小声で尋ねると、ピクッと彼の体が動いた。
鼻息も興奮のせいで荒くなっているし、殴られて怒っているのだろう。
うさぎがいつ飛び込んでくるのかわからないので、ひとまず両手でフォークを握る。だが、突進してくると思ったのに、うさぎはその場で力んで頭を振った。
すると、ツノから鋭利な氷柱が何発も噴射してきた。
「やっべ――」
氷柱はまるで弾丸のように俺のほうへと飛ぶ。
咄嗟にフォークの面を盾にしようとするがおそらく間に合わないだろう。
痛みを堪えるためにギュッと目をつぶる。だが、その瞬間に俺の横から火炎が一直線に放射された。アンジェの炎だ。炎は氷柱の弾丸を溶かすだけでなく、奥にいたうさぎまでも燃やしていく。属性が氷だからうさぎもあれだけで痛恨の一撃なのだろう。断末魔をあげると紫色の靄を発して消えていった。
「サンキュー、アンジェ」
アンジェのほうを見るとちょうど彼が安堵の息をついているところだった。
しかし、その背後ではムカデが最後の力を振り絞って体を起こしあげていた。気配を察したアンジェも慌てて振り向くが、牙はすでにアンジェに向けられている。
アンジェが、危ない。そう頭によぎった時には、俺も反射的に動いていた。
「アンジェ! しゃがめ!」
声をあげた後、強く握ったフォークをムカデに向かって投げる。
フォークはまるで槍投げのようにまっすぐムカデのほうへ飛んでいき、そのまま体を貫通させた。
耳を塞ぎたくなるほどの金切り声をあげたムカデは、うさぎと同様にコアを消えていく。
フォークはというと、戦いを終えると元の大きさに戻って地面に転がり落ちた。
戦闘終了。なんとか無傷で勝てた。
ホッとすると力が抜け、ついその場で座り込む。その様子をアンジェが目をパチクリさせて見ていたが、やがてニッコリと笑って俺に近づいた。
「やるじゃないムギちゃん!」
「いやー、それほどでも……正直ギリギリだし。ほとんどダメージ与えてるのアンジェだし」
「そんなことないわ。助けてくれてありがとう。惚れちゃいそう」
「それは……やめてくれ」
ウフッと語尾にハートをつけたアンジェに苦笑いを浮かべながら、徐に立ち上がる。
顔を上げると岩から飛び降りていたノアがこちらへ近づき、話しかけてきた。
「貴様、こっちの世界のほうが向いているでは?」
褒められているようなセリフだが、ノアに言われると皮肉に聞こえる。
「うるせ」
アンジェに聞こえないよう小声で吐く。
とりあえず武器を回収しようと、俺は落ちたフォークに目を向けた。
すると、地面に転がっていたフォークが紫色の靄に包まれて消えた。だがそれも一瞬で、今度は俺の右手にフォークが戻ってきた。どうやら武器を手放しても、主人の元に戻ってくる仕組みらしい。
とはいえ、これにはアンジェも驚いていた。
「その武器……自在に伸びたり、戻ってきたりして凄いわね」
彼がそう言うということは、他の武器はそんな機能はないということなのだろう。
不思議な現象に首をひねることしかできないが、一旦革ケースにフォークを戻す。
静まり返った空気にアンジェが「ふぅ」と息を吐く。
「――先に進みましょうか」
アンジェの言葉に俺も深く頷いた。道は、まだ長そうだ。
◆ ◆ ◆
一本道なので迷いはしないが、あれからも何回か魔物と戦闘があった。
ただ、洞窟の中が太陽の光が届かなくて涼しいからか、氷属性の魔物が多かった。
この世界でも属性の弱点があるようで、炎属性のアンジェは奴らと相性が良い。一対一だとまず負けない。
だが、同属性である俺の魔法攻撃は効果がいま一つだ……と言いたいところだが、俺の魔法は弱すぎてそもそもダメージを与えていない。せいぜい雪で目眩しできるくらいだ。倒すなら物理攻撃のほうが断然早い。
「おい、ノア……ステータスボード出してくれないか?」
頭上のノアに小声で尋ねると、ピクッと彼の体が動いた。
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