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第2章 創造者《クリエイター》の冒険者ギルド
第30話 初ダンジョンは洞窟が鉄板
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「雑魚敵で作った小手が強い訳ないだろ。それと防具が増えたからって力を過信するなよ。貴様はまだまだ弱い」
「うっ……」
ここまで正論を完膚なきまで言われると流石の俺も何も言えなかった。
確かに、振り返ると俺の戦歴は逃走一回(しかも失敗)にスライムに辛勝。彼の言う通り、戦闘力は皆無に等しい。
「それくらいわかってるよ……」
と、強がってみたものの、そこまではっきりと言われるとちょっとへこんだ。肩を落としながらとぼとぼ歩いていると、やがて小高い山々が見えてきた。
「ほら、見て見て。あそこの麓に洞窟はあるのよ」
アンジェが指差したのは一際目立つ大きな岩山だった。よく見ると岩山には穴が空いており、そこから滝のように水が溢れている。
「何あれ……すげー……」
岩山から流れる滝にあんぐりとする。
そんな俺のリアクションを見てアンジェは「ウフッ」と口角を上げる。
「近くに行くとさらに凄いのよ。さ、行きましょ行きましょ!」
余程楽しいのか、アンジェは軽やかにスキップをしてどんどん先へ進んでいく。
「これは完全に遠足だな……」
当初の目的を忘れそうになりながらも、俺は鼻歌混じりのアンジェに着いていった。
◆ ◆ ◆
例の岩山に近づくと、道端にクーラの洞窟を導く看板が再び立っていた。
看板の横には木の板でできた道がある。
アンジェいわく、この道を行けばすぐ洞窟に着くらしい。あれだけ水が流れていたこともあってか、辺りは湿原のように水浸しになっていた。この板でできた道も先人が洞窟を行き来しやすいように作ったのだと言う。
道なりに進むと、間もなくして岩山の麓にたどり着いた。岩山にはくっきりと大きな穴が空いてそこが洞窟になっていた。洞窟の入り口には看板が刺さっており、そこにはちゃんと「クーラの洞窟」と書かれている。
「ここからが本番か……」
洞窟の奥からビュービューと風の音が聞こえる。だが、その先は真っ暗でここからは何も見えず、少しばかり恐怖を感じた。
それでも、アンジェはためらうことなく洞窟の中へと進んでいく。
「足場悪いから気をつけるのよ」
「お、おう」
アンジェにエスコートされながら、俺も洞窟の中を行く。
彼の言う通り洞窟の中は水浸しで、気を抜くとつるりと滑ってしまいそうだった。
「こんなに暗いのに、奥まで行けるのか?」
入り口付近はまだ光が射しているから視界は見える。しかし、その光も少し先へ行っただけで届かなくなってしまう。
そんな懸念を抱いていたが、心配は無用だった。
「ところどころ燭台が置いてあるから大丈夫よ。ほら、さっそくあそこにもある」
アンジェが指差したところには、確かに木でできた燭台が何個も置かれていた。
俺たちの身長くらいある大きめの燭台なので、これらに明かりを灯すだけでかなり明るくなりそうだ。
「こういうのは、あたしに任せて」
パチンとウインクしたアンジェは徐に越しに差していた剣を抜いた。
「そーれ」
その掛け声と共に剣の切っ先を向けると、火炎放射のように剣の先から炎が出た。アンジェが出した炎でどんどん燭台に明かりが灯る。これでしばらくは明かりに困らないだろう。
炎の属性魔法……便利だ。利便性の高い彼の魔法に関心しているうちに、洞窟内が足元に困らなくなるくらい明るくなった。
広がった視界に息を飲む。一本道ではあるが、通路は奥へどこまでも続いていた。天井も高いが氷柱のような練乳石がいくつも伸びており、上から雫がポタポタと落ちている。
洞窟の奥からはひんやりとした風が吹き、燭台に灯った火が揺れた。揺れた火は地面に浸った水にぼんやりと反射する。実に神秘的な光景だ。
「綺麗でしょ? 水辺のほうはもっと凄いんだから」
そう言ったアンジェは剣を鞘に戻さず、握ったまま再び歩き出す。
「ここからどれくらい行けば水が取れるんだ?」
「歩くだけなら二、三十分くらいかしら」
「なら、往復で一時間か……歩くだけなら?」
アンジェの突っかかる言い回しに今更気づく。
ふとアンジェを見ると、彼は何か感じ取ったようにピクリと眉が動いた。
今まで俺の頭の上で丸まっていたノアもむくっと起き上がり、すぐに飛び降りる。
「……言っている間に、さっそくお出ましよ」
アンジェの声のトーンが変わったことで、ようやく事情が掴めた。
岩影の先に何かの気配がする。ガサゴソと物音も聞こえるので、近くにいるのだろう。
自然とバトルフォークが入っている革のケースに手が伸びる。アンジェも剣を構え始め、物音を先をまっすぐ見つめていた。
「――来るわ!」
アンジェの声と同時に黒い影が二体飛び出してきた。
「うっ……」
ここまで正論を完膚なきまで言われると流石の俺も何も言えなかった。
確かに、振り返ると俺の戦歴は逃走一回(しかも失敗)にスライムに辛勝。彼の言う通り、戦闘力は皆無に等しい。
「それくらいわかってるよ……」
と、強がってみたものの、そこまではっきりと言われるとちょっとへこんだ。肩を落としながらとぼとぼ歩いていると、やがて小高い山々が見えてきた。
「ほら、見て見て。あそこの麓に洞窟はあるのよ」
アンジェが指差したのは一際目立つ大きな岩山だった。よく見ると岩山には穴が空いており、そこから滝のように水が溢れている。
「何あれ……すげー……」
岩山から流れる滝にあんぐりとする。
そんな俺のリアクションを見てアンジェは「ウフッ」と口角を上げる。
「近くに行くとさらに凄いのよ。さ、行きましょ行きましょ!」
余程楽しいのか、アンジェは軽やかにスキップをしてどんどん先へ進んでいく。
「これは完全に遠足だな……」
当初の目的を忘れそうになりながらも、俺は鼻歌混じりのアンジェに着いていった。
◆ ◆ ◆
例の岩山に近づくと、道端にクーラの洞窟を導く看板が再び立っていた。
看板の横には木の板でできた道がある。
アンジェいわく、この道を行けばすぐ洞窟に着くらしい。あれだけ水が流れていたこともあってか、辺りは湿原のように水浸しになっていた。この板でできた道も先人が洞窟を行き来しやすいように作ったのだと言う。
道なりに進むと、間もなくして岩山の麓にたどり着いた。岩山にはくっきりと大きな穴が空いてそこが洞窟になっていた。洞窟の入り口には看板が刺さっており、そこにはちゃんと「クーラの洞窟」と書かれている。
「ここからが本番か……」
洞窟の奥からビュービューと風の音が聞こえる。だが、その先は真っ暗でここからは何も見えず、少しばかり恐怖を感じた。
それでも、アンジェはためらうことなく洞窟の中へと進んでいく。
「足場悪いから気をつけるのよ」
「お、おう」
アンジェにエスコートされながら、俺も洞窟の中を行く。
彼の言う通り洞窟の中は水浸しで、気を抜くとつるりと滑ってしまいそうだった。
「こんなに暗いのに、奥まで行けるのか?」
入り口付近はまだ光が射しているから視界は見える。しかし、その光も少し先へ行っただけで届かなくなってしまう。
そんな懸念を抱いていたが、心配は無用だった。
「ところどころ燭台が置いてあるから大丈夫よ。ほら、さっそくあそこにもある」
アンジェが指差したところには、確かに木でできた燭台が何個も置かれていた。
俺たちの身長くらいある大きめの燭台なので、これらに明かりを灯すだけでかなり明るくなりそうだ。
「こういうのは、あたしに任せて」
パチンとウインクしたアンジェは徐に越しに差していた剣を抜いた。
「そーれ」
その掛け声と共に剣の切っ先を向けると、火炎放射のように剣の先から炎が出た。アンジェが出した炎でどんどん燭台に明かりが灯る。これでしばらくは明かりに困らないだろう。
炎の属性魔法……便利だ。利便性の高い彼の魔法に関心しているうちに、洞窟内が足元に困らなくなるくらい明るくなった。
広がった視界に息を飲む。一本道ではあるが、通路は奥へどこまでも続いていた。天井も高いが氷柱のような練乳石がいくつも伸びており、上から雫がポタポタと落ちている。
洞窟の奥からはひんやりとした風が吹き、燭台に灯った火が揺れた。揺れた火は地面に浸った水にぼんやりと反射する。実に神秘的な光景だ。
「綺麗でしょ? 水辺のほうはもっと凄いんだから」
そう言ったアンジェは剣を鞘に戻さず、握ったまま再び歩き出す。
「ここからどれくらい行けば水が取れるんだ?」
「歩くだけなら二、三十分くらいかしら」
「なら、往復で一時間か……歩くだけなら?」
アンジェの突っかかる言い回しに今更気づく。
ふとアンジェを見ると、彼は何か感じ取ったようにピクリと眉が動いた。
今まで俺の頭の上で丸まっていたノアもむくっと起き上がり、すぐに飛び降りる。
「……言っている間に、さっそくお出ましよ」
アンジェの声のトーンが変わったことで、ようやく事情が掴めた。
岩影の先に何かの気配がする。ガサゴソと物音も聞こえるので、近くにいるのだろう。
自然とバトルフォークが入っている革のケースに手が伸びる。アンジェも剣を構え始め、物音を先をまっすぐ見つめていた。
「――来るわ!」
アンジェの声と同時に黒い影が二体飛び出してきた。
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